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[戦評]経験豊富なタレント軍団のアジアでの現在地に注目(U-15日本代表vs平工高)

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[10.17 U-15日本代表合宿練習試合 U-15日本代表 6-1 平工高 福島・Jヴィレッジ]

 高い「個」を備えた注目の世代が、いよいよ世界へ向けたスタートを切る。アジア1次予選前最後の練習試合は2歳上の高校生相手に6-1で快勝。メンバーを主力組、サブ組と分けず、部分的な選手同士の組み合わせの確認だけが行われた中、U-15代表選手それぞれが個人の力でフィジカルで勝る高校生たちを打開していった。この世代最注目のMF宇佐美貴史(G大阪ユース)がドリブルで再三勝負を挑み、決定的なチャンスを作り出す。さらに、スピードに乗ったドリブルからの大きなフェイントで相手をかわして豪快な先制弾を決めたFW宮市亮(シルフィードFCジュニアユース)や、マーカーを弾き飛ばすかのような突破を見せていたFW杉本健勇(C大阪U-18)、抜群のテクニックを持つMF柴原誠(清水ジュニアユース)、GKのタイミングを外す技ありの一撃を決めたMF大森晃太郎(G大阪ジュニアユース)らU-15代表はそれぞれ個の能力の高さを存分に見せ付けた。
 また局面をワンツーやダイレクトパスの連続で崩す場面も1度や2度ではなかった。まだまだ集中力を欠いたようなミスも見られるが、トラップやダイレクトパスで見せる技術は高かった。宇佐美は「(U-15代表は)個で打開できる選手が多い」と話し、柴原は「ひとりひとりの技術はU-17よりも上だという自信がある」。後半はボールを持っていない選手の運動量が少なく、ややリズムを崩したが、それでも技術の高さを生かし、相手にほとんどボールを渡さず攻め続けた。

 今回、AFC U-16選手権予選で対戦する5チームのうち、ラオス、インドネシア、ベトナムは今年のU-16東南アジア大会で4強に入った実力派。池内豊監督は「ボール際が激しくてそのまま攻めてくる。ボール保持されちゃうとやっかい」と対戦相手を分析する。さらに大会が行われるインドネシアは10月でも気温が40度近くまで上がる地域。タフな戦いとなることは間違いない。それでもイレブンの士気は高い。「(合宿)初日から彼らなりに覚悟してやってくれている」と指揮官も評価。日本は前回のAFC U-16選手権を制覇しているだけに、宇佐美が「アジアではなく世界」と口にするなど、メンバーの視線もアジア制覇と世界での活躍だけに向けられている。
 池内監督によると日本代表イビチャ・オシム監督から「試合を勝たせることと、代表選手を育てることが君たち(年代別日本代表の指導者)の仕事だ」と言われているという。勝たせることと成長させることが必要。今年のU-15世代には宇佐美、柴原、杉本のほか、MF柴崎岳(青森山田中)ら中学生ながら能力の高さを買われてクラブ、学校で高校生年代の大会に“飛び級”して、すでに主力級として活躍している選手が何人もいる。FW柿谷曜一朗(C大阪)ら現U-17世代にはわずかしかなかっただけに、「個の進化」も伺われる。年上に混じってプレーする中で激しいプレッシャーをかわす技術、判断力が身につけている選手が多く、練習試合でのプレーぶりもとても落ち着いていた。
 経験面に優れた彼らがアジア、世界で経験を積むことで、彼らだけでなく日本の同年代全体のレベルが引き上げられるだけに世界大会出場は最低限の目標。国内での経験豊富なU-15代表のレベルが、まずはアジアの強豪と比べて現時点でどのような位置にいるのかにも注目だ。

(取材・文 吉田太郎)

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