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「『やっぱり総附は走っているんだ』と思われたい」。少しずつ変化、成長してきた長崎総科大附は今年も走り勝つ

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長崎総合科学大附高は今年も走り勝つ

 総附は、今年も走り勝つ――。第98回全国高校サッカー選手権が30日に開幕する。一昨年度8強、昨年度16強の長崎総合科学大附高(長崎)は1回戦で福井の名門・丸岡高と対戦。名将・小嶺忠敏監督の指導の下、人間力を高め、対戦相手から怖れられるほどの走力、勝負強さによって台頭してきた長崎王者は今年、過去最高成績の4強、それ以上を狙う。

 今年は、県新人戦準々決勝で敗れて連覇が8でストップ。インターハイ予選も準々決勝で敗退した。プリンスリーグ九州でも上位争いに加わることができずに低迷。勝負どころで走りきれず、相手に競り負けてしまっていた。

 試合終盤の走力、また1本のシュートを決める、守り切る力で相手を上回ってきたチームが強みを発揮できていなかった。国見高時代も含めて、小嶺監督の指導してきたチームは「走る」イメージがあるが、なかなかそれを表現できなかった一年。小嶺監督によると、体力があれば最後まで走り切れる訳ではないのだという。大事なのは「人間性」。「人間がしっかりしていないと。頑張りがきかない」。今年は指揮官から「人間的にもたない。今年は例年なく走る量は少ない」と言われてきた世代で苦しい時にチームのために頑張る力、我慢する力が欠けていた。

 それでも、敗戦から学んだ彼らは少しずつ取り組む姿勢が変わり、メンバーを何度も組み替えられながら、チーム力、個の力を半歩ずつ、半歩ずつ高めてきた。そして、苦戦が予想された選手権長崎県予選を突破。小嶺監督も、最後に意地をみせた選手たちを「褒めてやらないといけない」と笑う。指揮官の評価は「メンタルの弱さは50年やってきて初めて」と変わらず厳しいが、一方で「ある程度頑張れるような形になってきた」。選手たちも過信ではなく、良い意味での自信をつけてきている。

 エースFW千葉翼(3年)は「高校総体(インターハイ)に比べると、みんな走れてきて、チームとしてもまとまってきて、この3年間やってきたことが最後に出てきて良かったと思います」と語り、中盤のキーマンであるMF中島勇気(3年)も「新チームができた頃よりもパスの精度とかも上がっているし、チームとしての戦いができていると思っています」と頷く。我慢弱さを少しずつ克服してきた長崎総科大附。対戦相手から見ても、走るイメージがあることは間違いない。選手たちもその部分では絶対に負けないつもりでいる。
 
 長崎総科大附の走ることに対する意識は高い。マンマーカー役も務める2年生MF藤田和也は「攻めていて、奪われてカウンターされた時にそこで諦めずに戻れるか、戻れないか。そこが勝負の分かれ目になってくると思う。走るというのは本当に当たり前という部分だと思います」と語り、運動量豊富な左SB鐘江悠(3年)も「自分はSBで運動量とかも大事になってくる。自分が走らないと攻撃も生まれないですし、自分が誰よりも走るということは意識しています」と誰よりも走る意欲を口にした。

 小嶺監督は「練習で走っている量は国見の時の半分ですよ」と明かす。とは言え、週1日のフィジカル強化日に1000mのインターバル走6本を行うほか、取材日は練習会場の長崎県体育協会人工芝グラウンドまでの3km弱の道のりを練習前後にランニングしていた。まだまだ足りない部分が多いことは確かだが、日々のトレーニングの中で積み重ねてきたものは、苦しい時間帯を乗り越える武器と自信になっている。

 千葉は「去年の(鈴木)冬一さん(現湘南)のような個人の上手い人はいない。走って相手に勝つこと。試合終盤で相手に走り勝ったら、『さすが総附』と言われると思う。小嶺先生もいるからそう思われると思いますけれども、『やっぱり総附は走っているんだ』と思われたい」と力を込めた。

 12月にはASICSのフットボールスパイク、新生『DS LIGHT』(1月24日発売予定)をテスト。OFF THE BALLを新コンセプトに加えた『DS LIGHT』はストップアンドゴーの際の負担を軽減し、試合終盤でも走り切る力をもたらしている。選手たちからは「(練習終盤でも)足への負担を感じにくかったです。軽かったです」「いつもならば、結構足に来ているなというのがあるんですけれども、今日は全然そんなことがなかった」「もしマンマークとかなったら、(全国大会では)速い選手や足元上手い選手がたくさんいると思うけれど、このスパイクだったら切り返しなどに対応できると思います」という声。全国大会へ向けて着用すれば、彼らの怪我を防止し、試合終盤の力をより引き出すかもしれない。

 千葉は全国大会の目標について、「去年、一昨年はベスト8やベスト16という結果で終わっているので、自分たちはその結果を抜いて、この代は最強だとみんなに思わせたいです」と宣言。心技体の部分で少しずつ積み上げ、今年も我慢強く走るチームになってきた長崎総科大附が対戦相手よりも一歩でも多く、一歩でも速く走って白星を引き寄せる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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