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広島の覇権奪還した広島皆実、“らしさ”と「全国で勝つ」ために磨いてきた身体の強さ、走力も発揮へ

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広島皆実高は堅守強攻で再び日本一へ

 皆実らしさと、「全国で勝つ」ために磨いてきた身体の強さ、走力も表現する――。第98回全国高校サッカー選手権が30日に開幕し、08年度日本一の広島皆実高(広島)は初戦となる2回戦(20年1月2日)で神奈川王者の日大藤沢高と対戦。近年の全国大会は強豪対決での惜敗が続いているが、今年は広島皆実らしいパスワークと、「勝負強さ」「全国で勝つ」をテーマに磨いてきた力を発揮して上位進出、全国制覇を目指す。

 昨年度の選手権は広島県予選決勝で瀬戸内高に1-2で競り負け、連覇が5でストップ。全国4強まで勝ち上がった瀬戸内の躍進に、選手たちは悔しさを募らせていた。その中でスタートした新シーズン。仲元洋平監督は「昨年が、『ここ』という大切な試合で負けたので、新しいシーズンが始まった時に『勝負強く』というところをずっと言ってきました」と説明する。

 広島皆実の特長は堅守とコンビネーションや個の突破力を活かした崩し。それを上手く表現できなくても、ゲームの流れを読む力や、ゴールを隙なく守ること、少ないチャンスでも仕留めるという部分で相手を上回ることを目指してきた。県新人戦は早期敗退し、プリンスリーグ中国でもなかなか結果を残すことができなかったが、インターハイ予選に続いて選手権予選も優勝。それも、選手権予選の準決勝は県新人戦優勝校の崇徳高に6-0、決勝でも宿敵・瀬戸内を3-0で破り、強さを示しての奪還だった。

 夏以降はFWのDF背後を狙う動きなど得点パターンが増加。また、1年間かけて取り組んできた身体作り、走力強化の成果が出て来ているようだ。仲元監督は「毎回毎回全国で負けた後に反省で出てきたのが『フィジカルで勝てんやったな』や、『最後の最後で走り切れんやったな』などがあったので、今年は割り切って身体を作ることと走り切ることをやってきました」と説明する。

 あえて、他のトレーニングの時間を削ってまでも時間を割いてきた身体作りと、ボールを使っての走力強化。全ては「全国で勝つ」ために取り組んできたことだ。選手たちも走ることへの意識は高い。

 最終ラインの柱であるCB板舛寿樹(3年)は「サッカーで走ることは一番大事なところかなと思っている。(特に重視しているのは)最後まで走り切るというところで、DFがピンチの時に攣ったりすると終わりなので、最後まで走り切ること。持久力には自信があります」と語り、運動能力に秀でた右SB山根成留(3年、兄は金沢FW山根永遠)も「自分は長く走るよりかは短距離を何回も走る。スプリントの部分で走ることを意識している。そこを何回もチャレンジしていく」と口にする。

 仲元監督によると、今年はハードワークを進んでできる選手が多いのだという。最後まで献身的に頑張る力を持つ世代。取り組みとその献身性が融合し、上手くて、強くて、走れるチームになってきた。

 FW起用され、前線で献身的に走り続けている吉原翔大主将(3年)は「自分たちは守備から試合に入るチームで、組織的な守備が持ち味。全員で連動した守備で誰もサボらずに、奪い切って攻撃に持って行くという形の面に関しては他の高校よりもあると思います。だいぶ浸透してきたと思いますし、(走ることは)自分たちの強みでもあるかなと思います」と自信を見せた。昨年度の予選敗退や2年前の全国初戦で昌平高(埼玉)にPK戦で競り負けた経験などから得たもの、そして自分たちの特性を活かし、受け継がれてきた伝統の「堅守強攻」をより表現する。

 12月にはASICSのフットボールスパイク、新生『DS LIGHT』(1月24日発売予定)をテスト。OFF THE BALLを新コンセプトに加えた『DS LIGHT』はストップアンドゴーの際の負担を軽減し、試合終盤でも走り切る力をもたらしている。選手からは「このスパイクは(かかとのところに)GELが入って結構クッション性があるので、疲労も軽減されるかなと思います」「前に進む感じとか、ギュって止まった時もあまり衝撃がなくて、凄く履きやすい」「走りやすいし、足にかかる負担というのも軽くなっているんじゃないかなと感じました」という声。全国大会へ向けて着用することになれば、怪我の防止や試合終盤の疲労軽減に加え、より彼らの「勝負強さ」を引き出す可能性もありそうだ。

 選手権初戦の対戦相手はインターハイ全国王者・桐光学園を破って選手権出場を決めた日大藤沢だ。チームの成長を口にするエースFW岡本拓海(3年)は「正直、予選を戦ってきて負ける気はしなかった。(全国大会は)神奈川代表と初戦ということで優勝候補だし、去年の瀬戸内より組み合わせ的には厳しい部分もあると思うんですけれども、1年間自分たちが成長してきたという自信を持って戦いたいと思います」と語り、岡本とともに1年時に全国を経験しているMF田中博貴(3年)は「まずは一戦必勝。大きい目標が優勝なので、それに対して一戦必勝という気持ちで戦っていきたい。1年の頃も試合に出させてもらって、あと一歩のところで負けてしまったので、そのリベンジを今回の大会で果たしたいと思います」と力を込めた。大目標は全国制覇だが、まずは初戦。「全国で勝つ」ために磨いてきた力を示して結果に繋げ、勢いに乗る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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