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俺たちの高校選手権…“トリックFK”“香川2世”“スカイ砲”

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 お正月の風物詩、全国高校サッカー選手権大会が今年も開幕する。98回の歴史を持つ大会で毎年のようにヒーローが生まれる。令和元年の今年度、新たなヒーローはどんな形で生まれるか。


13年度 第92回大会
四日市中央工高 MF小林颯(現日本体育大)

 三重の名門・四日市中央工高の一年生コンビ、MF森島司(現広島)とMF小林颯(現日本体育大)が躍動した大会だった。

 小林は前年度までエースのFW浅野拓磨(パルチザン)がつけていた背番号16を引き継いでいた。中学時代はC大阪U-15に所属。それもあって、樋口士郎監督(当時)から「イメージでは香川真司」と大きな期待をかけられ、“香川2世”と注目を集めた。


「すごく自信がついた大会でした。その活躍があって、高校時代は年代別代表にも選んでいただけた。率直にその時はサッカーがめちゃくちゃ楽しくて、嬉しいなというのがあって、頑張る活力になっていました。(森島の活躍)同じ舞台でやっていた選手がJ1の大きな舞台で活躍している。素直に嬉しいけど、どこのカテゴリでサッカーをしていようと負けたくないと今でも思っています。大学を卒業してからもサッカーを続けていくつもりなので、いいライバルとしてずっとやっていければいいなと思っています」



15年度 第94回大会
東福岡高 MF中村健人(現明治大)

 5万4090人の大観衆がどよめいた。15年度第94回大会の決勝戦。東福岡高は1点をリードして迎えた後半2分、正面やや右の位置でFKを獲得すると、主将MF中村健人がゴールネットに突き刺した。

 ただこのFK。味方選手3人が壁とボールの間に並び、中村が助走に入ると同時に、ゴールに背を向けたまま肩を組んで一歩ずつ後進。4歩下がったところで突然しゃがみ込むと、壁の目の前に立っていた3人も同時にしゃがみこむ“トリックFK”だった。夏のインターハイで対戦した立正大淞南高を参考にしたFKが、大一番で決まった。

 東福岡高は決勝で5得点を奪って大勝。連覇していたインターハイとの2冠を成し遂げた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

「高校2年の時に一個上の代にも全国優勝(インターハイ)を経験させてもらっていたけど、自分たちは本当に苦労して掴んだ2冠でした。あのFKで有名になりましたが、個人的にはあまり気にしてきたことはないかもしれません。自分は他人の目があまり気にならないタイプ。そこは自分の性格に助けられていると思います。来年からは鹿児島ユナイテッドFCでプロ生活が始まります。応援してくれていることに感謝して、選手、スタッフやサポーターから必要とされる選手になっていきたいです」



16年度 第95回大会
関東一高 GK北村海チディ(現桐蔭横浜大)

 16年度第95回大会の開幕戦。後半14分に守護神の負傷アクシデントに見舞われた関東一高は、1年生GK北村海チディを急きょピッチに送り込むことになった。

 公式戦出場は2試合目。ただ緊張を感じる間もなくピッチに送り込まれたことが幸い。好守を連発し、注目校の野洲高を完封した。大会直前に先輩のアクシデントによってベンチ入りGKに昇格した強運を持つGKが、一躍脚光を浴びた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

「当時は名前を知られてなかった中での出場だったので思い切りプレー出来ました。中学の時も試合に出ていなかった自分が、突然有名になったというか、名前を知ってもらえたことはよかったです。でも2年生で出たときは、その注目を意識してしまって、ちょっと緊張で固くなってしまいました。自分はまだ下手くそ。特に大学に入ってそう思うようになりました。キャッチングひとつにしろ、弾くところ、コーチング、全部足りないと思っているので、ひとつでも武器になるようにやっていきたいです」



17年度 第96回大会
長崎総合科学大附高 DF岩本蓮太(現駒澤大)

 近年、高校選手権ではロングスローが話題を集めることが多い。17年度第96回大会の長崎総合科学大附高DF岩本蓮太もロングスローで話題を集めた選手だった。

 迎えた流通経済大柏高との準々決勝。前半8分に右サイドからロングスローを投げると、ボールはゴール前の混戦をそのまますり抜けて、ゴールネットを揺らした。ただルール上、スローインが直接入ったとしても得点として認められることはなく、これも“幻のゴール”となった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

「あの大舞台に立てたこと自体が自信になりました。ベスト8で負けたことでもっと頑張らないといけないという気持ちにさせられています。ロングスローは中学の時にコーチと遊んでいて、そこで投げれるようになりました。もともと肩が強かったんだと思いますが、高校で初めてSBをした時に、ロングスローを投げたらすごく飛んだので、そこから試合でやるようになりました。幻のゴールも味方の選手の頭にかすって、周りにいた選手も音がしたと言っていました。でも判定は判定なので仕方がありません。大学ではしっかりと狙ったところに投げられるようになりたいです」



18年度 第97回大会
尚志高 DF沼田皇海(現新潟医療福祉大)

 皇海と書いて「スカイ」と読む。左足から放たれる強烈なFKが、“スカイ砲”として注目された。

 18年度第97回大会の3回戦、前年王者の前橋育英高と対戦した尚志高は0-0の後半9分にゴール前でFKを獲得。鮮やかな“スカイ砲”がゴールに突き刺さった。

 王者撃破でさらに勢いに乗った尚志高は、同校史上2度目の4強へと勝ち上がった。


「すごく自信になった大会でした。ベスト4で終わりましたけど、尚志のサッカーをみせようという目標でやっていたので、その意味では良かったのかなと思います。スカイ砲?大学でも出せるように頑張ります(笑)。尚志には今年も頑張ってほしい。染野(唯月)の欠場は残念ですが、将来性がある選手だと思うので、いい決断だなと思います。一足早くプロに行かれちゃったので、自分も追いつけるように、後輩なので負けないように頑張りたいと思います」

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

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