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“岡田メソッド”を引っ提げ山形中央を攻略!今治東が選手権初出場で初勝利

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今治東が初出場初勝利(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.2 選手権2回戦 山形中央0-2今治東 味フィ西]

 選手権初出場となる今治東中等教育学校(愛媛)が、堅守が持ち味の山形中央高(山形)を攻略して前後半1点ずつを挙げての勝利。静岡学園高(静岡)との3回戦へ進んだ。

 今治市にある高校からは初めての選手権出場。「初めてこの場所にきて前半は硬かった。私の想像を超える緊張感があったんだと思います。そのなかで立ち上がり、DF大谷一真(3年)を中心に持ちこたえた中で、徐々に挽回できたことが先制点につながったと思っています」(今治東・谷謙吾監督)。

 立ち上がりこそ硬さが見られたものの、時間が経つにつれ、徐々に形を作っていった今治東。前半24分、左サイドからFW尾上哲史(3年)のクロスをFW{高瀨太聖(2年)が反転してDFをはずし、右足を振り抜いてゴール。この先制点が今治東にとっては緊張の硬さをほぐすことにつながった。一方、山形中央にとっては、粘りの堅守が破られたことで少なからぬ動揺がもたらされたかもしれない。

「先制の場面はよかったが、ほかの部分でもたもたしていたところがあったのでハーフタイムに修正しました。後半の入りはよかったと思います」(今治東・谷監督)。後半に入ると今治東の前線からのプレスが効き始める。執拗なチェイシング、数的優位を作ってボールホルダーを囲むなど、山形中央に自由を与えない。

 さらに、相手の出方に柔軟に対応したバリエーション豊かな攻めも展開するように。すると後半15分、高瀨と尾上がボールをつないで、最後に高瀨が左足でシュートしてゴール。貴重な追加点を挙げた。結局守っては山形中央のシュートを試合通じて1本に抑え、効果的な得点もあって2-0で勝利。見事、選手権初勝利を記録した。

「13年ぶりの出場ということに意識はありました。1勝して喜んでほしかった」と山形中央の羽角哲弘監督は悔しい表情。山形県勢としては第85回大会に羽黒高が勝利して以来13連敗。選手権でのゴールもこれで9大会連続ゼロ。1勝すること、そして1ゴールを挙げることの重圧は年々高まっているのかもしれない。

 一方で、愛媛県も過去3大会初戦敗退&無得点という苦しい時期を過ごしてきた。この苦境を脱するきっかけになったのが、2019年にJ3昇格を決めたFC今治の存在だ。元日本代表監督の岡田武史氏が代表取締役会長を務め、クラブで作られたメソッドを地元に展開。コーチが巡回し、そのメソッドの浸透をはかってきた。

 今治東もその教えを受けている。「岡田さんが来られてからコーチが巡回してくださるのでコミュニケーションをとってきました。大体の流れは我々も学習できて新鮮ですし、ありがたいです。よく“守破離”という言葉を使うのですが、その“守”の部分を徹底して伝えていただいています。育成年代の基本、主にサポートや守備といったところです」。

 この日は岡田氏も試合を観戦。谷監督の功績を讃えつつ、「ひとつの成果だと勝手に思っている。全国で結果を出すことでインパクトを与えてほしい」とコメント。地域でひとつのサッカーの「型」を作り上げようとしてる新たな試みが、この試合でお披露目されたことは間違いない。次は名門・静岡学園との1戦。「失うものはない」と繰り返した谷監督。どのような試合展開になるか、注目だ。

(取材・文 伊藤亮)
●【特設】高校選手権2019

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