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[MOM3126]徳島市立GK米田世波(3年)_全球読み通り!“PK4連勝”GKの本音「一番は点を取って勝ってほしい」

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徳島市立高GK米田世波(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 尚志高0-0(PK3-4)徳島市立高 駒沢]

 夏の勝ちパターンを支えた“PK専用GK”が、冬の大舞台でも輝きを放った。相手のペナルティキック2本をストップした徳島市立高GK米田世波(3年)は「気持ち良かった。完全にタイミングが合っていたので」と“してやったり”の表情を浮かべた。

 今夏のインターハイは3連勝で8強入り。勝利はいずれも0-0で迎えたPK戦を制したものだったが、そこで名を馳せたのが米田だった。正守護神には背番号1を着ける万能GK中川真(3年)が君臨するものの、同点の試合終了間際には毎回背番号17の米田と交代するという流れ。1回戦からの3試合で出番を得た控えGKは、3試合で合計5本のキックをストップした。

 もっともそんな米田も今大会、PK専用GKという立場さえ確約されたものではなかった。河野博幸監督は振り返る。「こっち来る前まであまりPKも調子が良くなくて、中川で行こうと思っていたけど、昨日の感じを見ると米田かなと」。元日の練習を終えるまでは、夏の必勝ルーティーンに手を加えることも考えていたという。

 それは米田自身も感づいていた。「若干はしたっすね。ちょっと調子悪かったので」。それでも「昨日の練習で最後に確認した時にちょっとは戻ってきた感じがした。自信はあったので調子が悪くても本番は止められると思っていたし、そこは気にしなかった」と真摯に準備を進めてきていたようだ。

 そうして迎えた選手権初戦の2回戦、夏同様に0-0で試合が進んでいくと、米田は後半35分過ぎにウォーミングアップのペースを上げた。「夏があってからの冬なので、実績があった上で試合に出ることができる。負けたらアカンなと思っていた」。後半40+2分、緑のユニフォームに身を包んだ背番号17が満を持してピッチに入った。

 この日のPK戦は不利とされる後攻。そのうえ夏に3度のPK戦をこなしていることもあり、相手ベンチからはデータを共有する様子も見られた。それでも「クセとかないんで、気にしなかった」ときっぱり。それどころか「楽しもうと思って。今までしてきたことに自信を持って出た」と気持ちを昂らせながら決戦に向かった。

 相手のキックは5本。すべてが読み通りのコースだった。「今日はめっちゃ見えていた。相手の動きをよく見ている」。3本目までは伸ばした手の先をボールが通過していったが、4本目と5本目はドンピシャのセーブ。「みんなPKとか考えず、試合に出た人が頑張ってくれた。一生懸命に走ってくれたからPKに繋がった」。殊勲の控えGKは試合後、仲間への感謝を語った。

 米田はかつて、中川の厚い壁に阻まれる中で「うますぎるんで…」と退部を考えたこともあったという。それでも「普段はめっちゃ仲が良い。サッカーの時はお互い高め合う感じのライバル」という相棒と切磋琢磨する道を選び、「お互いに長所があって、伸ばしてきたんで」と誇れる関係性となってこの大舞台にたどり着いた。

 だからこそ、自身の活躍のためだけにPK戦を待ち望むという発想はなく、中川がピッチに立ったまま勝利してほしいという気持ちさえあるという。「PKで勝つことは嬉しいけど、僕としてはなんだろう……。PKが来たら来たでいいですけど、やっぱり一番は点を取って勝ってほしいっていうのがあるんです。後ろがゼロで抑えて。次はそれを期待しています(笑)」。奇跡のようなPK戦4連勝は肩肘張らない“2番手”によって支えられていた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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