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仙台育英は“格上”日大藤沢を気迫の守りと走りで完封。雑草軍団は準々決勝でタレント軍団に挑戦

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仙台育英高の左SB小林虎太郎主将がインターセプト。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.3 選手権3回戦 仙台育英高0-0(PK9-8)日大藤沢高 等々力]

「まぐれで良いから残りたいな、という気持ちがありました」
 
 仙台育英高の城福敬監督は本音を口にする。対戦した日大藤沢高はインターハイ日本一の桐光学園高を破って全国大会へ出場してきた強豪校。MF植村洋斗(3年)や右SB岡田怜(3年)のように、Jクラブからも関心を寄せられていた選手たちもいた。初戦では広島王者の広島皆実高に3-1で快勝。城福監督によると、「昨日(2回戦)の日大藤沢さん見ていると、正直、大量点獲られないことが、ウチができる精一杯かなと。食らいつくしか無いなとスタートした」という。“格上”相手に食らいついて引き離されないことを重視していた。

 15年ぶりとなる3回戦進出を果たしたものの、ここまでの2試合も思うような試合展開ではなかった。宮城県を代表する名門校・仙台育英でも、全国の強敵相手では相手にペースを握られる時間が増えてしまう。さらに、3回戦の対戦相手は明らかに“格上”。指揮官は「自分たちのペースになることはあまりないんだと言いました」。その上で臨んだ日大藤沢戦だったが、選手たちは一方的には押し込まれることなく前半を終え、0-0で自信を得て戻ってきた。

 選手たちは後半も「とにかく粘る。とにかく離れるな。粘ってマークをしよう」という指示を徹底。仙台育英は普段から運動量の多いサッカーを特長としているが、4日間で3試合目のこの日は体力的にもキツかったはずだ。

それでも、「サボるな。つかなきゃと思ったら、とことんつけと。『(それ以上付いて)来るな』と後ろから声がかかるまでとことんやりなさい」と指揮官から声がけされていた前線・中盤の1、2年生たちは“とことん”相手選手をマーク。左SB小林虎太郎(3年)、CB中川原樹(3年)、CB杉田輝稲(3年)、右SB角田一期(3年)の4人で構成された4バック、GK佐藤文太(3年)という3年生たちの支えもあり、仙台育英は得点を許さなかった。杉田の気迫のクリアや佐藤文のファインセーブなど「勝ちたい」「残りたい」という気持ちがプレーに表れた80分間。そして狙い通りにPK戦を制して30年ぶりとなる8強入りを果たした。

 GK佐藤は後方から見た3年生たちの姿について、「気迫しか無かったですね。『絶対にゼロで行くんだ』という気迫が伝わってきましたね」という。そして、小林は「『後ろは3年生に任せろ』と感じて、3年生の責任感や球際の強さ、負けないことが実を結んで、粘り強く守備をしたのが勝因。技術レベルで言ったら相手は格上。それを埋めるためには走らなきゃいけないし、球際で負けたらいけない。それを自分たちは3年間やったきた。この舞台に全部出せたことが良かった」と胸を張った。

 対戦相手に応じて守り方を変化できるのも仙台育英の強み。攻撃参加を繰り返してくる日大藤沢のSBを「決め事を作って基本SBが見るとして、上手くスライドしながらやった」(小林)という作戦も成功した。
 
 城福監督は、仙台育英について「僕らは雑草軍団」と説明する。プレミアリーグ勢や関東の強豪校に比べると、中学時代の実績面で劣るのは確か。それでも、「もっと決定力やもっと人を魅了するプレーをして、雑草からちょっと花が咲くように変わっていくように」と期待する。戦いながら成長するチームは、前評判の高かった日大藤沢を無得点に封じた自信も持って次の試合へ向かう。

 準々決勝の対戦相手は帝京長岡高(新潟)だ。新潟出身のGK佐藤文にとっては中学時代から見ていた選手たちとの対戦。「中学校の頃は(町田内定のU-18日本代表FW晴山)岬とか谷内田(哲平、京都内定MF、日本高校選抜候補)、(U-17日本代表候補FW矢尾板)岳斗は自分よりも上の方で自分なんて足元に全然及ばなかった」と振り返る。

 今回はその“足元にも及ばなかった”選手たちと4強入りを懸けて激突。晴山、谷内田、DF吉田晴稀(愛媛内定)のJクラブ内定3選手に加え、他にもMF田中克幸(U-17日本代表)、矢尾板と年代別日本代表候補を擁すタレント軍団への挑戦だ。「ここで一泡吹かせてやろうというか、やってやろうという気持ちがあります」という佐藤文をはじめ、“雑草軍団”の仙台育英が55年ぶりの4強入りを果たして、花を咲かせる。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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