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“集大成のゴール”を青森山田から…昌平FW山内「悔しかった3年間」が報われた時

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昌平高FW山内太陽(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.5 高校選手権準々決勝 青森山田3-2昌平 等々力]

 昌平高は後半25分、奇跡の逆転劇を演じるべくFW山内太陽(3年)を投入した。第一線での競技生活は高校限りで辞める決意を固めており、敗れればこれがサッカー人生ラストマッチ。そんな青森山田高との準々決勝で、背番号18は1点差に詰め寄る美しいゴールを決めた。

「この3年間は悔しさのほうが大きかった。(昨年の福井)国体でも優勝はしたけどスタメンでは出られなかったし、この選手権も2、3回戦は勝っていたけど出番がなかった」。藤島崇之監督は1-3で迎えた後半25分、そんな不遇のストライカーに逆転の期待を託した。交代の相手は15分前に途中出場していた主将のMF大和海里(3年)。勝負の一手だった。

「出番がない中でも最高の準備はできていた。よし、来たなと思った」。自身の立場は恵まれていたわけではなかったが、不満はなかった。「試合に出たい思いはあったし、それを表に出してイライラしても何も生まれない。必要になる時がどこかで来ると思っていた」。彼が“必要になる時”とはすなわち、得点が必要な時だ。

 これまで高めてきたのは「シュートの技術」。昌平では高い部類である178cmという長身を活かしたパワーシュートは一つの持ち味だが、その武器に精度を加えてきた。そうした結果、公式戦でも得点が奪えるようになり「監督の評価も上がっているのは分かっていたし、得点感覚が研ぎ澄まされていた」。舞台は整っていた。

 すると後半35分、ついに報われる時が訪れた。攻守の切り替えからMF鎌田大夢(3年/福島内定)の浮き球スルーパスが前線に通ると、これに抜け出したのが山内。名手GK佐藤史騎(3年)がすかさず飛び出してきたが、うまくドリブルでかわし、コントロールシュートをゴール左隅めがけて放った。

「緊張よりも、とにかくこのチームでサッカーをしたいという思いが強かった」。そんな思いのこもったボールはファーのサイドネットへ。「これまではゴール前で焦って枠を外すこともあったけど、今日は集中力があったのか時間がゆっくり進む感覚になった。落ち着いてプレーができた」。真摯に積み上げてきた努力が実った瞬間だった。

 もっとも、試合はそのままタイムアップを迎えて2-3での敗戦が決定。その瞬間、山内の第一線でのサッカー人生が幕を閉じた。「英語を学んで世界で活躍するビジネスマンになりたい」。そんな17歳は高校卒業後に大学進学が決まっているものの、部活動ではなくサークルでサッカーに取り組む意向を固めている。

 すなわち、大舞台でのゴールは本格的な競技生活のラストゴールとなった。「嬉しいというより悔しいことのほうが多いサッカー人生だった。中学校は試合に出られていたけど結果が出なかったし、高校は勝てるチームに来たけど1〜2年生は応援で、それからはずっとベンチ。でもずっと準備は続けてきた。集大成のゴールが決められたのは、これからの人生につながる良いことなのかなと思う」。サッカーで学んだことは、今後の人生で活かしていくつもりだ。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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