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2人の間に言葉はいらない…「最後が友達のいるチームで良かった」

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[1.5 高校選手権準々決勝 帝京長岡1-0仙台育英 等々力]

 別々の取材だったが、全く同じ答えが返ってきた。「本当にめちゃくちゃ仲が良くて、家に泊まりに行くくらいでした」。

 帝京長岡高のGK猪越優惟(3年)と仙台育英高のDF中川原樹(3年)はともに宮城県出身。中学時代はFCみやぎバルセロナで一緒にプレーした。しかし高校は県外への進学を志望した猪越が新潟への越境入学を決断したことで別々の道を歩むことになった。

 猪越はトーナメント表をみたときから、密かに対戦を願っていた。「勝ってこい、勝ってこい」。大会中、自分たちの勝ち上がりはもちろんだが、仙台育英の勝ち上がりも「夜も寝られないくらいワクワク」しながら見守ることで、準々決勝での対戦を祈り続けていたという。

 試合前日には「頑張ろうな」「いい試合にしような」というやり取りをした。「開会式では頑張れよって軽く言い合っていたけど、本当にここで勝負することになるとは思っていなかった」(中川原)。お互い特別な思い、運命を感じながら、80分間を楽しんだ。

 決着がついた試合終了のホイッスルが鳴ると、敗者となった中川原はその場で泣き崩れた。するとしゃがみ込む親友のもとに、逆サイドのゴールマウスを守っていたはずの猪越が駆け寄ってきてくれた。「ありがとうな」。2人の間に長い言葉はいらなかった。「本当に良かったです、友達がいるチームに負けて。最後が猪越で良かったです」。

 猪越は親友の想いも背負って憧れの埼玉スタジアムに乗り込む。昨年度、苦杯をなめたベスト8の壁を打ち破り、母校の歴史を塗り替えた。「去年、準々決勝で尚志に負けたあとで自分たちは準決勝を観に行った。1年後、ここに帰ってこようという話しをした。埼玉スタジアムでやるのは初めてですけど、去年の分もしっかりと楽しみたいと思います」。相手は王者・青森山田高だが、「自分たちのサッカーで決勝まで行って優勝したいです」と意気込んだ。

(取材・文 児玉幸洋)
●【特設】高校選手権2019

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