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王者を苦しめたパスワーク…帝京長岡MF谷内田「みんながいたからできた」

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帝京長岡高MF谷内田哲平主将(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 準決勝の試合後、帝京長岡高MF谷内田哲平主将(3年)の眼は赤く染まっていた。「自分だけじゃなく、本当にみんなが楽しみながらやれていた。このチームにいられてよかったなと思う」。絶対王者の青森山田高を相手に美しいパスワークを披露し、3万人近い観衆を大いに沸かせた技巧派集団は、惜しまれながら大会を去った。

 前半5分、MF田中克幸(3年)のヘッドはわずかに右へ。同6分、MF本田翔英(3年)の左足シュートは相手に当たって枠外。同10分、相手バックパスの乱れを突いたFW矢尾板岳斗(3年)のシュートは左外へ。22分、FW晴山岬(3年)の右足シュートも不発。同36分にも左サイドをえぐった本田のシュートがGKの股下で阻まれると、37分に訪れたDF酒匂駿太(2年)の決定機もヘディングシュートをが相手がクリア。前半だけで次々に決定機を作った帝京長岡だったが、スコアが動くことはなかった。

 一方、青森山田はしたたかだった。前半16分、クロス攻撃からワンチャンスを決め切ると、後半2分にもカウンター攻撃から加点。「攻撃しながらも失点をしないようにチーム全体でやっていた。前半の0-1は悪くなかったけど、後半の立ち上がりにやられたことで勝負が決まった」(谷内田)。同32分には田中のスペシャルなミドルシュートで1点を返したものの、その後も決定機を活かせないままタイムアップの笛が鳴り響いた。

 試合後、古沢徹監督は「あと3日、このメンバーでいたかった」と決勝目前での敗戦に肩を落とした。4歳から地元の長岡ジュニアユースで切磋琢磨してきた谷内田、晴山、矢尾板の3選手を中心に実力を高めてきた技巧派集団。誰もが本気で日本一になれると信じていただけに、途中交代で大会を終えた主将は「結果を出せなかったことは満足できない」と語気を強めた。

 それでも囲み取材中、チームメートへの思いを問われた谷内田は「自分が生かされるプレーヤーなので、岬とか田中とかがいなかったら自分のプレーは出せなかった。仲間に感謝したい」と言葉を紡ぎながら目を潤ませた。そして「みんながいたからこそああいうサッカーができたので誇りに思う」と積み上げてきた歴史に胸を張った。

 谷内田は今季から京都サンガF.C.に加入。「サッカー人生の全てを長岡で育ったので、緑の血を流しながらJリーグでもやれれば…」。そう語る18歳が楽しみにしているのはやはり、町田へ加入する晴山、愛媛に加入するDF吉田晴稀(3年)ら仲間との再会だ。「みんな応援してくれると思うので期待に応えたい。また他にもJリーグに行く人がいるので、一緒のピッチで戦いたいというのが一番の気持ちです」。愛する故郷を巣立っても、長岡が育てた縁は消えない。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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