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この涙を未来の糧に…“最後は笑顔”の帝京長岡FW晴山岬「いいサッカーでした」

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帝京長岡高FW晴山岬(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.11 選手権準決勝 青森山田高 2-1 帝京長岡高 埼玉]

 タイムアップ直後のピッチでも、仲間に囲まれたロッカールームでも、あふれる涙は止められなかったという。何より胸に響いたのは、14年間の付き合いで「初めて見た」という谷口哲朗総監督の涙。「日本一の監督にできなかったのは自分たちの力のなさ」。帝京長岡高FW晴山岬(3年)はさまざまな思いを背負って新たなステージへ歩んでいく。

 8強の壁に阻まれた前回大会の悔しさを胸に、1年越しに辿り着いた埼玉スタジアムでの準決勝。帝京長岡は絶対王者の青森山田高を相手に華々しいパフォーマンスを見せた。「めちゃめちゃ崩せた。楽しかった」(晴山)。背番号10の言葉どおり、ショートパスとドリブル、ポジションチェンジとフリーランを小気味よく繰り出す攻撃で次々に決定機を導いていた。

 ところがゴールだけがなかなか決まらない。クロスからのヘディングシュート、相手のミスにつけ込んだ単騎突破、サイドをえぐってのドリブル——。次々にボールがゴールマウスから逸れていくと前半22分、晴山自身もフットサル仕込みのクイックターンからフリーの状況を作り出すも、「落ち着いていた」というシュートは無情にも左へ外れた。

 一方、青森山田はしたたかだった。前半16分、カウンター攻撃から先制点を与えた帝京長岡は後半立ち上がりの2分にも追加点を献上。同20分、晴山はペナルティエリア左寄りでうまくボールを収めたが、左足シュートは相手GKに阻まれた。ここでのせめぎ合いは「決め切るところ、守り切るところの勝負強さがあった」(晴山)と振り返るしかなかった。

 とはいえ、晴山はそれでも焦りを見せなかった。微妙な接触プレーでゲームが中断した際には相手選手と握手をするなどフェアプレーを徹底。「自分が一番笑顔でしなきゃいけないし、最前線にいる中で自分が焦ってもチームが乱れるだけだし、自分が一番落ち着いて絶対に勝てるというふうに思わなきゃ試合も勝てない」。そんな信念が実ったか、同33分にはMF田中克幸(3年)の「スーパーだった」(晴山)シュートで一矢報いた。

 しかし、うまく時間を使う王者を前に反撃の勢いは削がれていく。試合途中には3歳から共にサッカーをしてきたFW矢尾板岳斗(3年)、MF谷内田哲平(3年)が次々交代。残された晴山は「自分が勝たせないといけない、14年間をここで終わらせてはダメだ」という思いで戦っていた。それでも後半終了間際、MF青山慶紀(3年)のパスを受けて放った晴山のシュートは枠外。これが最後の決定機となり、最後の冬はベスト4で幕を閉じた。

「決められなかったのはFWとしての仕事ができなかったということ。チームを勝たせることができなかったということ。FWとして点が取れない試合が最悪な試合だと思っているので、GKに止められたシュートだったり、前半の左に逸れてしまったシュートだったり、一つ一つを修正しないといけない」。今大会4得点のエースは敗責を自ら背負った。

 それでも最後は「常に笑顔」という姿勢を貫いた。「めちゃめちゃ泣きました。みんな泣いていた。でも自分たちの色はそういう色じゃないと思って、少し笑かすようなこともして、みんな最後は笑顔で終わらせられた。勝てなかったことは悔しいけど、そうやって笑って終われたのは良かった」。取材エリアに姿を現した時点では普段どおりの笑みも浮かんでいた。

「決められなかったのが今後の課題。そういう課題を一つ一つ克服していかないといけない」。「決められなかったのは実力不足。この経験をいい方向に持っていかないといけない」。この試合で出てきた課題とは素直に向き合っている。ただ、3万人近い大観衆を沸かせた“自分たちらしい”プレーについては、誇らしさものぞかせる。

「意外とみんなのまれないでプレーできたのがうれしかったし、一番自分たちのサッカーやれた試合だった。山田相手にここまでやれたのは、次のステージに行ってもいい自信になる。いいサッカーでした。楽しかった」。

「ボールがどんどん回るし、自分のところにボールがどんどん来てくれる。安心して前で待っていられた」。

「狭い局面でどれだけ崩せるかを一年間やってきたので、ああやってシュートまで行けたのは一年間やってきたのが出たと思う」。

 だからこそ、そうした手応えと課題は全て引っくるめて、次のステージに抱えていくつもりだ。「ああいう小さなチャンスを大きなチャンスにするFWになるため、この経験を活かして日々練習しないといけないとあらためて思わされた。プロでも努力を怠らず、活躍できるように頑張りたい」。その舞台はJリーグ。「自分たちが輝けば長岡の名前も広まる」と故郷の誇りも背負って挑む。

表彰式では笑顔を見せた(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2019

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