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「“赤い壁”になれ」。矢板中央は残酷な幕切れも…主将CB長江中心に90分間築いた堅守

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矢板中央高(栃木)の堅守を率いた闘将DF長江皓亮(3年)(写真協力『高校サッカー年鑑』)

[1.11 選手権準決勝 静岡学園高 1-0 矢板中央高 埼玉]

 “堅守の矢板”らしくスタイルを完遂し、90分間を無失点に抑えた。矢板中央高はテクニカル軍団・静岡学園高の猛攻に晒されながらも、数的優位を作って個人技を抑え、体を張ったブロックで耐え凌いだ。0-0のままアディショナルタイムに突入したが、PK戦突入も見えた90+3分に痛恨のPK献上。これを沈められると、直後に敗戦を告げるホイッスルが鳴った。

 残酷な幕切れに、涙を抑えられなかった。守備陣を統率した主将のCB長江皓亮(3年)は「堅い守備は出来ましたが、最後に決められてしまった。あそこであと一歩、二歩耐えていれば」と悔やしさをにじませた。初の決勝進出は叶わず、最高成績の09年度、17年度大会に続く4強敗退となった。

「監督からは『“赤い壁”になれ』と言われた」。高橋健二監督の要求をチーム一丸で体現し、フィールド選手全員が自陣深くまで下がり、中央に分厚いブロックを構築した。自陣に釘付けにされ、24本のシュートを浴びる展開。ラインを押し上げられなかった一方、3万人近い大観衆の前で伝統の堅守を発揮した。

「今年はチーム力を大事にしてきて、全員で声をかけ合ってきた」。周囲からは厳しい評価も受けたが、反骨心で這い上がった。プリンスリーグ関東は昨年度の優勝から最下位に転落。選手権も栃木県予選から失点が続いたが、大会中にも進化を遂げ、3回戦・鵬学園戦、準々決勝・四日市中央工戦をいずれも2-0で制した。この日も気迫に満ちた全員守備で90分間耐え、矢板のプライドを示した。

 3年間の集大成とも言える選手権が幕を閉じた。岐阜県出身の長江は越境入学に踏み切り、憧れだった栃木県の名門・矢板中央でプレーした。「苦しいことも嬉しいこともあって、濃い3年間だった。この3年間の経験を次のステージにつなげたい」。大学サッカーの舞台に進む主将は「来年は日本一を獲ってほしい」と後輩に悲願を託した。

(取材・文 佐藤亜希子)
●【特設】高校選手権2019

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