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ビッグプレーよりも…青森山田FW田中が悔やんだ「あの一瞬」

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青森山田高FW田中翔太は得点をもたらしたことよりも、失点に絡んだことを悔しがった。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[1.13 選手権決勝 青森山田高 2-3 静岡学園高 埼玉]

 ビッグプレーで青森山田高を勢いづけたFWは、失点に絡んでしまったことを何よりも悔しがった。

 1-0で迎えた前半33分、青森山田のFW田中翔太(3年)は自陣でボールを大きく持ち出した静岡学園高CB阿部健人(3年)からインターセプト。「前半の立ち上がりから前へのプレスというのは決めていた。あの距離ならば間に合うなと思って、思い切りプレスをかけてそれで上手く奪えた」という田中は、そのままドリブルからMF武田英寿主将(3年)へスルーパスを通す。

 そして、武田がPAでGKに倒されてPKを獲得。これを武田が決めて2-0となった。田中は前半、このビッグプレーに加え、味方の縦パスをことごとく収めて攻撃の起点に。彼が前線で時間を作ったことで青森山田はチーム全体で押し上げることができ、人数を掛けた攻撃やセカンドボールの回収に繋げていた。

 だが、チームは前半アディショナルタイムに痛すぎる失点。FKから静岡学園の左SB西谷大世(3年)が強引に左足を振り抜いたシュートはヒットせず、ゴール前を横切る形となった。青森山田にとっては落ち着いてクリアしたかったところだが、田中の太ももに当たって小さくこぼれたボールを静岡学園CB中谷颯辰(3年)が右足ダイレクトでシュート。GK佐藤史騎(3年)が触れたものの弾くことができず、ボールはゴール左隅に吸い込まれた。

 田中はダイレクトでクリアできなかったことを悔しがる。この瞬間、目の前で青森山田の選手が頭でクリアしようとしたが、高くバウンドしたボールはその頭上を超えて田中の下へ。ジャンプした選手が一瞬死角となって落下点を掴めなかったか、田中は反応が遅れてボールを太ももに当ててしまう。「ダイレでクリアしようと思ったけれど、ボールが(味方と)被ってしまって、そのままももに……。失点シーンに絡んでしまった部分が一番悔しい」と唇を噛んだ。

 静岡学園が息を吹き返して迎えた後半、青森山田はボールを握られる中でチーム全体が受ける形になってしまい、田中も前線で時間を作ることができなくなった。その結果、青森山田は苦しい展開に。田中はシュートを撃てないまま、逆転負けの悔しさを味わう結果となった。

 田中は準決勝の帝京長岡高戦で非常に難しいヘッドをゴールに沈めるなど、インターハイ、プレミアリーグファイナルを含めて大舞台で活躍してきた。選手権優秀選手にも選出されたストライカーは青森山田を牽引したが、最後の選手権を笑顔で終えることはできず。「準決勝まではチームに貢献できたのがあったと思うんですけれども、最後の最後でチームのためにやり切れなかったという悔しい気持ちがあった。この悔しい気持ちを忘れずに、この高校でやり切れなかった自分の足りない部分、できない部分を大学4年間でできるようにして絶対にプロになりたい」と誓った。青森山田で学んだ徹底することを次のステージでより極め、必ず進化して4年後にプロ入りを果たす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2019

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