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アジア人初となるデフフットサルの欧州CLに出場した松本弘ら3選手が帰国

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写真提供:松本弘選手

 昨年11月、スイスで行われたデフフットサルのワールドカップ(W杯)に出場していた日本代表の松本弘(メルカリ)がスイスの強豪クラブ、ユナイテッドD.C(デフクラブ)に加入し、ヨーロッパのクラブで最高峰の戦いとされるデフフットサルの欧州チャンピオンズリーグ(DCL)に日本人で初めて出場を果たした。ユナイテッドD.Cから直接オファーを受けた松本がクラブ側にかけあって、24歳の鎌塚剛史(大東文化大)、27歳の設楽武秀(中外製薬)も同じクラブで練習生のような形で帯同し、現地で実力が認められたため、2人の出場も実現した。1月21~25日まで行われた大会に出場した3選手が先月末に帰国し、ゲキサカにコメントを残した。7試合に出場、4ゴールを決めた松本がこう明かす。

「海外のクラブチームに入ること自体初めての体験で、自身がどうチームにフィットするか期待と不安でしたが、6カ国が混じり合ったチームは日を追うことに団結し、勝利を分かち合い、互いにリスペクトし合い、支え合える関係性にまでになりました。試合の方は、ワールドカップまで築き上げていった自分のスキルと、設楽と鎌塚持っているスキルとこの三人の協調性で各国のエース級のチームと渡り合うことができました。これまでデフフットサル代表、OURVISIONでの応援、サポートしていただいたことに、改めて感謝したい」

 日本人のみならず、アジア人として初めてのDCL参戦となった今大会は過去最多の24チームが出場。各国内クラブ選手権を制覇した強豪クラブ同士が5日間で予選リーグ、決勝トーナメント、順位決定戦を戦った。4チームずつ6組に分かれたリーグ戦上位2チームに加え、3位の上位4チームの16チームから決勝トーナメントを行った。

昨年イタリアで武者修行をしていた経験も生きたのか、ゴールラッシュした鎌塚(右、写真提供:松本弘選手)

 松本らが加入したユナイテッドDCは、スイスの国内選手権を2013創立から7年連続で優勝、2018年にはDCL準優勝にも輝いた強豪だ。昨年11月に自国開催となったW杯で決勝まで進み、スペインと互角に惜敗したスイス代表の中心選手も多数在籍する。その中に交じって、松本、鎌塚、設楽は奮闘した。14ゴールをあげた鎌塚もこう振り返る。

「まず、松本さん、設楽さんと3人一緒のセットで世界のトップ選手たちと闘えたことをとても誇りに思います。自分の現段階の持てる力が海外選手相手にどこまで通用するか、W杯以上のパフォーマンスを発揮できるか、楽しみもありつつ不安もありました。今大会、クラブは5位に終わりましたが、間違いなく(10位に終わった日本代表の)W杯以上の実績を残すことができました。前回大会優勝のドルフィンズ(イスラエル)、W杯優勝メンバーを揃えたフエルバ(スペイン)といった圧倒的強さを誇るチームと闘えたことを今後の糧にして、2023年のW杯でのメンバー入りを目指して精進します」

 設楽はこう続けた。

「ヨーロッパNo.1を決めるデフフットサルクラブの大会に初めて出場してみて、1日2試合を含むで5日間で全7試合5のハードなスケジュールでした。そんな中、2連覇中のドルフィンズとW杯チャンピオンメンバーを揃えたフエルバと対戦できたことは大きな経験値でした。また対戦できただけではなく、1点差の惨敗だったり、引き分けに持ち込み、PK戦で惜しくも敗れたりと、接戦の試合を繰り広げることで、ヨーロッパ中に日本の強さを伝えることができました。今大会は5位でしたので、来年はベスト4に入ることを目標に、所属している社会人フットサルチーム『スプリズ』で経験値を積み重ねていきます」

 設楽は今後、9月デフサッカーW杯メンバー入りし、予選リーグを突破が当面の目標にしている。さらに3人の日本人選手出場をアシストした松本は今後も、若手選手の海外挑戦のパイプ役になることを目指しながら、個人としても毎年、DCLの出場すること、そして2021年ブラジルで開催予定の夏季デフリンピックのデフサッカー日本代表に入りも目指していく。3人が成し遂げた快挙によって、海外挑戦へのハードルは一気に下がり、リアルタイムで世界トップの環境や空気に触れられる可能性が広がったことは間違いない。

松本弘(右から3人目)らは相手選手と健闘を称えあった(写真提供:松本弘選手)

【デフフットサル ヨーロッパチャンピオンズリーグ2020 大会結果】
UNITED DCの戦績

≪予選リーグ≫
▼1月21日
〇6-1 CHARLEROI(ベルギー)
(日本人得点者)
鎌塚3点、松本

●1-2 DOLPHINS(イスラエル)1-2
(日本人得点者)
設楽

▼1月22日
〇3-2 SLOBODA(北マケドニア)
鎌塚3点
※予選リーグ2位通過

≪決勝トーナメント≫
1回戦
▼1月22日
決勝トーナメント1回戦
〇4-2 PARI DC(フランス)
(日本人得点者)
鎌塚2点、松本

▼1月23日
決勝T準々決勝
(日本人得点者)
△4-4(●PK2-3)HUELVA(スペイン)
鎌塚2点、松本2点

▼1月24日
5-8順位決定トーナメント 
〇4-3 BDFC(イングランド)
(日本人得点者)
鎌塚4点

5-6位決定戦
△2-2(〇PK3-2)SURD(スウェーデン)
(日本人得点者)
設楽

観客がどこからでも見られるスコアボード。ファンも楽しめる会場になっていた(写真提供:松本弘選手)

左から設楽、松本、鎌塚(写真提供:松本弘選手)

(取材・文 林健太郎)

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