beacon

「スーパーサブ」返上へ ブラインドサッカー日本代表のカトケンがゴールで猛アピール

このエントリーをはてなブックマークに追加

ドリブルする園部優月に追いつこうとする加藤健人(右)

 3月16日に開幕する文京区のJFAハウスで国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)の公認大会「Santen IBSA ブラインドサッカーワールドグランプリ(WGP) 2020」品川区天王洲公園)にむけて、ブラインドサッカー日本代表が24日、東京・葛飾区の奥戸総合運動公園で行われた3日間の合宿を打ち上げた。途中出場の多いFP加藤健人が実戦形式の3対3やPK戦でゴールを決めた。

 通常よりフィールドプレーヤーが1人少ない3対3は、フルコートの8割ほどの広さで5分間を1セットとして、何セットも続いた。通常よりスペースがあるため、一度ボールを持てば、ゴールに向かって攻め続ける。加藤は体中に乳酸がたまった状態の中、最終セットで右足を振りぬき、ゴールを決めた。加藤以外で決めたのは黒田智成のみ。結果で、しっかり主力4人の「四天王」(黒田、川村怜佐々木ロベルト泉田中章仁)の一角を崩すための猛アピールだ。

「疲れている中で最後、ゴールを決められてよかったかな。3対3は休憩時間も短いし、体力的にきついんですよ」

 2017年夏の英国遠征までは主力だった。イングランド相手にゴールも決めた。しかし、その直後に行われたアジア選手権(マレーシア)で目の下を切って、現地で手術を受けて以降は恐怖心が芽生えだした。思い切りのよさが失われ、持ち前のシュート技術を十分に発揮できず、ロベルトの成長でサブに回ることが多くなった。

 それ以降、メンタルトレーナーの後藤史氏とカウンセリングを続け、小さな成功体験を積み重ねることを意識してきた。はっきり形になって表れたのが昨年11月、加藤の地元・福島のJヴィレッジで行われたアルゼンチン戦。日本はロベルト、黒田智成が不在。先発として出番が回ってきた加藤は、昨年のワールドグランプリで得点王とMVPに輝いた世界的ストライカー、マキシリアーノ・エスピニージョの対面を任された。そのマキシに決められて0-1で敗れたが、フル出場して猛者と渡り合った加藤に対し、高田敏志監督も「マキシのいるサイドでかなり戦えたし、攻守の切り替えも速かった。もともといいところが出てきている。トップと2列目の両方で期待している」と合格点を与えた。

 2列目の主力だった加藤が一度、負傷を機にサブに回り、得意ではない1列目で途中出場することも多かった。そこで腐ることなく、チームの状況に応じて1列目、2列目の両方の役割を全うしようと歯を食いしばっていたら、いつのまにかプレーの幅が広がった。加藤自身も手ごたえをつかみはじめている。

「アルゼンチン戦は自分がやらなきゃ、という思いがありました。トモさんがけがをして、ロベルトが不在だったので、偶然かもしれませんが、スタメンでフルで出られたことが大きかった。相手のエースがいる中でしっかり当たれて、そこを評価してもらえたことも自信になっています。最近、練習の時からコーチ陣が何を求めているか確認しながらやっていて、迷いなくピッチには入れています」

 プロ野球にたとえれば、先発ローテーション投手が勝ち星に恵まれずに中継ぎに回されたが、そこで結果を残し、再び先発ローテ―ションに食い込もうとしている状態。加藤が「先発、取ります」と言い切れる精神状態に戻ったとき、日本代表のチーム力は一気にあがるに違いない。

■3月16日開幕 ワールドグランプリのチケット販売情報はこちらから

【大会開催概要】
▼出場予定国:8カ国
(グループA) 
アルゼンチン①、中国③、日本⑬、ドイツ⑳
(グループB) 
ブラジル②、スペイン⑤、フランス⑪、タイ⑮
※丸数字は世界ランキング

▼スケジュール
◆3月16日
11:00(B)ブラジル―スペイン
13:30(B)フランス―タイ
16:45(A)アルゼンチン―中国
19:15(A)日本―ドイツ

◆3月17日
11:00(B)スペイン―タイ
13:30(A)フランス―ブラジル
16:45(A)中国―ドイツ
19:15(A)日本―アルゼンチン

◆3月18日
11:00(B)タイ―ブラジル
13:30(B)スペイン―フランス
16:45(A)ドイツ―アルゼンチン
19:15(A)中国―日本

3月19日予備日 

◆3月20日10:00下位トーナメント
12:30準決勝①
15:30下位トーナメント
18:00準決勝

◆3月21日
10:00 7位決定戦
12:30 5位決定戦
15:30 3位決定戦
18:00 決 勝

【ワールドグランプリ出場国と
昨年の対戦スコア】
順位 国名
1位:アルゼンチン
 11月4日●0-1

2位:ブラジル
7月14日●0-1
7月15日●0-2

3位:中国
10月5日△2-2(PK2-3) 黒田2

5位:スペイン
3月21日〇1-0スペイン 川村
3月24日●0-1スペイン
6月22日〇1-0スペイン 川村

6位:イラン
10月3日●0-1

11位:フランス
 対戦なし

13位:日本

15位;タイ
 10月6日〇2-1 川村2

20位:ドイツ
 対戦なし
【注】名前は得点者

▼日本代表合宿参加者
GK佐藤大介(たまハッサーズ)
GK佐々木智昭(コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ)
FP川村怜(Avanzareつくば)
FP黒田智成(たまハッサーズ)
FP{田中章仁}}(たまハッサーズ)
FP加藤健人(埼玉T.Wings)
FP佐々木ロベルト泉(パペレシアル品川)
FP寺西一(パペレシアル品川)
FP佐々木康裕(ファンタス千葉SSC松戸ウォーリアーズ)
FP園部優月(free bird mejirodai)
FP日向賢(たまハッサーズ)★
FP丹羽海斗(free bird mejirodai)★
【注】★はWGPには参加予定なし

(取材・文 林健太郎)

●ブラサカ/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら

TOP