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Jクラブをeスポーツで応援!? 異例開催の“金eJリーグ”、オンラインを生かした新たな可能性も

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スピード開催となった“金eJリーグ”

 サッカーゲーム「FIFA20」を対象としたeスポーツ大会「eJリーグ スペシャルオンライントーナメント」が6日に開催された。Jリーグ8クラブを代表するeスポーツプレーヤーによるオンライン形式で行われた今大会。新型コロナウイルスの感染拡大という“ご時勢”の中、サポーターもJリーグ中断の鬱憤が解消できる盛り上がりを見せた。

 Jリーグは2月25日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、3月15日までの公式戦94試合を延期することを発表。現在でも感染の拡大は留まらず、今後の中断延長の可能性も残されており、Jクラブサポーターにとっても鬱憤が溜まる日々が続いている。

 そんな中で開催されたeスポーツ大会「eJリーグ スペシャルオンライントーナメント」。サッカーゲーム「FIFA20」の国内トッププレーヤー8選手が各クラブを代表し、オンライン上で対戦が行われた。選手は各々の場所でプレーし、実況・解説はビルの一室で行い、視聴者はYoutubeの生配信で観戦というオンラインでの本大会開催は過去2年間のeJリーグでも初の試み。開催を決めたeJリーグ運営の準備期間は10日間。しかし、会場を必要としないことや過去2年間のeJリーグ開催で得たノウハウ、トッププレーヤーたちとの連携により準備はスピーディに進んだ。話を受けた各Jクラブも公式ツイッターでの告知を積極的に行っていた。

 配信設備が整った都内のビル一室では、自身もeスポーツプレーヤーであるMCの羽染貴秀氏やeスポーツ解説の経験も豊富な元Jリーガー・播戸竜二氏がスタンバイ。羽染氏は本物のサッカーさながらの実況で、播戸氏はプロサッカー選手としての目線やJリーガーのこぼれ話、交流のある中村憲剛(川崎F)にLINEで連絡するなどで大会を大いに盛り上げた。

 参戦したeスポーツプレーヤーは世界大会にも出場する国内有数の選手たち。各選手はそれぞれのクラブサポーターであったり、過去のeJリーグでクラブ代表として戦っており、そのクラブへの思い入れは強い。Youtubeでの観戦スタイルもさまざまで、サッカーゲームをしたことがある視聴者は高レベルなプレーに唸り、Jクラブサポーターはひいきのクラブを背負うプレーヤーたちにエールを送っていた。

 C大阪代表として大会を制したつぁくとはeスポーツチーム「Blue United eFC」に所属。2月にはeクラブワールドカップにも出場している。大会前から「FIFA20」でのC大阪の戦い方を研究しており、「後半にフレッシュな豊川(雄太)選手を入れて、カウンターでがっつり決めるスタイル」で得点を量産。「守備的なボランチ2枚を使いながら、最終ラインを整えて守るという自分のやり方でいけた」と優勝の勝因を明かした。

 ナスリ(鹿島アントラーズ)とスレッジ(湘南ベルマーレ)の2選手は都内のビルで大会に臨んだ。ナスリはFIFA最高峰の舞台でもある「FIFA eワールドカップ」に2018年に出場した国内トッププレーヤーの一人。今年から鹿島のeスポーツチームに加入した弱冠20歳の“最強”プレーヤーだが、準決勝ではスレッジに敗れた。試合後、ナスリは悔しさを見せながらも「Jリーグが中断している分、注目度が高いので、いつもより気持ちが入って楽しい感じで試合ができた。嬉しかったです」と大会を振り返る。鹿島の一員としてプレーした今大会を経て、「Jクラブを背負っている数少ないプレイヤーとして自覚が出てきた」とその思いを語った。

 スレッジは準決勝でナスリに勝利したものの、決勝でつぁくとに敗れて準優勝に。スレッジもナスリと同様に、19年に湘南の選手として加入した。市立船橋高のサッカー部出身ということもあり、リアルのサッカー経験も豊富。公式大会への参加はまだ少ないが、ドイツへの武者修行などで実戦経験を重ね、今大会でもファイナリストとして決勝の舞台に立ってみせた。

 大会を振り返り、スレッジは「あと一歩のところだった分、悔しさは残るけど、面白い大会でした」と晴れやかな表情。湘南の一員となってほぼ1年が経過し、「ベルマーレのサポーターから注目してもらえたように思う」と今大会でも声援を感じていたという。急きょ行われたものの、想像以上に注目が集まった今大会。「Jリーグの代わりとして行われたのはeスポーツが盛り上がってきた証拠だと思うし、これを機に見てくださった方も注目してほしい」とさらなるファン層拡大を呼びかけた。

 Youtubeでの生配信はツイッターとの相性も良く、Jクラブサポーターによる「#金eJ」のハッシュタグを付けた投稿もリアルタイムでは目立った。トッププレーヤーによる熱の入った試合、実況・解説による進行、ネット環境が整っていれば誰でも見られる環境も相まって、史上初の試みとなったオンラインでの本大会は滞りなく無事成功。競技としての認知度が高まる“eスポーツ”だが、今回の取り組みは興行面での新たな可能性も垣間見せた。

(取材・文 石川祐介)

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