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総監督は福岡大・乾監督。創部2年目の福大若葉は高大一貫の取り組みで強化し、福岡4強、その先へ

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福大若葉高は系列の福岡大サッカーグラウンドなどでトレーニングを行い、高大一貫での強化を目指す

 他にはないカタチで激戦区・福岡に新風を吹かせる――。福大若葉高(福岡県福岡市)は、19年4月の男女共学化とともに男子サッカー部を創部。系列の名門・福岡大との高大一貫による強化をスタートしている。

 現在、九州大学リーグ1部で3連覇中の福大は、09年の総理大臣杯で大学日本一。天皇杯でJ1チームを撃破した実績を持つほか、日本代表FW永井謙佑(現FC東京)ら約70名ものJリーガーを輩出している全国区の強豪大学だ。19年の共学化へ向けて男子生徒募集を始めた福大若葉と福大が協力し、福大若葉男子サッカー部を強化することを決定。約30年に渡って福大の指揮を執る名将・乾眞寛監督が福大若葉の学校説明会にも出席し、男子サッカー部立ち上げ・強化を中学生たちに伝えていた。

 乾氏は、福大若葉の総監督兼アドバイザーにも就任。また、福大若葉の監督には福大OBで、九州国際大付高(福岡)監督として同校を全国高校選手権やインターハイ出場、プリンスリーグ九州上位へ導いている知将、杉山公一氏(福岡県サッカー協会技術委員長、永井の高校時代の恩師)が迎えられた。杉山監督は九国大付での立場を後進に譲り、新たなチャレンジをすることを決断して2年目。恩師・乾監督やコーチ陣とともに、福大若葉のメリットを活かしながら新天地で強豪を作り上げようとしている。

 乾総監督は「なりふり構わずサッカーだけを強化するのではなく、勉強もできるところを目指している。福大へ推薦で行けるメリットもあります。大学まで見据えてその入口として(福大若葉を)志してもらえればいい」とコメント。サッカーだけ一生懸命になるのではなく、福大の附属校として文武両道の姿勢を貫く構えだ。

 サッカー面において、福大との協力体制はメリットしかない。土日や長期休暇を中心に、トレーニングは学校から自転車で25分の距離にある福大の人工芝サッカーグラウンドを利用。高校生が大学生のGK練習に交ざったり、福大の練習・試合を間近で見る機会も設けられた。

 今年からは、力のある高校生を福大の練習に参加させたり、高大による練習試合を行う予定。将来、指導者を目指す福大生が福大若葉の選手を指導する機会もありそうだ。乾総監督は「(大学生との練習、試合は高校生にとって)どんな1回の練習も上回る経験になります」。九州を中心に実力者が集まっている福大はスピード、質も別格。福大若葉はその中で揉まれながら、個人、チームとしてレベルアップしていく。

「ゴールも、ボールも、ビブスも何もないところからのスタート」(杉山監督)。全てが思うように行くわけではない。ただし、「男子1期生ということもあって、一番最初から作り上げていくサッカー部だから、それが面白そうだと思ったし、さらにやりがいがあると思ったから選びました。練習中に(杉山)監督が言うことをただ聞くだけじゃなくて、しっかりと理解して次に繋げようと思っている」というDF瀬尾竜汰主将(新2年)ら1期生の選手たちは、杉山監督やコーチ陣の指導の下で着実に成長。1年目から長崎総合科学大附高(長崎)や九国大付、高川学園高(山口)、瀬戸内高(広島)などの強豪校と練習試合を行うなど経験を積み、迎えた選手権予選初戦(乾総監督もベンチ入り)では、県大会へ進出した九産大九州高相手にオール1年生で粘り強く戦い、0-2と食い下がった。
 
 創部2年目となる今年は期待のストライカー、FW合戸晴矢(ラパシオン出身)やMF森部圭汰(ルーヴェン福岡出身)、DF山口蓮(ブリジャール福岡出身)、GK小林永和(ブリジャール福岡出身)というU-15県トレセン組やDF渡邊紘己(トナカイFC U-15出身)、MF川上莉央(西南FC出身)といった素材が加入。杉山監督が「人間性が抜群。言ったことをめっちゃ吸収する」という瀬尾やMF藤野日向大、MF落合滉ら新2年は練習から最後の一歩が伸びたり、身体を張ったり、頑張りの利く選手が多く、レベルアップした1、2年生軍団がどこまで勝ち上がることができるか注目だ。

「高校の先生と違う角度で見てアドバイスもできると思う」と語る乾総監督や杉山監督の経験もチーム、選手にとってプラス。それぞれ、福大、九国大付で素材感のある選手を育ててきているだけに、高大7年計画でのJリーガー育成も期待される。

 近年の福岡の戦いは、プレミアリーグ勢の名門・東福岡高が中心。19年度選手権出場校の筑陽学園高、伝統校・東海大福岡高、そして今年の新人戦を制した九国大付を加えた4校が福岡の4強を形成してきた。ここへ来て、飯塚高が急激に台頭してきているが、しっかりとした土台を持つ福大若葉も今後の注目チーム。乾総監督は「(県外から選手を集めなくても、)十分に(福岡)市内の子で(福岡の上位へ)行けます。メイドイン福岡。めちゃくちゃ力みがある訳ではない。でも、ちゃんとやれば行けると確信しています。4強の一角に確実に入るチームで、より先の全国に出るチームにしたい」と力を込めた。

 決して福岡を勝ち抜くことは簡単なことではない。それでも、福大との連係で選手強化ができるシステムは、福岡県内のライバルにはない強みになるだろう。今後マークされることも間違いないが、選手たちの目標はそれを乗り越えて新たな歴史を一つひとつ築き上げて行くこと。瀬尾は「(福大は)一人ひとりの意識とかチームとしてのまとまりが練習を見るだけで分かる。そういうチームをこれから目指していきたい。今年には県大会に出て、福岡でも有名になれるように。杉山監督やコーチの指導の下、全員で頑張っていきたいと思っています」と宣言した。福大と同じエンジ・白のユニフォームに「WAKABA」の文字。そのユニフォームと福大若葉の名をまずは福岡、そして全国に知らしめる。

福大若葉の指揮官に就任した杉山公一監督は元大分FW。指導者としては、九州国際大付高を2度の選手権と1度のインターハイ出場に導いている

福岡大の乾眞寛監督は福大若葉高の総監督兼アドバイザーを兼任することになった


(取材・文 吉田太郎)

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