beacon

「怯まず 驕らず 溌剌と」。亀谷新監督就任の滝川二はモットーを表現し、“オール滝二”で頂点まで這い上がる

このエントリーをはてなブックマークに追加

「怯まず 驕らず 溌剌と」。新生・滝川二高は自分たちのモットーを表現して日本一へ

「怯まず 驕らず 溌剌と」(ひるまず おごらず はつらつと)。新生・滝二は自分たちのモットーを改めて意識し、表現して頂点まで這い上がる――。滝川二高(兵庫)は3度のワールドカップに出場したFW岡崎慎司(ウエスカ)やFW金崎夢生(現名古屋)、DF加地亮(元G大阪など)ら数々のプロサッカー選手を輩出し、06年全日本ユース(U-18)選手権、10年度全国高校選手権でそれぞれ日本一に輝いている名門校だ。今年3月1日に松岡徹前監督(教諭)に代わってOBで外部コーチの亀谷誠氏が新監督に就任。滝川二1期生として2年時冬から3年時にかけて兵庫3冠を達成し、その後鹿島の育成組織監督やスカウト、広州富力(中国)の育成年代の監督などを務めた経歴を持つ新指揮官の下で新たなスタートを切っている。

 ただし、就任当初は新型コロナウィルスの影響によって、サッカー部も活動休止中だった。その中、今月19日に兵庫県が県立学校に対して、週4回を上限とした条件付きで春休みの部活動再開を発表。私学の滝川二もそれに習う形で24日に週4日、1日2時間以内、参加は希望者のみという条件付きでトレーニングを再開した。

 滝川二は過去2年間、兵庫県内で無冠。今年は1月のニューバランスカップ(通称:裏選手権)で履正社高(大阪)や桐光学園高(神奈川)、東海大大阪仰星高(大阪)などを破って優勝したが、直後の県新人戦は3回戦でPK戦の末に敗れている。周囲から結果、内容も求められる中、亀谷新監督はまずGK、CBから相手のプレッシャーを外すような挑戦心のある攻撃と、守備での大きな手法から着手。そして何より、「滝二に脈々と受け継がれてきた『怯まず 驕らず 溌剌と』戦い、主導権を握って行くサッカーをしよう」ということにこだわっていく。

 攻撃も、守備もひたむきに、見る人に溌剌さが伝わるような戦いをして、主導権を握って、勝つ。主将のCB眞古大輔(新3年)は「『怯まず 驕らず 溌剌と』というモットーがあって、それを失いかけていたのがチームとしての現状であって、特に『溌剌と』という部分では最近の滝二ではなかったかなと。今までの滝二は『溌剌と、自分たちでやっているな』と思われていたのが、消極的になっていた」と分析する。

 県内のライバルたちからターゲットにされる中、負けられないという思いが硬さ、消極性に繋がっていたのかもしれない。指導体制が代わったことに関しては驚きもあったというが、選手たちはまず原点を見つめ直して、自分たちから溌剌とプレーする姿を周囲に発信する考えだ。

 チームに大きなポテンシャルがあることは間違いない。亀谷監督が指導したのはまだわずか。それでも、「コーチたちがしっかりとしてくれている。(裏選手権や新人戦の)映像を見てもトレーニングをしているのが分かる。(課題もあるが)ベースはしっかりとあると感じます」と新指揮官は頷く。特に裏選手権を制している今年は、いずれも注目度の高い眞古と司令塔のMF松本祐満(新3年)をはじめ、MF岩澤秀人(新3年)やGK林憲太朗(新3年)といった昨年からの経験者、そして1年時から10番を背負う異質のMF藤田仁朗(新2年)らを擁する期待のチームだ。

 選手たちのモチベーションも高い。活動再開後のトレーニングは亀谷監督の分かりやすいコーチングとムード作り、メリハリのあるメニュー、選手たちの新監督にアピールしようという姿勢が上手くリンク。90分間ほどの練習時間の中で良いプレーがいくつも出るなど、選手たちの吸収・成長が伝わって来る印象だった。

 眞古も「休校明けで、練習無くって僕の中でももう少し練習がグダグダしてしまうところがあるかなと思っていたんですけれども、監督やスタッフのおかげや自分たちの意識もあって、思ったよりも良い練習ができていると感じました」と語り、林は「(亀谷)監督も熱い人で、滝二の現状を変えようとしている熱い気持ちは伝わってくるので、僕らもまず滝二自体を変えないといけない」と強い気持ちでチームを良い方向に変える決意を口にしていた。

 選手たちは裏選手権の優勝で勝つ喜びも知っている。亀谷監督は「それを何回もやろうや!」とメッセージ。そして、OBに向けて「優秀なOBがいるのでグラウンドに来てくれたら嬉しいし、みんなで協力して欲しい」と語り、非常に意欲的な選手、指導陣、OB、関係者を含めた“オール滝二”で、同じ方向を向いて復権を目指していく考えだ。

 今年の目標は日本一。そのための取り組みをする。眞古は、「目標は日本一を立てたので、監督に言われたのは掃除とかしっかりとしろと。サッカーだけじゃなくて、日本一になるにはサッカー以外のところも日本一にと言われているので、そこに関してはしっかりとしていこうと思います」。昨年、人工芝グラウンドが完成し、環境面は飛躍的に向上。新体制で注目される部分もあるが、自分たちを見失うことなく、日々努力を続けるだけだ。そして、OBたちが受け継いできた姿勢をピッチで表現し、今年から“強い滝二”を兵庫、全国で示す。

亀谷誠監督は滝川二の第1期生で3年時にインターハイ、選手権に出場。鹿島育成組織の監督やスカウトの経歴を持つ

選手、指導陣、OB、関係者が“オール滝二”で日本一を目指す


(取材・文 吉田太郎)

TOP