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大津祐樹&酒井宏樹の“アシスト”で東証一部内定!「簡単じゃなかった」2か月スピード成果の舞台裏

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左から友澤貴気、相田遼人、大津祐樹

 MF大津祐樹(横浜F・マリノス)、DF酒井宏樹(マルセイユ)が発起人を務めるプロジェクト『Football Assist(フットボール・アシスト)』で、2020年大学卒業の学生から内定者が出た。すでに2021年卒の就職活動も本格化している中、今年に入って就活をスタートした“駆け込み組”。新型コロナウイルスの感染拡大という逆風も吹いたが、わずか2か月余りで東証一部上場企業の営業職に就くことが決まった。

 駆け込みで内定を掴んだのは帝京大サッカー部のDF相田遼人(4年=東京実高)。「プロサッカー選手になること」を目標にギリギリまで大学サッカーに打ち込み、シーズン中は就職活動をまったくしていなかったという。それでも今年1月、『Football Assist』の活動を知ってすぐさま登録。常駐するキャリアアドバイザーの全面的なサポートを受け、栄えある“社会人第一号”となった。

■「就活は逃げという気持ちもあった」
 帝京大経済学部に在籍する相田は、チームではサイドバックを担当していた。自身のプレースタイルの強みを「上背はないけど走力には自信があるので、攻撃で前に関わっていく時にアシストで試合を決定づけるところ」と分析。しかし、幼少期から夢だったプロサッカー界から声はかからず、練習参加も叶わぬまま大学生活が終わりつつあった。


 相田は「プロを目指してサッカーをやってきたので、サッカーをやらなきゃいけないという決めごとが自分の中であった。周りの環境もあって、就活は『逃げ』というか、サッカー以外にベクトルを向けてしまうと『負けている』という気持ちもあった」と率直に振り返る。

 それでも今年1月、相田は『Football Assist』を知って活路を見出した。「サッカーを人生にする夢はあるけど、それも社会の一部。どっちもやっていこうと思うようになった。サッカーを諦めたわけじゃないけど、人間としての厚みを出していかないといけないと考え方を変えた」。

■大津「サッカーを全力でやってきた学生でも就職できると証明したかった」
 こうした考え方は『Football Assist』の理念にも合致した。大津がプロジェクトを立ち上げた動機は「サッカーを真剣にやってきた人が報われる形であってほしい」という願い。事業は①トレーニング支援②備品支援③キャリア支援の三本柱で進むが、プロサッカー界を目指す選手だけでなく、その後の就職も見据えたサポート体制も整えられているのが特長だ。

 とはいえ「卒業間近の1月に就職活動をスタートし、年度内に内定先を見つける」というミッションは無理難題にも思われた。大津も「彼はサッカーをずっとやり続けたいという思いがあって就活はしていなかったので、会社と話を繋ぐのも簡単なものではなかった」と回顧する。なにせすでに21年卒の就職活動がスタートしており、通常の手続きならば“浪人”も視野に入るタイミングだ。

 しかし、そんな大津には一つの意地もあった。「僕らとしては精一杯サッカーをやってきた子たちに対して、サッカーをやり続けながらでも就職できるんだよというのを証明したかった」。今年1月の発足以来、大津と酒井の人脈を介して繋いだ企業は大小1000社以上。「サッカーをやってきたことを評価してくれる企業とのコネクションが多い」という強みを活かす好機を見出した。
■採用サイトは使わず、『Football Assist』一本
 いよいよ本格的に動きを進める中、大きな役割を担うのが約10人にも及ぶ「キャリアアドバイザー」の存在だった。相田の担当は友澤貴気(27)。武相高から順天堂大を経て、2015〜16年にはJ3のY.S.C.C.横浜にも所属していた元Jリーガーだ。23歳で現役生活を退いた後は企業勤務を経験し、今年1月から『Football Assist』に参画している。

「自分は学生のキャリアアドバイザーという見られ方もしているけど、同じような経歴を歩んできた先輩と後輩という関係でもある。自分が過去を振り返ってタイムスリップしたとして『こうやって考えを持って、こういう風に取り組んでいたら、もっと人間的に成長できたな』と感じる部分があるので、そこを学生にも伝えるようにしています」(友澤)。

 相田は友澤と積極的に連絡を取り、サッカーを続けながら勤務できる企業を探した。「最初は大丈夫かなって半信半疑だったけど、連絡の密度がすごく高いので、安心して話すことができた。部活の先輩・後輩のようにフランクで、自分が伝えたいことをなんでも言える環境だった」(相田)。大手採用サイトは一つも使わず、『Football Assist』一本で就職活動を進めることに決めた。

■問われたのは「両立」の覚悟
 そこで舞い込んだのが、とある東証一部上場企業からのオファーだった。大津によると、この会社は当初から『Football Assist』の理念に共感していたパートナー。すなわち、プロジェクトが求めていた「サッカーをやってきたことを評価してくれる企業」だ。

 相田は2度の面接に挑んだ。1度目は小学生チームの指導経験をアピールし、2度目は「サッカーを続けたいようだが、仕事はちゃんとできるのか」という覚悟を問われた。次第に「時間の使い方が大事になる。今までサッカーで学んだスキルを仕事に活かすことで、生産性の高い仕事をして、休みの日にはサッカーを全力でやる」という決意も芽生え、見事に営業職の内定を掴んだ。

 相田が未来を切り開いた一方で、『Football Assist』にとっては難しいプロジェクトにおける大きな成功体験となった。大津は「学生が企業に入ってから活躍することができるような入り口を作ってあげることが大切。理念に共感してくれた会社に入ってもらえば学生のパフォーマンスも出るし、そういった会社を紹介していくことが僕らはマスト」と手応えを語る。

■「サッカー」と「会社」は似ている?
 わずか2か月間でスピード内定に至った相田は例外的な位置づけだが、すでに21年卒の選手たちにも内定者が出始めている。また、専用ジムの利用も含めた登録者は5000人を突破。さまざまな学生たちと接するにつれて、「サッカー選手が社会で通用する武器」といったノウハウも蓄積されているという。友澤は次のように語る。

「これは自分も経験してきたことですが、サッカーをやってきた子はたとえば営業の仕事をやっている時も、自分が数字を達成した時に達成していない人のサポートなど、チームで取り組む意識が根付いていると気づきました。大前提に数字という結果目標を達成するためのスキルもあるけど、そういった仲間意識も大きいんじゃないかと思います」。

 これには大津も口を揃える。「企業の人と話していると、サッカーをやっていることで『チームのため、会社のために動ける』というところを当たり前に評価してもらえている。そこには自分のためのスキルアップもベースにある。試合のための準備だったり、試合の中での判断だったり、サッカーをやっていて通じるものが会社にもある」。そもそもこのプロジェクト自体も、大津がサッカーを通じて培ってきた能力が活かされていると言える。

 プロジェクトの前提にある「サッカー部の学生が評価してもらえる会社をつなぐ」という枠組みもサッカー的だ。選手の移籍は加入先クラブの知名度や規模だけでなく、「プレースタイルが合うか」「試合で必要とされるか」といった条件でも決まる。大津は「学生が本当に評価してもらえる会社に入れているのか、力を発揮できる会社なのかということを考えているし、そこを僕らのコネクションでしっかり繋いであげたい」と意気込む。

■「会社に入っても同じように『プレーできる』」
 一方、大津や酒井が責任を持って企業と協力を進めているぶん、彼らは『FootballAssist』を活用している学生にも責任感を求めている。「企業は『Football Assistの看板を背負っている選手』として見てくれている。その代わりに僕は学生たちに言っていますけど『自分がその会社で活躍できるようにしっかり頑張ってほしい』と。そうすれば後輩たちも評価してもらえると思うので、『自分が会社に入ってからの行動も責任を持ってほしい』というのは伝えています」(大津)。

 現役Jリーガーからの大きな期待——。ともすれば大きなプレッシャーや重圧につながりそうなものだが、相田はこれを自らのサッカー経験で受け止めているという。

「僕も中学から高校に入る時、自分のプレーを見てもらって入ったので、中学の看板を背負っていると思っていた。プレッシャーがあるというより、勝手に良いニュースを伝えたいなと思っていた。自分が活躍すれば名前と一緒に中学の名前が出たりするし、もといたチームの人たちも喜んでくれる。後輩がもし自分のことを知らなくても、頑張ろうって思ってくれる」。

 こうした発想も大津が考える「サッカーと会社の類似点」の一つだ。「そういう普通の人ならなかなか自然と考えられないようなことが言えるのは、サッカーをやってきたからこそ。会社に入っても同じようにプレーできると思います。まさに会社に入っても『プレーできる』って感じですよね。それがサッカーの良いところだと思います」(大津)。


■挑戦は始まったばかり
 今年1月のプロジェクト発足以降、「運営費はスポンサーの協力もあり、学生は無料なので一つも損をしない」(大津)というシステムが話題を呼び、登録者が日に日に増え続けている『Football Assist』。大津が「もともとヒアリングを重ねて作ってきたけど、回しながら細かい修正を重ねている」と語るように、新型コロナウイルスの感染対策で電話やWebを通じての個人面談をスタートするなど、新たなアップデートも次々に進んでいる。

 今後はすでに出始めているという21年の企業内定者や、初めてのプロサッカー選手の輩出にも期待がかかる。「まだまだ人数が増えても受け入れられる。一人でも多くの学生を救いたいというのが僕たちの目的なので、たくさんの学生に使ってほしい。もっともっとサッカーをやっている人たちの評価を上げていきたい」。現役トッププロ選手たちが大学生をサポートするという異例の挑戦。大津はさらなる未来を見据えている。

 登録は公式サイト(https://assist-sports.com)より。

(取材・文 竹内達也)

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