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練習から異質。滝川二で1年生から10番のMF藤田仁朗は「情けない」から「やっぱちゃうな」と言われる選手へ

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兵庫の名門、滝川二高で1年生から10番を背負うMF藤田仁朗。練習から異質のプレーを見せている

 兵庫の名門で1年生から10番を背負うMFは、トレーニングから目立つ存在だ。MF藤田仁朗(新2年)は、FW岡崎慎司(現ウエスカ)やFW金崎夢生(現名古屋)ら名手を輩出した滝川二高で昨年の選手権予選から10番を背負う注目株。トレーニングでは先輩たち相手に「そこを見ているんだ」「そこへ出すのか」というようなパスを連発したほか、キープ、フィニッシュの部分でも力を発揮するなど、目を引くようなプレーを見せていた。

 自分自身への要求は高い。「トレーニングで100%の力を出せへんと、試合でも100%の力は出せへんと思うし、そんくらい自分では意識高くやろうとは思っています。誰に見られても、『コイツ、やっぱちゃうな』と思われたいし、自分が入ることでリズムとか変えられる選手になりたいので意識しています」。レベルアップを求めるのには理由がある。

 1年生で10番を背負って臨んだ選手権予選は準々決勝敗退。「いくら1年やからと言っても、10番も背負わせてもらったのに、情けないと思うくらい何もできなくて悔しくて、『ここからまた這い上がろう』と思いました」。その悔しさが力となって成長を加速させている。

 怪我で離脱した2か月間にとにかくサッカーを見て、学んだ。昨秋の段階ではボールを受ければ全て自分で何とかしようとしてしまっていたが、プレースタイルも変化。「じっくりとサッカーを見たら、全部『自分が、自分が』ってちゃうなと思って、メッシとか世界の一流選手は自分が持ったら上手いけれど、周りも活かせるから何でもできる。だから、全部『自分が、自分が』じゃないねんなと。だから、周りも活かせる選手になろうと」。その意識変化、シンプルなパスを織り交ぜた動きがチームの良いテンポも生み出し、藤田の決定的なプレーも引き出している。

 前を向いた際のチャンスメークやPA付近のアイディアの豊富さがストロングポイント。だが、まだまだ強さのある選手ではない。トレーニングでもボールを受ける動きを増やし、守備も献身的に取り組んでいるが、チームメートに当たり負けしているシーンも。肉体強化は、これからだ。

 ただし、本職のシャドーの位置でプレーする機会を掴むために、常に首を振って周囲から情報入れようとしてきた成果が出ていることも確か。本人も「ちょっと頭使えるようになってからは、自分に余裕を持てたりしました」と手応えを得ている。よりスピード、強度が上った中でもプレーできるように、目立てるように、今後も意識してレベルアップさせていく。

「自分ではもちろん選手権もインターハイも両方全国出て、一番は点も獲りたいですけれども、『コイツ、なんかちゃうな』というところを見せたい。背もデカくないし、身体もあんまり強くないんで、目にはつきにくいんですけれども、周りと違う異質なプレーやアイディアをたくさん出して、そういうところを今年は全国でも通用できるようにこれからも頑張りたいです」。

 兵庫県選抜でチームメートだった神戸弘陵高MF田中祉同(新2年)が選手権全国大会で決勝点を決めるなど活躍。「凄いと思うんですけれども、凄いじゃなくて『オレもこんくらいやれる』ってところを見せたいと思っています」。今年の滝川二の中盤は大型MF松本祐満(新3年)らも注目だ。中でも、悔しさをバネに自分を成長させてきた異質のMF藤田が「やっぱちゃうな」というプレーを全国でも見せる。

(取材・文 吉田太郎)

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