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「自分は才能がないので、努力しないと」。長崎総科大附の「大器」GK梶原駿哉は妥協せずに成長求める

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長崎総合科学大附高の大型GK梶原駿哉は自分に厳しく、成長を目指す

 地に足をつけて、ひたむきに努力を続け、家族や恩師に恩返しする。長崎総合科学大附高のGK梶原駿哉(新3年)は187cmの大型守護神。昨年、U-16日本代表候補合宿に初選出され、全国高校選手権で強豪のゴールを守った梶原は今年の九州屈指とも言える存在のGKだ。

 大舞台を経験した後に迎えた今年、2月の九州新人戦ではメンタル面での自信が表れているかのような堂々としたプレー。チームは試合終盤の失点によって4位に終わったが、最近の練習試合では1試合に1度、2度ある決定的なシーンでビッグセーブを見せるなど、また成長を感じさせている。

 梶原はこの1、2か月の間に自分を再確認し、全力で努力を続けなければならないことを実感したのだという。新型コロナウィルス感染拡大の影響で地元の大分に戻り、また軽い打撲でトレーニングを休んだ時期があった。「その時(練習復帰後)に全然止められなくなっちゃって。やっぱり自分は才能がないので、努力しないと」。Aチームのゴールを守る回数も、安定感の高いGK石原空(新3年)に譲る回数が多くなっていた。

 九州新人戦で先発出場できていたこともあり、出てしまっていた油断。「自分は出れると思ってしまっていた。甘えたら絶対にダメだと思いました。(休養後に)一気に動けなくなったので、自分は妥協したらダメだと、少しの痛みくらい我慢してやらないといけないと思いました」と語る。

 調子が上がらない期間に家族は優しい言葉をかけてくれたのだという。「『BでもCでも良いから頑張ってくれたら』と言ってくれた時に、絶対にそんな訳なくて『出て欲しい』と思っているだろうし、送り出してくれた親に何で返せるかと言ったらプロで活躍するところを見せるというのが一番だと思う」。注目GKは応援してくれる家族のためにも、誰よりも努力することを決意した。

 九州大会では活躍もしたが、勝負どころで失点してしまっていたことも確か。自分の調子を上げることと同時に、まず取り組んだのが声の部分だ。味方を的確に動かして、より自分が止めやすい状況を作ることを心がけた。強豪との練習試合で失点が減少している理由は、その部分で改善できていることが大きい。味方が声を頼りに動いて最後まで足を伸ばしてくれるからこそ、梶原もギリギリのシュートがより止められるようになっている。

 梶原は「(九州大会は)失点も全部後半の終盤に偏っていました。寄せるというところは最近、小嶺(忠敏)先生からずっと言われていることですし、やっぱり自分だけじゃなくDFも死ぬ気で守ろうとしてくれているので、その分自分が守りやすくなっていると思います」と説明。ただし、満足はしていない。相手にクロスを上げさせないことや、カウンターのリスク管理の部分もより徹底すること。また、自分はまだキックミスが多いため、その数を減らしてよりチームメートから信頼されるGKになる考えだ。

 名将・小嶺忠敏監督の言葉も自分を成長させてくれている。「ディフェンスだったり、ゴール前のところだったり、小嶺先生は一番大事なところを言ってくれます。自分もクロスが一番の強みなんですけれども、最近あんまり出れなくなって『オマエ、そこ出れないと全然使えないぞ』と言ってくれる。甘えちゃいけない。自分の武器はしっかりと出していかないといけない」。アメとムチを使い分ける小嶺監督からは褒められる時もあるが、厳しい言葉をしっかりと受け止めて慢心せずに努力を続けていく。

 昨年、U-16日本代表候補に初招集された後はそれに相応しいプレー、“上手いプレー”をしようとして、逆にミスを増やしてしまっていた。今年も九州を代表するGKという評価はつきまとうだろうが、自分を知り、努力の必要性を認識している梶原の気持ちが揺れることはない。「自分は上手くないからできることを精一杯やって、強く見せるというのが大事」。1年前、半年前から成長していることは間違いない。ただし、“自分はまだまだ”。注目の大器はここからの1年間、自分に厳しく成長することを求め、仲間とともに結果を残し、そして将来プロになって支えてくれた人たちに恩返しする。

(取材・文 吉田太郎)

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