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サッカーe日本代表ナスリ&ファントムにインタビュー!「FIFA」に触れた経緯、共通する急成長の時期

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オンラインインタビューに答えたナスリ(左)とファントム

 新型コロナ禍の日本で、サッカーゲーム「FIFA」シリーズのオンライン大会が3月から続いている。eスポーツはここ数年で熱を上げたコンテンツであり、昨年12月には日本サッカー協会(JFA)が「サッカーe日本代表」の組成を発表。新型コロナウイルスの影響で予選は行われず、2月末の時点での世界ランキングを参考に、4月にWeb Nasri(鹿島アントラーズ/以下、ナスリ)とfantom(SCARZ/以下、ファントム)が選出された。

 今回2選手にオンラインインタビューを実施。最初のサッカーe日本代表となった2選手に、これまでの経緯と代表への意気込みを聞いた(取材日:5月1日)。

 2選手ともに「FIFA」の世界ではトップクラスのプレーヤーだ。20歳のナスリは「FIFA 18」で当時18歳にして世界最高峰の大会であるeワールドカップに出場。「FIFA 19」の世界大会「Licensed Qualifier Event」では準優勝と快挙を成し遂げた。一方、現在24歳のファントムは2015年に日本人初のFIFAプロプレーヤーに。PS4部門での世界大会出場経験を持ちながら、今季からコンソールをXbox oneにチェンジ。今年2月には「FUT Champions Cup Stage Ⅳ Paris」のXbox部門でベスト32となり、自身にとって約2年半ぶりの世界大会進出を果たしている。

 友達と気軽に楽しめて、プレー経験者も多いサッカーゲーム。しかし“ゲーム”に留まらず“eスポーツ”として日本代表まで登り詰めた2選手にはひとつの共通点があった。2選手は大きく成長した要因にオンライン対戦を挙げている。

 最初は携帯機で「FIFA」に触れたナスリだが、そこまでのめり込むことはなかったという。「15歳の中学3年生のとき。暇なときにゲーム売り場で体験版をやる」程度で、始めた当初はオフラインで監督を務めてチームを成長させるキャリアモードにハマった。しかしオンライン対戦が可能になると、競技プレーヤーとして急成長を遂げる。

「プレーを磨くというハマり方をしたのは『FIFA 17』からですね。いま世界大会に採用されているFUTモードでウィークエンドリーグというランクを争うモードができて、それがきっかけです。その前まではあまり腕を競えるところがなかったので、リーグができてから実力が顕著にランクに出てくるので、競争心をかき立てられました」

「今でも覚えているんですけど、めちゃくちゃ成長しましたね。上位100人の次に、エリート1というランクがあるんですけど、その当時は日本人が10人程度しかいないところに急にいけたので、そこで上手くなったなあと思いました。気づいたら先制していて、気づいたら2点目を取っていて。自分の中のレベルが変わりましたね」

「FIFA 18」でeワールドカップに出場したナスリ(最右)

当時18歳で世界最高峰に挑んだ

 高校1年生の頃に「FIFA 12」でプレーを始めたというファントムは「アレッシャンドレ・パトが12のときにめちゃくちゃ強くて、ミランとかブラジル代表とかをよく使っていました」と当時を振り返る。「FIFA 15」の頃にプロeスポーツチーム「SCARZ」に加入。しかし当時はまだeスポーツとしてサッカーゲームがメジャーになっておらず、「日本で世界を目指しているようなプレーヤーもいないし、どういう方向で頑張っていけばいいのかをまだ考えている途中だった」と語る。自身の成長した時期について、ナスリと同様に「FIFA 17」のときだと明かす。

「ナスリくんが言っていたように、『FIFA 17』でFUTモードが活性化して世界大会が多く開かれるようになった。世界大会の出場権を獲得しようっていうくらい熱心にやっていたので、そこが一番自分の成長を感じられたところ。目標ができたのが17だったので、自然と力が入るようになったっていう感じですね」

 新型コロナウイルスの影響で、Jリーグは異例の長期中断に。サッカーファンの“応援欲”を満たすため、Jリーグクラブを使用したeスポーツのオンライン大会が活発に行われている。3月の『eJリーグ スペシャルオンライントーナメント』にはナスリが、4月の『eJリーグ オンラインチャレンジカップ』には2選手ともに参加。さらにナスリは、アジア4か国が出場する国際親善大会「StayAndPlay eFriendlies」に“サッカーe日本代表”として初参戦。日本代表FW岡崎慎司とチームを組み、自身は2勝1分で貫禄を見せつけた。

 岡崎について「(メールでのやりとりでも)文字からわかるくらいすごくいい人でしたね」と印象を語るナスリ。一方で、大会中のインタビューでは岡崎に「守備のアドバイスとかしたので、余裕で勝ってくれると思います」と“チームメート”として臆せずエールを送る様子もあり、サッカーe日本代表としての頼もしさも垣間見せた。

 世界が活動自粛に追い込まれる中、eスポーツも国内外の公式大会は軒並み延期に。サッカーe日本代表はまだ本格始動とはいかないが、2選手には確かな自覚が芽生え始めている。ナスリは国を背負って世界に挑むことに意義を語る。「新しく日本代表っていう名前がついて世界大会に出場するのは、違うプレッシャーというか、責任というのは感じますね」。一方、ファントムも「やはりユニフォームを着ると、自分が日本代表なんだなっていうのは思いますし、これまで以上にしっかりやっていかないと」と胸中を明かした。

 未曾有の事態の中で始まったサッカーe日本代表。最後に、改めて2選手に日本代表としての目標、そしてこの“Stay home”の時期でゲームをするときの注意点を聞いた。日常に戻ったそのとき、彼らの国を背負った戦いはより一層注目を浴びることになるだろう。

――ナスリ
「代表選手にふさわしい結果を常に残していきます。プレーする中で、イライラしたり疲れたときは無理せずに休憩して、最低1時間ぐらいFIFAを忘れられるような別のことをして気分転換を」

サッカーe日本代表:PS4部門
■プレーヤー名
Web Nasri(ウェブ・ナスリ)
■選手名
青木太一(あおき・たいち)
■生年月日
1999年12月10日
■出身地
神奈川県
■所属
鹿島アントラーズ
■戦績
FIFA 18シーズン:Global Series Playoffs(世界大会)ベスト4、FIFA eWorld Cup 2018本戦出場
FIFA 19シーズン:SONYコンチネンタル杯日本予選優勝、本戦ベスト8、Licensed Qualifier Event(世界大会)準優勝
FIFA 20シーズン:FUT Champions Cup #3(世界大会)ベスト16


――ファントム
「フェアプレー精神と対戦相手や関わりある全ての人々へのリスペクトを常に持ち、eスポーツ・サッカーが日本で広く知れ渡るように精一杯活動をさせて頂きます。画面に近づきすぎず、明るいところでゲームしましょう。そして休憩をこまめに取ってください。これが1番大事です」

サッカーe日本代表:Xbox One部門
■プレーヤー名
fantom(ファントム)
■選手名
岡部駿(おかべ・しゅん)
■生年月日
1995年8月24日
■出身地
茨城県
■所属
SCARZ
■戦績
FIFA 17シーズン:FUT17 Rest of World Regional Final PS4部門優勝、日本選手権優勝
FIFA 18シーズン:ESWC Paris Game Week PS4部門ベスト4
FIFA 19シーズン:eJリーグベスト16
FIFA 20シーズン:FUT Champions Cup Stage Ⅳ Paris Xbox部門ベスト32

(取材・文 石川祐介)

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