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限られた環境の中で工夫できるか。富山一はオンラインを活用して頭と身体を強化し、栄養講習や地域貢献も

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富山一高は「zoom」を活用したオンライントレーニングを実施中

 新型コロナウイルス感染症の影響でインターハイが中止となり、39県の緊急事態宣言解除後も依然多くの高校で休校が続いている。指導者・選手にとっても初めて直面するような非常事態。その中で各チームは、アイディアを出しながらコンディション調整や強化を行っている。

 昨年のインターハイ準優勝校・富山一高(富山)ではウェブ会議システム「zoom」を活用し、約150名の部員全選手が参加する形で約40分間、スクワットや体幹などのトレーニングをスタート。フィールドトレーニングの再開できない状況が続いているが、それでも大塚一朗監督は「(オンラインのトレーニングは)みんなが一緒に顔を見てやれるのがいいと思います。みんなにこやかで、嬉しそうでした」と感想を語る。

 このオンライントレーニングでは自分の動きに加え、チームメートたちの動きも確認することができる。それだけに、各個人による自主トレーニングとは異なり、競争心を持って汗を流せる効果があるようだ。

 また、新1年生やその保護者はこの休校期間中、富山一サッカー部の栄養指導を行っている神戸女子大健康スポーツ栄養学科の坂元美子准教授から、「成長期選手の食事のとり方」についてオンライン栄養講習会を受けた。加えて、この期間に生活リズムを崩さないように、選手は毎朝7時30分に健康状態や自主トレーニングの内容について提出しているという。

 休校期間のオンラインでの取り組みはフィジカルトレーニングや栄養講習会だけではない。大塚監督が「頭の中も、と若いコーチが動画を配信しています」と説明するように、コーチ陣がサッカー動画を作成して選手と共有し、そのインテリジェンスの部分に刺激を与えている。

 特に、富山一の大塚監督は日本サッカー協会指導者ライセンス公認S級に相当するUEFA公認A級ライセンスの持ち主(日本の指導者として2人目の取得)。普段から参考にすることが多いというイングランドのサッカー番組、「Monday night football」(Sky Sports)や海外の書籍、動画から情報を抽出し、的確な形・言葉で欧州の考え方、動きを選手たちに伝えている。日常を取り戻すまでまだまだ難しい状況が続きそうだが、富山一ではこの時期だからこそ工夫しながらできることに取り組み、周囲とも情報を共有しながらレベルアップして行く考えだ。

 一方で富山一は新型コロナウイルス感染症の対応に当たる医療従事者を応援するため、いち早く行動。サッカー部の後援会やOBに古いユニホームの購入や募金を呼びかけ、58万円を集めて富山市に寄付している。限られているとは言え、自分たちが活動できていることに感謝し、支えてくれている地域の人々をサッカーで勇気づけられるように全力で選手権日本一を目指す。

(取材・文 吉田太郎)

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