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積み上げることで得てきたチャンス。静岡学園の新10番候補、MF渡辺怜歩「納得の行く努力を」

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新人戦で静岡学園高の10番を背負ったMF渡辺怜歩

[2020シーズンへ向けて](※静岡学園高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

「『他の人よりもやっている』と自信を持って言えるくらいにやらないと結果は変わって来ないと思います。自分がどれだけやったかは自分でしか分からないところだと思うので、『納得の行く努力』をしていきたい」

 選手権王者・静岡学園高の新10番候補は失敗、挫折にもブレることなく、自分の力を積み上げながらチャンスを得てきたMFだ。そのMF渡辺怜歩(3年)は静岡学園中出身で、入学当初から1年生チームで存在感を放ってきた技巧派。身長163cmと小柄でスピードもある訳ではない。だが、人一倍こだわって磨いてきたボールコントロールはRookie Leagueの強敵相手でも際立ち、DFのマークを難なく外してスルーパスでゴールを演出していた。

 だが、2年時のプリンスリーグ東海では開幕時の登録メンバーから落選。この経験が渡辺を変えた。「入れなかったのが本当に悔しかったので、そこからサッカー面だけじゃなくて、私生活から自分を見つめ直す必要性を感じて、そこで変われたから夏からチャンスをもらえて上がることができた」。チーム練習、自主練に対する姿勢だけでなく、落ちているゴミを拾うところから良い方向へ変えるために取り組んできたことが一つ実を結んだ。

 そして、プリンスリーグ後期に登録メンバー入りした渡辺は少しずつ出場機会を増加。AチームのMF浅倉廉(現拓殖大)やMF井堀二昭(現東海学園大)、MF藤井皓也(現中京大)といった名手のプレーから吸収し、日本一となった選手権も交代出場ながら3試合でピッチに立つチャンスを得た。だが、大舞台は「自分が思うようなプレーが全然できなかった」「平常心でプレーできなかった」という悔しいものに。今治東中等教育学校戦での“幻のゴール”など運も無かったが、結果を残すことができなかった。

 ただし、選手権を経験することができたのは、「半年しっかりと積み上げられたから」だと考えている。先を見すぎることなく、焦らずに足元を見つめながらやれば良い。10番を背負い、準決勝で敗れた県新人戦(2月)は、ポジショニングや味方との意思疎通が課題に。また自分に足りないものを知った渡辺は、新型コロナウイルスによる休校期間中も自身と向き合いながらコツコツと努力を続けている。

「次の日の自分の行動のタイムスケジュールを何も考えないでというのはあまり好きじゃないので、(休校期間開始当時から)寝る前に自分でスケジュールを立てた中でしっかりと行動できるようにしています」と渡辺。現在、平日の日中はオンライン授業があるが、その後、自宅近辺でボールタッチやリフティング、ドリブル……と毎日2時間程度ボールトレーニングを続けている。加えて、筋トレも欠かさない。さらに夕食後に体幹トレを行い、休憩時間は「自分のサッカー人生において、良い方向に向かわせてくれるものだと思うので続けています」と風間八宏氏の著書などサッカー関連の本を読んで考え方を蓄積している。

 新人戦後は、これまでのトップ下からボランチでテストされる回数が増加。川口修監督もボランチでのゲームメークなど、渡辺のプレーが段々良くなってきていることを認める。そして「駄目ならレギュラーを取れない可能性もあります」と前置きした上で、彼が努力と成長を続ければ“静学の10番を任せる”ことを示唆。大きな期待を寄せた。

 新生・静岡学園の10番候補筆頭。数々の“巧いヤツ”が背負ってきた伝統の番号だが、背番号が10であろうが、10でなかろうが、渡辺が「(納得が行くまで)最大限の努力をして、プレーで魅せていきたい」という姿勢は変わらないだろう。そして、今年は大舞台で持ち味のボールを正確に扱い、簡単に失わない技術、FWの動きを見逃さずに繰り出すスルーパスを公式戦で発揮すること。そして、選手権で同じ景色を見るという目標がある。ただし、先のことに目を向けるのではなく、直近の練習、試合に集中。今は積み重ねる作業を根気強く続けて冬を迎える。

(取材・文 吉田太郎)

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