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選手権3発も、FWとして「悔しかった」準決勝。矢板中央FW多田圭佑は今季、絶対に来る1回を逃さない

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矢板中央高のエースFW多田圭佑は今年、どんな試合でも決める選手に

[2020シーズンへ向けて](※矢板中央高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

「悔しかったですね。守備陣が凄く頑張ってくれたのに、前が行けなかったので。1人でも、あれくらいの相手でも抜いて時間作ったりしなければ、ああいうチームには勝てないと思います」。昨年度全国高校選手権3位・矢板中央高のエースFW多田圭佑(3年)は、ストライカーとして悔しい思いをした試合を今季のエネルギーにしている。

 選手権準決勝の静岡学園高戦は後半アディショナルタイムの失点によって0-1で敗れた。シュート数は2-24。味方DF陣はまさに魂の守りで相手のシュートを防ぎ続けていたが、PKによる1点に泣いた。

 2トップの一角として先発した多田は後半、DFとの1対1で抜き切れば決定機というシーンがあった。結果はDFに奪われてシュートを打てず。選手権では準々決勝の2発を含めて計3ゴールと結果を残したが、今年はどんな試合でも1点を奪う選手に、あの準決勝のような試合でDFをかわして決め切る選手にならなければならないと考えている。

 大舞台で1チャンスをモノにしてチームを勝たせるストライカー。昨年度で言えば西川潤(桐光学園高→C大阪)や染野唯月(尚志高→鹿島)のようなFWだ。「(そのレベルまで)行かなきゃと思いますね。まだまだです。1対1でも絶対にかわせる自信もないし、大事な場面で絶対に決め切れるという自信をつけるまで練習できていない」。コロナ禍で練習は自主練、グラウンドを開放された時間での限られたものになっている。PAでのシュート練習を重ね、精力的な筋トレで3kg体重を増やしたが、まだ目指す姿になることはできていない。歯がゆさを抱いたまま春を終えている。

 それでも、彼がここから成長を遂げて選手権やプリンスリーグでゴールを連発しても全く不思議ではない。金子文三コーチは「背後に抜け出すスピードとタイミング、そしてシュート精度の高さが売り。でも、何より一番の強みはチャンスを見極める力です」と評価する。味方が相手ボールに襲いかかった瞬間、嗅覚を感じ取って良いポジションを取り、アクションを起こす。予測力に秀でたストライカー。そして、一瞬の切れ味でゴールを奪い取る。

 多田は茨城県の日立市立坂本中出身。中学進学時に地元のクラブチームのセレクションに落ち、中体連へ進んだ。それでも、中学2年時から茨城県トレセンに名を連ね、前線でコンビを組んだFW平岡龍之介(現佐野日大高3年、新人戦決勝で先制ゴール)とともにチームを引っ張ったが、戦績は「県大会の1、2回戦くらい」だったという。親元を離れて自立することを目指し、隣県・栃木の矢板中央へ進学したものの、入学直後に手を骨折。大きく出遅れてしまった。

 それでも、復帰後に1年生チームで得点を重ねた多田は3年生引退後、抜け出す動きや得点力でコーチ陣の信頼を勝ち取る。そして、昨年は2年生ながらインターハイ予選決勝で2ゴールを挙げるなど活躍。昨年はまだ1学年上の先輩たちに頼ってしまっていたというFWは今年、自分が頼られる存在にならなければいけないと考えている。

 選手権で得点王を獲得したいという欲はもちろんある。だが、先輩たちの悔しさを晴らし、日本一を勝ち取ることが何よりも大事。「得点王にこだわらずに自分が決めなければいけない場面で淡々と決めて行って優勝できれば、そこに得点王がついてくれば良いかなというのがあります。全試合決めれるようにしたいですね。チャンスは絶対に1回は来るので、確実に決めなければいけないなと思います」。目標とするFW小林悠(川崎F)のように公式戦で巧さと勝負強さを発揮し続け、矢板中央に初の全国タイトルをもたらす。

(取材・文 吉田太郎)

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