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いつかあの人と肩を並べられるように。FC東京U-18DF大森理生は“ワールドポテンシャル”を解き放つ

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FC東京U-18のディフェンスリーダー、大森理生

[2020シーズンへ向けて](※FC東京の協力により、オンライン取材をさせて頂いています)

 もともと秘めていたポテンシャルは、より高いレベルで磨かれたことによって、一層輝きを増しているように見える。目指すべきであり、超えるべきターゲットも明確だ。「トップレベルでやっている東京の選手の中でも、さらにトップレベルで、かつ、チームの中心的な存在という所で、メンタル面でも技術面でも、森重(真人)選手みたいなプレーヤーになりたいと思っています」。FC東京U-18のディフェンスリーダー。2020年の大森理生(3年)はいよいよ“ワールドポテンシャル”を解き放つ。

 出番は唐突にやってきた。2019年5月5日。味の素フィールド西が丘。初めてU-23のゲームでメンバー入りを果たした大森は、いきなりスタメンに抜擢される。相手は開幕から好調をキープし、2位に付けていたセレッソ大阪U-23。破壊力抜群の若き攻撃陣がリーグを席巻していた。「ガチガチに緊張していたのですが、相手があれだけ強いと、もう自分の力を最大限出さないと通用しないと思って、あれで逆に吹っ切れましたね」。覚悟を決めてピッチに立つ。

 すると、1つ上の先輩に当たる木村誠二とセンターバックを組んだディフェンスラインが決定的に崩されるシーンはなく、終わってみれば見事な完封勝利。「あの試合でJ3に慣れることができましたし、自分の中で試合を重ねるうちにだんだん通用する部分が出てきて、それが凄く楽しくて、あっという間にシーズンが終わってしまった感じでした」。

 トータルではU-18所属選手で最多の21試合に出場。大きな自信と手応えを掴むことに成功する。加えて、U-18でもプリンスリーグ関東優勝に加え、プレミアリーグプレーオフも2試合連続完封に、自らゴールを奪う活躍でプレミア復帰に貢献。「昨年はうまく行くことが多くて、中学校の頃からあまりそういう経験がなかったので、サッカーをしているのが楽しいシーズンでした」と言い切るほど、充実の1年を過ごすことになった。

 年が明けると、すぐにU-18日本代表の招集を受け、スペイン遠征に参加。メキシコ戦とスロバキア戦に起用され、ともに国際試合での勝利を味わったが、海外でのプレーで改めて多くの気付きを得た。「向こうはグラウンドが天然芝だったのですが、ボコボコな所が多くて。でも、スペインを見ると、その中でもパススピードやパスの質が全然劣っていなかったですし、基本的にプレーのスピードとアベレージが高くて、それを感じて帰ってきた時に、自分が良い意味でチームに馴染まないで、自分が持ってきたものをチームに移せるように、練習でも質の高さを意識してやっていきたいなと思うようになりました」。

 帰国した彼を待っていたのは、意外な勲章だった。東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会の3位決定戦を無失点勝利で終え、決勝戦を見届けた後で行われた閉会式。大森は“ワールドポテンシャル賞”を受賞する。「予選グループにはU-18日本代表で1試合しか出れなくて、3決の舞台では自分が最大限できることはできたかなと思っていたので、もらえて嬉しかったですが、自分はほぼ試合に出てないので、『自分に賞はないだろうな』と思っていました」と本人も振り返るが、そのキャッチーな賞のネーミングもあって、西が丘のスタンドは大いに沸いた。

「あの賞はU-18日本代表に行ったことのオマケみたいな感じで(笑)、新人戦の出来は良くなかったですよ」と笑いながら振り返った中村忠監督も、大森のメンタル面を高く評価している。「彼は表に出る野心というか、『上にのし上がっていきたい』という気持ちを出す選手なので、代表に呼ばれたことでさらにそれが増したのかなと。今の選手は、それが一番欠けている所で、正直そういう部分がなかなか表に出てこない中で、大森は代表に呼ばれたこともプラスでしたね」。一見スマートな風貌だが、それはあくまでも仮の姿。ガツガツと戦える所も、彼の大きな魅力である。

 取材を受ける機会も増えてきた中で、必ず目標に挙げているのはトップチームの3番だ。「この前、Zoomのミーティングで矢島(輝一)選手に『一番やりづらい選手は誰ですか?』と聞いた時に、『森重選手』と答えてくれて、トップレベルでやっている東京の選手の中でも、さらにトップレベルで、かつ、チームの中心的な存在という所で、メンタル面でも技術面でも、森重選手みたいなプレーヤーになりたいと思っています」。

「現状ではまったく足元にも及ばない状況で、すべてのプレーにおいて、技術だけじゃなく判断力とかも含めて、そこはプロの長いキャリアを積む中で経験している部分もあると思いますが、自分には“若さ”という武器があるので、いつか一緒にセンターバックとして並べるようになりたいです」。森重と肩を並べ、その大きな壁を超えた先に、もっと刺激的なステージが待っていることは言うまでもない。

 小学生時代から付けてきたエンブレムに対する想いは強い。「小学校4年生の頃からアドバンスクラス、U-15むさし、U-18とプレーしてきて、“FC東京愛”が強いと思っていますし、東京は常に生活の隣にいた存在なので、今まで散々お世話になってきた分、トップチームに上がって、チームに恩返ししていきたいです。今は自分にやれることをやるしか方法はないので、どんな状況であっても、置かれている立場で最大限自分の力を出すことが、この先に繋がっていくのかなと思っています」。

 客観性を持つ野心家。もともと秘めていたポテンシャルは、より高いレベルで磨かれたことによって、一層輝きを増しているように見える。FC東京U-18のディフェンスリーダー。2020年の大森理生はいよいよ“ワールドポテンシャル”を解き放つ。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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