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受け継がれてきた市立船橋の伝統。DF石田侑資主将は選手権タイトル奪還し、プロへ

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市立船橋高の新リーダー、DF石田侑資主将は選手権制覇とプロ入りを目標に掲げる

[2020シーズンへ向けて](※市立船橋高の協力により、アンケート形式で取材をさせて頂いています)

「市船全員の力で選手権を制覇したいです。そして、市船の名前をもう一度全国に広められるようにプレーしていきたい」。市立船橋高の新たなリーダー、DF石田侑資主将(3年)は今年度の全国高校選手権での勝利によって、名実ともに市船を復権させる。

 市立船橋は全国制覇15回。高校サッカー界屈指の名門校だ。1987年のインターハイ初出場初優勝を皮切りに、インターハイ優勝9回(87、88、98、01、07、08、10、13、16年)、選手権優勝5回(94、96、99、02、11年度)、そして全日本ユース選手権優勝でも1回(03年)の優勝を成し遂げている。

 勝ち続けることは簡単なことではない。これまで数々の全国王者が誕生しているが、80年代、90年代、00年代、そして10年代の全てでの全国制覇は、市立船橋だけだ。勝利の伝統を繋ぐということは、彼らに課せられた使命でもある。中でも世間からの注目が集まるのはやはり、選手権。11年度の優勝後、選手権に4度出場しているが、成績は8強が1度あるだけだ。それだけに、今年度は全員の力を結集して9年間遠ざかっている選手権タイトルを奪還し、市船の名を全国に広める。

 徳島ジュニアユース出身の石田だが、入学前から「伝統、実績があり、『高校サッカーと言えば市船』というところがありました」という。その市立船橋で2年以上を過ごして成長した部分、誇りに感じている部分について「(成長した部分は)サッカーだけでなく、人として大きく成長ができたというところです! やっぱり市船ほどの伝統や実績の重みを背負ってプレーできる高校はない」と説明する。そして、高校最終年となる今年はその重圧を楽しみながらプレーし、結果を残すことを誓った。

 昨年度はシーズンを通してレギュラー。だが、チームはインターハイ出場を逃し、8月のプレミアリーグEAST再開後もなかなか結果を残すことができなかった。その中で下級生の石田は誰よりも声を出し、先輩たちにも意見。昨年の3年生たちも認めていたように、彼の声がチームの雰囲気、意識を変えるきっかけとなり、プレミアリーグEAST5位、選手権千葉県予選制覇に結びついた。

 苦しい時期を経験、乗り越えたことで石田自身も人間性の部分の成長を実感。「周りを見えるようになってきて、オンとオフの切り替えが上手くできるようになったと思います」と語る。今年は主将。過去のリーダーたちが実行してきたように、自分が背中で同期や後輩に見せながら、貪欲に白星を追い求めていく。

 その年の高校サッカー界を代表するようなCBを輩出し続けていることも、市立船橋の特長だ。昨年、風格を増して堅守・市船の中心的存在となった石田は、プレーヤーとしても注目される中での一年となる。市立船橋のCBはゴールを守る、対人で競り勝つことはもちろん、攻撃面での役割も求められるが、石田は攻守両面で力を発揮することのできる選手だ。

 CBだけでなく、SBとしての実力も兼備。その石田はライバルたちに負けない自身の武器について、「対人は負ける気がしない! ゴール前の対応もそうですが、ボール奪取にはこだわってやってます! もう一つはキックです。左右両方蹴れてロングもショートも蹴れるのが僕の特徴です」と言い切る。ただし、堅守を誇った昨年も攻略されたシーンがゼロではなかっただけに、プロ入りを掲げるDFは「プロになるに相応しい日々の取り組み」を続けて、よりレベルアップして新シーズンに臨む。

 新型コロナウイルスによる休校期間も「1人でも出来ること、人として変われることがたくさん見つけられると思う」と自分に目を向け、自主練習で左右両足のさらなるキック精度向上に取り組んできた。加えて、昨年課題に感じた相手の変化を見つけ、自分たちの戦い方を変化させる目と力を養うことも今後の目標だ。憧れの存在はMF長谷部誠。この1年はプレーヤー、人間としても成長を遂げて次のステージへ進む。

 チームが勝つことが何よりも重要。市立船橋が選手権タイトルを奪還するためには、宿敵・流通経済大柏高や昨年のプレミアリーグで連敗した青森山田高などを倒さなければならない。ライバルたちを破ることに目を向けて日々を過ごし、必ず目標を達成すること。そして、初期の中咽頭がん(ステージ1)が見つかり、その治療に臨むことを公表した先輩・ワッキー(ペナルティ)や新型コロナウイルスと戦う地域の人たちを市船がサッカーで勇気づける。

(取材・文 吉田太郎)
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