beacon

“公立の雄”大津が共有する百折不撓の心と大目標。FW半代将都主将「平岡先生を選手でも、指導者でも日本一に」

このエントリーをはてなブックマークに追加

“公立の雄”大津高を背中で牽引するFW半代将都主将

[2020シーズンへ向けて](※大津高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

「百折不撓」の心を持って難局を乗り越え、大目標を達成するまで戦い抜く。今年の九州高校新人大会(U-17大会)王者で、プレミアリーグWESTに所属する“公立の雄”大津高(熊本)は、新型コロナウイルスの影響による休校・オンライン授業から6月1日に学校が再開し、同時に全体練習も再開させている。

 今年のメンバーは、プレミアリーグWESTで歴代最高の4位に入った昨年から主軸の半数を残す。九州新人大会は堂々の内容で2年ぶりV。地方の一公立校ながら、50名以上のJリーガーを輩出し、高校年代最高峰のリーグ戦に所属している大津だが、全国大会は準優勝(14年インターハイ)が最高成績だ。今年の3年生たちは初の日本一を本気で狙っているだけに、インターハイの中止は彼らを落胆させた。

 主将のFW半代将都(3年)はチームメートたちのモチベーションの低下を感じていたという。それでも、グループLINEでの声がけや自主練習動画の共有……。「みんなで選手権へ向けて、もう一回頑張るぞ」と伝えてきた。元々、大津の選手たちは非常に意識の高い集団。切り替えまで時間はかからなかったようだ。自宅練習が続く中でも、普段と同じように1日の24時間をデザインしながら勉強、サッカーに取り組んだ彼らは、各選手が目に見えるような進化を遂げてグラウンドに戻ってきた。

 上半身やもも周りを明らかに太くして戻ってきた選手、パワーショットで周囲を驚かせた選手……。自身も地元・宮崎で“三密”を避けながらジムに通い、長所である一瞬のスピードを磨いてきたという半代は、「みんなも“日本一の自主練”ができたのかなと感じています」と仲間たちの頑張りを認める。

 再スタート時に名将・平岡和徳総監督から掛けられた言葉は「百折不撓」(何度挫けても、志を曲げずに貫こうとするという意)。この言葉を受け、半代は「何度折れても立ち上がってやるんだという言葉を頂いています。(その言葉もあって、この難局でも)チームが一つの方向に向かって、頑張っていけているのかなと思っています」と語る。

「日本一の集団になって、全国制覇」が大津の合言葉。そして選手、山城朋大新監督をはじめとしたコーチ陣は「(帝京高主将として日本一を経験している)平岡先生を選手でも、指導者でも日本一にできるように」(半代)と確認してトレーニングに臨んでいる。

 まだまだ大変な状況であることは間違いない。だが、自分たちはブレずに日本一の日常を過ごすことに集中。半代は「自分たちが3年生の代になって『やるぞ』となっている時に悔しいなという気持ちがあるんですけれども、これはどうしようもないこと。自分たちだけではなくて、全国の皆さんもキツイと思いますし、まとまってやっていけたらなと思っています。全国大会になると大津は勝てないということを言われることがたくさんありますし、それでも大津に期待してくれている方々がたくさんいるので、その期待に応えたいという気持ちが強いです」と力を込めた。

 昨年からレギュラーの半代は、強豪校を背中で牽引するリーダ―だ。「背中で見せるのが一番大事なので。誰でも口では言えると思うんですけれども、行動で示すことによって、チームもどんどんまとまって前を向いて行けるのかなと思うので、自分が一番に行動するということは意識してやっています」。今年は周囲からの期待感が大きく、ライバルからのマークも厳しい一年だが、プレッシャーに屈するつもりはない。

 半代は「もしも負けたら」ということを考えること自体が「自分に負けてしまっている」という考え方の持ち主。常に前向きな気持ちで臨めるように、試合前は笑顔でいるように意識している。そして、ピッチではシャドーの位置で動き出しを何度も繰り返し、攻守に渡ってガッツ溢れるプレー。九州新人大会は仲間たちを背中で引っ張るだけでなく、決勝で2ゴールを決め、大津を九州王者へ導いた。

 昨年の選手権予選決勝で計22本ものシュートを放ちながら敗れた経験から、人一倍技術面、精神面で成長することを求めてきた。満足することはない。常にDFよりも速く動いてゴールを破り続け、FW大久保嘉人やFW佐藤寿人のようなストライカーになることが目標。また、幼い頃から日本代表の戦いに憧れ、いつか自分も日本代表としてワールドカップに出て優勝させることを夢見て来た。大学進学を志望しているが、今年活躍し、日本一を勝ち取って羽ばたくきっかけを作る。

「去年の先輩の方にも全国制覇することが唯一の恩返しだと思っているので、使命としてやっていかないといけない。今年は本当に日本一を目指してやっていきたいと思っています」。日本一の集団になること、そして全国制覇することを目指す大津のリーダー。今後、練習で上手く行かないこと、公式戦で苦戦する試合もあるだろうが、半代は「百折不撓」の心を持って背中でチームを引っ張り、埼玉スタジアムで大目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
●【特設】高校選手権2020

TOP