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進化した左足でインパクト大の活躍。大津の左WB大島清は「今、頑張ること」を続ける

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大津高の左WB大島清は高精度の左足を駆使して九州新人大会優勝に貢献

[2020シーズンへ向けて](※大津高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

 九州高校新人大会(U-17大会)では、決勝トーナメント3試合で4アシスト。この3試合で優勝校・大津高(熊本)の1点目を演出したのは、いずれも左WB大島清(3年)の左足だった。加えて、九州国際大付高(福岡)との決勝戦ではCKのこぼれ球を左足の弾丸ショットでゴールへ叩き込んで決勝点。インパクト十分の活躍でチームを九州王者へ導いた。

 左足の進化とともに台頭した。大島は昨年、主に右サイドハーフとしてプレー。スピードを活かした縦突破と、カットインから左足で巻くようなシュートなどを武器に出番を獲得していたが、夏明け頃からその機会を減らしてしまう。

 山城朋大監督(当時コーチ)からパンチ力向上を求められた大島はその後、毎日の自主練習で左足キックを強化。「縦蹴りと言って、つま先くらいにボールを当てるように練習しだして、パンチ力がつくようになりました。ボールに対して真っ直ぐ入るので、最初はつま先とか大分痛みがあったんですけれども、段々慣れてきて強くなりました」。約3か月かけて新たな蹴り方を習得し、力強いキックを身に着けた。

 今年は左ウイングバックの新ポジションで先発を獲得。スピードのある鋭いクロスと大きな放物線を描くクロスとを使い分けながらアシストを量産している。大島の攻撃参加は、20年度版・大津のストロングポイントに。そして、「たまたまです」という九州決勝の“エグい”左足シュートも含めて、昨年からのレギュラーたちに負けない存在感を放っている。

 効果はプレー面の変化だけではなかった。「(自主練習を続けた期間で)精神面でもポジティブに捉えられるようになって、良くなった。今は自信を持ってやっています」。自主練習によって得た力は、大島自身を逞しいプレーヤーに変化させている。鳥栖U-15からU-18チーム昇格を逃し、悔しさも持って“育成チーム”大津へ進学。1日24時間をデザインしながら着実に成長したMFは現在、自信を持って仕掛け、左足を振り抜いて結果を残す回数を増やしている。

 新型コロナウイルスによる活動休止期間中は、筋力強化を意識。立命館大に通う兄からフィジカルトレーニングのセットメニューの行い方や食事の摂り方を教わりながら、妥協せずに取り組んできた。また、大津のチームメート同様、ナイキ社のNTCアプリを活用。加えて1日に腕立て伏せを500回する日もあるという大島は、連日2時間かけて行ってきた筋力トレーニングによって、胸筋や腕周り、腹筋などの増強に成功した。山城監督からも全体練習再開時に「ゴツくなったな」と認められたという。

 現在、九州トップクラスのレフティーと言える存在となった大島だが、課題もある。鳥栖U-15時代を含めてこれまでほぼ左足一本でプレーしてきたという大島の課題は右足。上のステージでより活躍するためには、切り返してからの右足の精度などをレベルアップしなければならない。参考にしているというリバプールの左SBアンドリュー・ロバートソンのように、よりアグレッシブにプレーをして、チームの勝利に貢献していくことも目標だ。

 活動休止期間に夢を大きく持つことの大切さを学んだという大島の夢は、「バロンドール」だ。「全然、今は行けるような選手じゃないと分かっているんですけれども、目標は大きく持ってやっていかないと全国制覇とかもできない」とあえて大きな夢を掲げ、それへ向けて今やるべきことを一つひとつ実行している。

 6月からチーム練習が再開したとは言え、インターハイは中止。リーグ戦が始まるのもまだ先だ。高校生たちにとって難しい時期はまだまだ続くが、大島は自分を支えてくれてきた父と母、家族のため、自身の将来のため、「今、頑張ること」を誓う。チャンスを掴むために取り組んだ努力を今後も続けるだけ。積み重ねた先に栄光があることを信じ、大きな夢へ向かって一歩一歩着実に歩み続ける。
 
(取材・文 吉田太郎)

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