[2020シーズンへ向けて](※大津高の協力により、電話取材をさせて頂いています)

　1年時に鮮烈な全国デビューを飾ったストライカーは、2年目大いに苦しんだ。だが、プロ入りを目標に掲げる大津高(熊本)FW宮原愛輝(3年)は今年、より強みを発揮するためのレベルアップや身体のケアを継続。爆発の時へ向けて牙を研ぎ続けている。

　宮原はロアッソ熊本ジュニアユースから大津へ進学。1年時の全国高校選手権1回戦(対桐光学園高)に途中出場し、鋭い切り返しからの左足シュートで全国初ゴールを決めた。テクニックを発揮しての一撃を平岡和徳総監督は絶賛し、周囲からの期待も高まる中で迎えた高校2年目。だが、「やってやろう」という思いと裏腹に、宮原は右足の内側側副靱帯負傷、腰椎分離症によって2度の長期離脱を強いられてしまう。

　昨年のプレミアリーグWESTは、東福岡高戦など納得のパフォーマンスをした試合もあったものの無得点。復帰からわずかな期間で迎えた選手権予選決勝も右足FKやヘディングシュートなどで熊本国府高ゴールを脅かしたが、大津は宮原含めて20本以上のシュートをゴールに結びつけることができず、0-1で予選敗退に終わった。昨年は宮原にとって「めちゃくちゃ悔しい」という一年に。状態が良くなってきたところで負傷離脱するなどコンディション面で苦しみ、プレーにも波があった。

　元々能力を活かした動きでゴールを奪うプレースタイルだったという宮原は、高校1年時に左SHを経験したことで足元でも勝負できることを実感。ボールを受けた際の仕掛けに加え、左右両足から放つパンチのあるシュートも注目だ。調子が良い時は簡単には止まらない。「(今年は)九州では全然負ける気がしないです。自信があります」というように手応えも掴んでいる。

　今年2月の九州高校新人大会では計7ゴールの活躍。特に日章学園高との準決勝では、後半のPK失敗後に凄みのある動きでゴールへ向かい続け、この試合2点目をもぎ取って見せた。だが、準決勝に負った怪我の影響によって決勝は欠場。「結果は出たんですけれども、大事な決勝で怪我をして出れていない。大事な試合前とかに怪我する選手は信用がなくなってくると思うので、自分の身体のケアをしっかりとやるしかない」。怪我でチャンスを失う訳にはいかない。これまでの反省から、宮原は人一倍身体のケアに気を遣っているという。時間を見つけては通院し、細かなメンテナンスをしてもらうことでコンディションを維持。悔しい経験を無駄にしないように、ピッチ外の時間をサッカーのために費やしている。

　プレー面でも進化を目指す毎日だ。新型コロナウイルスによるチーム活動休止期間は熊本県人吉市にある自宅へ戻り、同じ熊本県南部に地元のあるチームメートと合同自主トレーニングを行ったりしてきた。その間こだわっていたのはシュート。「振りの速いシュートとシュートまで持っていくためのコントロールなどをずっと練習していました」。スピード、精度は着実に向上。加えて学校・チーム練習再開後は、動くタイミングや身体の使い方など、日本代表FW大迫勇也を参考にしながらオフ・ザ・ボールのレベルアップに取り組んでいる。ボールを持ってからの動きは定評があるだけに、その機会をより増やすこと。そして、自主練習の成果も発揮して得点数を向上させる。

　昨年は怪我に苦しみ、Jクラブへのアピールチャンスだった今年のインターハイも中止。それでも、「まだ可能性はあると信じて自主練に励んでいた」宮原はプロ入りを勝ち取るために、この夏から秋冬のプレーに懸けている。プレミアリーグWESTに代わる九州の合同リーグでは、自分以外のFWに巧さでも得点数でも負けないこと。そして、怪我なくシーズンを戦い、冬の大目標に挑戦する。

「残り半年は、今やれることを一生懸命、後悔しないようにとにかく努力していきます。自分の目標は全国制覇なんですけれども、平岡先生を日本一にしたい。(監督の)山城(朋大)先生と平岡先生に全国制覇をプレゼントして、個人的にも飛躍の年にしたい」。今後も、2学年先輩のDF福島隼斗(現福島)のように、ピッチ内外でストイックな日常を送る覚悟。中学時代の送迎など支えてくれた家族への感謝も口にする宮原が、その思いを表現するためにも、夢を実現するためにも、一日一日進化を続ける。

(取材・文　吉田太郎)