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芽生え始めた確かな自信。京都U-18DF木邨優人は“格の違い”を見せ付けられる戦士へ

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京都サンガF.C.U-18のグラディエーター、木邨優人(4番)

[2020シーズンへ向けて](※京都サンガF.C.の協力により、オンライン取材をさせて頂いています)

 世代最高峰のステージで試合に出続けた経験は、自分の力を信じるに足る明確な後ろ盾として息衝いている。もっと大きく、もっと高く、羽ばたけると。「去年はほとんどの試合に出させてもらって、自分としては結構チームの活躍に貢献できたかなと考えていますし、今年はチームの中心としてやっていく中でも、“格の違い”を見せられる選手になって、プロの世界に入っていきたいなと思っています」。京都サンガF.C.U-18のグラディエーター。木邨優人(3年)はディフェンダーとして、“格の違い”を見せ付けられる戦士へ進化を遂げる。

 威圧感すら漂わせる風貌とは対照的な、笑顔のかわいらしさが印象に残る。「練習が再開して最初の2週間は1時間ぐらいしかできなかったんですけど、ずっと1人でトレーニングとかしていたら、みんなとサッカーできひんのが違和感で、みんなとサッカーできている時間が恋しかったので、とても新鮮でした。今はメッチャ楽しいです」。言葉の端々にサッカーができる嬉しさが滲み出る。

 1年時から何度もベンチメンバーには入ったものの、公式戦の出場機会は訪れなかったため、高円宮杯プレミアリーグWESTデビューは昨シーズンの開幕戦。自身にとって特別な舞台に胸が躍る。「僕は大阪出身なんですけど、初めてプロの試合を見に行ったのが長居スタジアムで、『あそこでプレーしたい』とずっと思っていて、その1つの夢が叶った瞬間だったので嬉しかったですね」。

 試合はアビスパ福岡U-18に4-1と快勝したが、タイムアップのピッチに木邨の姿はなかった。「足が攣りました(笑) もう緊張からです。終わった後にチームメイトからは『なんで攣ったん?』とか結構イジられました」。順調にスタートしたように見えた2019年シーズンだったが、すぐに試練がやってくる。第4節の名古屋グランパスU-18戦で、スタメンから外れたのだ。

「3節のセレッソ戦で、僕のミスで失点して負けてしまって、次の試合はスタメンを外れて… メッチャ悔しかったですね。なので、そのセレッソに負けた試合の、僕がミスした時のポジショニングの位置を何回もビデオで見直したり、コーチにディフェンスのことを聞きに行ったりして、何とか改善しようとしました」。

 グランパスにも競り負け、連敗を喫した中で迎えた第5節の愛媛FC U-18戦。キックオフを待つ木邨は燃えていた。「またスタメンに戻れて、『絶対にやってやろう』という気持ちで取り組みました」。前半39分。右CKのチャンスにファーサイドへ突っ込むと、夢中で蹴り込んだボールがゴールネットを揺らす。

 終わってみれば無失点勝利の上に、プレミア初ゴールのおまけ付き。「今は十分にサッカーできていないので、特に自分の課題を見つめ直せる期間やと捉えている中で、スタメンを外れた時に『自分の何があかんかったんやろう』って考えた経験が生きていると思います」。あの“3試合”が意味する所は、誰よりも自分がよくわかっている。

 昨シーズンの木邨を語る上で、重要なのは“先輩”の存在。一緒にセンターバックを組んでいた井上航希(現・沼津)からもたらされたものは、少なくないという。「試合中にミスしても、一番に声を掛けてくれるのが井上選手で、ディフェンスのやり方やヘディングの練習も一緒にやって、凄く参考になる先輩でした。ビルドアップも落ち着いていて、最終ラインのラインコントロールも率先してやってくれたので、とても学ぶことが多かったです」

 忘れられない言葉がある。「3年生がプレミアリーグを最後に戦った後で、『来年はオマエがチームを引っ張っていけよ』と言われて、それは心に残っています。嬉しかったですね」。それでも、最大限のリスペクトを払いながら、頼もしい言葉が口を衝く。「僕の夢に到達するためには、超えていかないといけない存在だと思います」。今よりもっと成長した彼らが再びコンビを組む日は、果たしてやってくるのだろうか。

 前嶋聰志監督は木邨の成長を誰よりも認めているうちの1人だ。「本当に粗削りな所が洗練されてきて、その成長スピードという意味で去年の1年は大きかったですね。彼は今年の副キャプテンにしたんですよ。タフに頑張り続けた結果、2年生で試合に全部出られて、『これから背負っていくものって何なの』と言った時に、外部から来た選手がそういうのを背負ってもいいんじゃないかなという想いもあって、『(中野)桂太のサポート頼むな』とお願いしてるんですけど、頑張ってやってくれています。メッチャいい男だなと思います」。

 憧れはレアル・マドリーのセルヒオ・ラモス。「闘争心を持っていて、キャプテンシーがあって、点も獲れるディフェンダーで、球際でも絶対に相手を潰していますし、ロングキックのサイドチェンジもできるので、参考にするべき選手やなと思っています」。自身も2年続けて4番を背負っていることに水を向けると、「実は結構意識しています」と再びかわいい笑顔が広がった。

 もう足を攣ってイジられていた時の自分とは違う。“僕の夢”を叶えるため、意識を一段高い所に置いている。「去年はほとんどの試合に出させてもらって、自分としては結構チームの活躍に貢献できたかなと考えていますし、今年はチームの中心としてやっていく中でも、“格の違い”を見せられる選手になって、プロの世界に入っていきたいなと思っています」。

 世代最高峰のステージで試合に出続けた経験は、自分の力を信じるに足る明確な後ろ盾として息衝いている。もっと大きく、もっと高く、羽ばたけると。京都サンガF.C.U-18のグラディエーター。向かってくるヤツはすべて潰してみせる。木邨優人はディフェンダーとして、“格の違い”を見せ付けられる戦士へ進化を遂げる。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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