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【THIS IS MY CLUB】「僕はまだ何も貢献していない」…磐田FW小川航基、“5年目”に賭ける思い

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ジュビロ磐田FW小川航基

 Jリーグが戻ってきた。新型コロナウイルスの影響を受けて中断していたJリーグが約4か月ぶりに再開した。ゲキサカではサッカーファンが待ちに待ったJリーグ再開に際し、『DAZN Jリーグ推進委員会』の協力のもと、ジュビロ磐田FW小川航基にインタビューを実施。中断期間中に改めて感じたサッカーへの思い、在籍5年目を迎えた磐田への愛、そして再開したシーズンに向けての意気込みを聞いた。

――新型コロナウイルスの影響で中断していたJリーグが再開しました。再開を聞いたときの率直な気持ちを教えて下さい。
「何かが再開されるということは、コロナが少し落ち着いたという意味合いもあると思います。まずはそれが嬉しかった。Jリーグも無観客ではありますが再開され、公式戦をこなしながら勝ち点を積み上げていく一週間が待っていると思うと、楽しみな気持ちでいっぱいになりました」

――中断期間中はどのようにしてコンディションを維持しようとしていましたか。
「ジュビロに関しては比較的、自主練という形でやらせてもらえていたので、他のチームに比べると、体力が落ちたという心配はあまりなかったけど、どうしても強度が落ちる中で、なるべく強度を落とさないようなメニューを意識してやっていました。皆、状況は一緒なので、『環境がこうだから仕方ない』という一言で終わらせないように、体力やコンディションを落とさず、家でやれることでレベルアップできるようにしていました」

――逆に中断期間だからこそ、得られたものはありますか。
「普段は一週間に一度は試合がある中で、体がどれだけ疲れているかを考えるし、試合に影響が出るなら、筋トレを抑えなければいけません。でも、中断期間中には試合がないので、筋トレを精力的にやれたと思います。すぐに力がつくわけではないけど、この期間にやったことは今後絶対にどこかで生きてくると思っているし、これまでとは違う手応えを感じています」

――いつリーグ戦が再開するか分からないこともあり、“この日”に向けてコンディションを上げていくことはできなかったと思います。モチベーションを保つ難しさもあったのでは?
「モチベーションがどうのこうのとか、目指すところがない難しさがあるという話も聞きますが、僕にとってはやることは変わらなかったですね。試合があろうがなかろうが、いずれ必ず試合はやってきます。個人としてレベルアップさせることを大前提に考えていたし、やることは変わらないので、モチベーションを落とすことなく取り組めていたと思います」

――Jリーグが中断するだけでなく、目標の一つとしていた東京五輪の延期も発表されました。開幕戦後のインタビューで「人生を変える一年にしたい」と意気込んでいただけに、現実を受け入れる難しさもあったと思います。
「正直、現実を受け入れるのは難しかった。でも、それは僕だけじゃないし、皆、同じです。起きてしまったものは仕方ないので、その中で自分に何ができるかを考えて、やっていかなければいけないという思いで取り組んできました。今年は東京五輪がある予定だったし、今年一年で人生を変えるという思いで臨んだのは確かです。ただ、東京五輪は延期になりましたが、今年に賭ける思いは変わりません。その思いが間違いなく来年につながっていくし、それ以降にもつながっていくと思っています」

――これまで、当たり前のように「サッカー」は身近にあったと思います。中断期間を過ごして、改めて「サッカー」は自分の中でどのような存在だと感じていますか。
「やっぱり自分にはサッカーしかない。サッカーをしているときが、サッカーをやることに100パーセントを注ぐことが自分の生きがいだと思ったし、自分にはそれしかないと感じました。あと、練習が再開して、グループでいつもどおりにサッカーをやれる喜びを感じているし、自粛期間中に普段やれていたことができなくなったことで、当たり前のことをやれる幸せも感じています。今、普段とは違う生活がある中で、普段やれていたことがどれだけありがたいことか。そういうことを、ふと思うときがいっぱいありましたね」

――中断期間中には母校の桐光学園高にマスクを寄付したり、事務所のプロジェクトに参加したり、「One Shizuoka Project」が立ち上げられたことで、ピッチ外でも積極的に活動していた印象があります。どのような思いを持って活動に参加していましたか。
「こういう時期だからこそ、自分が少しでも力になれればという思いがあった。ニュースを見て、本当に大変な時期を迎えた中で、僕にどれだけの影響力があるかは分からないけど、少しでも何かをして誰かに力を与えられればと考えました。僕自身、今回のコロナによる自粛期間で人間的なところを見つめ直さないといけないと感じたし、大したことはできなかったけど、僕にも何かしらできることはあるんだと思えたので、少しでも行動に移せたことは良かったと思っています」

――5月下旬にはトップチームの活動が再開し、チームメイトとピッチ上で再会しました。これまでの“日常”が、また違った景色に映ったのでは?
「チーム全体で活動したときに思ったのは、サッカーはやっぱり一人ではできないということ。仲間がいて、相手チームがいて始めて成り立つスポーツだと実感した。対人やゲーム形式のトレーニングが始まったときに、『やっぱり楽しい』という気持ちになりました。今後、新型コロナウイルスの感染が拡大しないこと、普段の生活を送れる日々が続くように願いたいです」

――今季は期限付き移籍していた水戸から磐田に復帰しました。相当な覚悟があったと思います。
「いろいろな気持ちがありましたが、いろいろと考えて今年は覚悟を持って戻ってきました。昨季ジュビロはJ2に降格しましたが、僕はジュビロが苦しいときにチームを離れて水戸に行ったので、間違いなく僕には責任があると思う。試合にはあまり出られていないし、ジュビロに入ってからチームに貢献できていないけど、ファン・サポーターの方からの期待は感じています。高校を卒業してからの4年間、何もできずにいたけど、『小川航基にゴールを決めてほしい』というファン・サポーターの方もいると思う。その気持ちに応えたい強い気持ちがあります」

――桐光学園から磐田に加入以降、苦しい時期が長かったと思います。その中で、クラブに対する愛情に変化はありましたか。
「高校を卒業して初めて入ったクラブなので、間違いなく愛着があります。ジュビロには僕よりも長い期間在籍している選手がたくさんいるし、たった4、5年在籍している僕がどうこう言える立場ではありませんが、ジュビロは本当に選手のことを第一に考えてくれるクラブです。監督やスタッフの方はもちろんだし、ファン・サポーターの方はどんなときでも応援をしてくれます。時には、ゴールを奪えずにブーイングをされることもありますが、プロのチーム、プロの選手としてブーイングされることも大事だと思う。もちろん、ブーイングされないプレーや結果を見せることが一番ですが、結果がすべての世界なので、叩くときにはしっかり叩いてくれることで愛情の深さも感じています。何よりも静岡・磐田、ジュビロ愛、地元愛を感じるし、プライベートでご飯を食べに行ったときに『この間のプレーは良かったね』と話しかけて下さったり、本当に温かいチームだと思っています。クラブへの愛も深まっているし、僕ももう若手ではないので本当に貢献しないといけないと思う」

――磐田への愛を感じますが、昨季途中に初めて移籍を決断します。このままではいけない、環境を変える必要があると考えたのでしょうか。
「ジュビロで試合にあまり出られていなかったので、自分が貢献するのは今じゃないかもしれないと考えもしたし、まずは出場機会を与えてくれるところでしっかり試合経験を積んで力をつけ、将来的にチームに貢献できればという思いもあった。もちろん、一年後に東京五輪があったので、そこから逆算して、今何が必要なのかを考えたときに、間違いなく出場機会、出場時間だとも考えて移籍しました。ただ、移籍したら水戸のために戦うことしか考えていなかった。だからこそ、守備の部分やしっかり走る部分、ゴール感覚などを成長させられ、非常に多くのものを得られた。本当に良い選択をさせてもらえたと感じています」

――今季の磐田はメンバーが大幅に入れ替わりました。戻ってきたときに雰囲気の違いを感じましたか。
「本当にガラッと変わったなという印象でしたが、また競争がゼロから始まるということで、すごく良い雰囲気でした」

――その新チームの中で背番号9を着けることになりました。磐田の9番には重みがあると思います。
「チームのエースストライカーは背番号9を背負っていて、個人的にも好きな番号ですが、自分にプレッシャーをかける意味もあった。自分の中で何かを変えるには、それくらいの覚悟が間違いなく必要だと思っていたので、フロント、強化部に自分から『9番でお願いします』と伝えました」

――覚悟を持って臨んだシーズンの開幕戦で、いきなり2ゴールと結果を残しました。今季初ゴールはMF山本康裕選手のシュートのこぼれ球を押し込む形になりました。
「映像で見直したら、僕が触らなくても入ったんじゃないかなと思ったし、山本選手からは『点になったのは嬉しかったけど、パッと見たらお前の得点かよ』と言われましたね(笑)。触らなくても入ったのかもしれないけど、自分の目の前にボールがコロコロと転がってきて、そこで触らないということは僕にはできなかった。ほしいところにボールがこぼれてきたのも、今年は流れが来ているんじゃないかと思えたし、やっぱりどんなゴールでも『1』をつけることで印象は違う。多くの人は数字を見ているし、ストライカーにとって数字は本当に大事なので、開幕戦で複数得点できたのは自分にとっても良かった。それに良い内容で試合を運べて勝利できたことでチームとしても良い開幕戦だったと思う」

――2点を奪うだけでなく、チームも勝利したことで、クラブやファン・サポーターに「今年のエースは小川航基だ」と印象付けられたのでは?
「僕自身も今年は違う小川航基を見せるぞと思っているので、その印象は付けられたのかなとは思う。でも、毎試合ゴールを奪わないと認めてもらえないし、僕が得点王争いをして、ジュビロが昇格することが認めてもらえる唯一の材料だと思っています」

――ゴール後に仲間と喜びを分かち合い、ファン・サポーターの熱気に包まれることは、ストライカーにとって最高の瞬間だと思います。
「やっぱり、たまらないものですよね。点を決めたときにファン・サポーターや仲間が喜んでくれる、誰かが喜んでくれるというのは、ストライカーにとって本当に幸せなことです。だから、ゴールはやめられないと言うか、僕にとって生きがいの一つです」

――再開後のJリーグはリモートマッチ(無観客試合)で行われます。3月の清水との練習試合では無観客の中でのゴールも体験していますが、いつもとは“違う味”に感じましたか。
「違いはもちろんありましたが、それでもゴールを決めるということが大事です。ファン・サポーターがいた方が気持ちは上がるし、直接喜びを分かち合えますが、リモートマッチで開催されるのは仕方のないことなので。ファン・サポーターがスタジアムに来れなくても、自分はしっかりとゴールを決めて、テレビの前で喜んでくれている姿を想像できればと思います」

――サッカー選手にとって、ファン・サポーターが与える力を改めて教えて下さい。
「アウェーにももちろん足を運んでくれるファン・サポーターは多いですが、やっぱりホームの声援というのは違います。本当に不思議なんですが、最後の一歩が出たり、最後の最後まで走らせてくれる。それは走行距離とかの数字にも出ていて、ホームのときの方が走れている印象があるので、すごい力を与えてくれているんだなと改めて感じます。特にヤマハスタジアムはサッカー専用スタジアムなので、選手とファン・サポーターの距離がすごく近く、よりその力を感じられます。また、あの大歓声の中でプレーできる日々が、早く戻ってきてほしいです」

――最後に今シーズンに賭ける意気込みをお願いします。
「今年は連戦が続くと思うけど、しっかりと体のケアをしてケガをしないようにしたい。休むときにはしっかり休むことを意識して、一年間を通して試合に出続けることを第一に考えてやっていきたい。開幕前に最低でも20ゴールと宣言したので、最低でも20ゴールを奪い、ジュビロを絶対にJ1に昇格させます」

(取材・文 折戸岳彦)
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