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児湯の地で育まれた無限のポテンシャル。浦和ユースDF福島竜弥は“感謝”の念を力に変える

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浦和レッズユースの“対人番長”、福島竜弥

[2020シーズンへ向けて](※浦和レッズの協力により、オンライン取材をさせて頂いています)

 若干15歳で宮崎から浦和へとやってきた少年が携える決意は、かの地を後にした時から微塵も揺らいでいない。それゆえに自分を信じてくれる周囲への想いも、またひしひしと感じている。「地元の友達やチームメイトもそうですし、何より家族がいなければ今の僕はいないと思いますし、本当に今でも感謝しながらサッカーをしているので、プロになりたいですよね」。児湯の地で育まれた無限のポテンシャル。浦和レッズユースの対人番長。“感謝”の念を自らの力へ変えるために挑む福島竜弥(3年)の2020年が、いよいよ本格的にスタートする。

 それはある試合後のことだった。宮崎の児湯SC U-15でプレーしていた福島は、おもむろに声を掛けられる。声の主は浦和レッズのスカウトを務める田畑昭宏。その場でユースの練習参加を要請される。「何回かレッズの方が来ているのは監督から聞いていましたけど、自分を見に来ているとは全然知らなくて、直接お会いした時はビックリしました」。

 レッズというクラブは常に特別な存在だった。「小学3年生の時に自分が入った少年団の総監督さんが河野真一さんという元レッズの選手で、毎年忘年会の時にレッズのマフラーとかを持ってきてくれて、それを僕ももらったこともありますし、レッズの宮崎キャンプにも毎年時間がある限り行っていて、一番大好きなチームだったので、この話をいただいた時は本当に嬉しかったですね」。練習参加の結果、晴れて合格を勝ち獲った福島は、単身で浦和へと“サッカー留学”することとなった。

 最初からすぐに望んだような成果が出たわけではない。1年時はケガも多く、主戦場は常にBチーム。間違いなく苦しい経験の方が多かった。だが、ある1試合のパフォーマンスが自分の“流れ”を大きく変える。昨シーズンの高円宮杯プレミアリーグEAST開幕戦。12番を背負ったレフティは左サイドバックの位置で、キックオフから攻守に躍動する。

「あの試合に懸けるものは誰よりも強かったと思いますし、僕の良さを表現できた試合で、本当に僕のサッカー人生の中で1つの大事な試合でした」。対面した清水エスパルスユースのウイングバックは、年代別代表にも選ばれていた選手だったが、一歩も引かずにバチバチやり合うと、後半途中からその選手はポジションを前線に移してしまう。おそらくそのシフトチェンジには、福島とのマッチアップも影響があったのではないだろうか。

 試合は0-2で敗れたものの、取材陣に囲まれた上野優作監督(当時。現・トップチームヘッドコーチ)はこう話を切り出す。「僕としては非常に嬉しい。うん。良くやった、良くやった。まず福島。12番。良くやりましたよ」。上々のプレミアデビューを飾ると、以降も第16節までは出場停止の1試合を除くすべての試合でピッチに立つ。「日本で一番レベルの高いリーグで、たくさんの試合に出させてもらって、自分自身としても成長できたかなと思います」。手に取るようにわかる自分の成長が、とにかく嬉しかった。

 だが、池田伸康監督は見抜いていた。第17節は1分だけの途中出場。最終節はメンバー外。シーズンの最後は“蚊帳の外”を強いられる。「今から考えれば、試合に出ていることで浮かれていたというか、ちょっと調子に乗る部分が自分の中にあって、100パーセントのパフォーマンスをしていなかったかなと。そこは自分の力不足というか、甘さだと思います」。慢心。戒め。お互いの気持ちが交錯する。

 その経験は大きかったと、福島は強い口調で振り返る。「そのことがあって、本当に完璧を突き詰めないといけないと、甘さを排除しないといけないと自分の中で強く感じたので、そこは新しいシーズンになってから誰よりも意識して、チームのことを一番に考えてプレーしていましたし、今でもその想いは変わらないです」。周囲に恵まれ、自身を日々ブラッシュアップしていく。大きな目標へと辿り着くために。

 2種登録された昨年は、トップチームの練習にも参加している。「対人の所では手応えがあって、そういう所はやっていけるなと感じましたけど、プレーのスピードや質はまだまだ足りないなと思いました」。印象に残った選手として挙げるのは、同じディフェンダーの鈴木大輔。「後ろからどんどん声を出していて、本当に熱い選手でしたし、本当に優しい方で何回も僕にアドバイスをくれて、人間性も含めて僕も『ああいう選手になりたいな』と感じました」。鈴木の姿勢を見て、“プロ”へのイメージはより高まった。

 自粛期間の帰省も、改めていろいろなことを考えるきっかけになった。「思い通りの練習はできなかったですけど、サッカー以外の所で家族と過ごす時間が持てたのは良かったのと、サッカーの所でも今できることを考えてやれていたので、自分の中では充実した自粛期間だったかなと感じています。家族と1か月以上過ごしたのは2年ぶりくらいでしたし、こっちに帰って来て、親のありがたみを感じました」。

 だからこそ、続けて口から零れ落ちたのも、やはり“感謝”の言葉だった。「地元の友達やチームメイトもそうですし、何より家族がいなければ今の僕はいないと思いますし、本当に今でも感謝しながらサッカーをしているので、プロになりたいですよね」。

 若干15歳で宮崎から浦和へとやってきた少年が携える決意は、かの地を後にした時から微塵も揺らいでいない。それゆえに自分を信じてくれる周囲への想いも、またひしひしと感じている。期待に応えられるか否かは、ここからの自身が積み上げる努力次第。児湯の地で育まれた無限のポテンシャル。浦和レッズユースの対人番長。“感謝”の念を自らの力へ変えるために挑む福島竜弥の2020年が、いよいよ本格的にスタートする。


■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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