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再び示した決定力。FW染野唯月がU-19代表候補紅白戦で「欲しかったのは点」表現し、待望のゴール

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FW染野唯月(鹿島)がU-19日本代表候補合宿で待望のゴール

 やはり、染野は決める――。そのことを再確認させるようなゴールだった。15日に行われたU-19日本代表候補の紅白戦。1本目の20分、相手のクリアミスから左サイドをFW晴山岬(町田)が抜け出す。そして判断速く中央へ繋ぐと、FW染野唯月(鹿島)が右足で冷静にゴールへ沈めた。

 染野は尚志高(福島)2年生時の全国高校選手権で得点王。特に準決勝で優勝校の青森山田高からハットトリックを達成し、一躍注目度を高めた。3年生となった昨年も柏U-18とのプレミアリーグEAST開幕戦でFK弾を含む3得点。自身初のプレミアリーグで得点を重ね、夏冬の全国大会予選決勝でも決勝点を叩き出している。直接FKを含めたシュート精度の高さや“ヘリコプターヘッド”を武器とする染野は、“半端ない”“大迫2世”“高校ナンバー1ストライカー”といった代名詞がつく存在となった。

 だが、昨年11月に腰椎分離症(腰の疲労骨折)が判明。2年連続得点王と日本一が期待された選手権を欠場した。鹿島でのプロ生活はリハビリからスタート。もちろん不安もあっただろう。だが、新型コロナウイルスの影響でJリーグが中断する中、準備を続けた染野は3月の練習試合でゴールを決めるなどアピール。そして、中断明けのJ1川崎F戦で交代出場してプロデビューを果たすと、いきなりクロスバー直撃のシュートや鋭い抜け出しで存在感を放つ。そして続く札幌戦、浦和戦は先発出場。だが、いずれもSH起用だったとは言え、ゴールがなかった。

 それが、この日は同世代の才能たちとの競争が注目される中でゴール。紅白戦の1得点だとしても、多くの関係者・メディアの前で「染野は決める」ことをまた印象づけるような一撃だった。

 染野もゴールを欲していたことを説明する。「久々に代表に選ばれて、その中でも格の違いを見せたかったですし、Jリーグでもなかなか点が入らない中で自分に欲しかったのは点だったので。紅白戦でしたけれど、点を決められたというのは自分にとって良い方向に向いたのかなと思います」。“常勝軍団”鹿島で先発しているプライドもあったはず。待望のゴールを素直に喜んでいた。

 また、この日は持ち味の技術力の高さを活かして前線でボールを収めてさばく部分や、DFライン近くまで下りて相手の速攻に対応していたことが印象的だった。MF本田風智(鳥栖)のゴールの起点となったり、ゴール前で晴山にラストパスを通したりするシーンも。加えて、MF柴田壮介(湘南)のスルーパスに反応するなど貪欲にゴールを目指しながら、前線で周囲を活かす力や守備での献身性も発揮していた。

 今年の半年について、染野はプロ選手として成長できたことを実感していた。体作り、怪我の予防……。「自分がプロでサッカーをしていく上で、必要なことを色々な人に聞きながらご飯であったり、栄養であったり、休息のところも色々な選手に聞きながらやってきた結果、良いスタートを切れたというのは自分の中で凄く嬉しいと思いますし、今後も続けていかないといけないと思います」。ボールにかかわる回数を増やすことなどまだまだやるべきことが多いことも確か。それでも、我慢の期間に多くを吸収し、成長を果たした染野は鹿島でもゴールを決め、攻守で勝利に貢献して鹿島、U-19代表でも欠かせない存在になることを目指す。

「まず代表に選ばれるためには自チームでしっかりと試合に出なければいけないと思うので、試合に出て結果を残す。それによって、自ずと代表にも選ばれると思う。鹿島で試合に出て活躍して、10月にある大会(AFC U-19選手権)に出場したい」。この日待望のゴールを決めて勢いづいた染野が鹿島、年代別日本代表でも“半端ない”と言われるような活躍を見せる。

(取材・文 吉田太郎)

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