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先輩の助言受けて折れずに努力を継続。前橋育英MF櫻井辰徳は日本一、そして「世代でナンバー1のボランチに」

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前橋育英高の注目ボランチ、MF櫻井辰徳

 直近の目標は高校日本一、そして「世代でナンバー1のボランチになる」ことだ。前橋育英高(群馬)のMF櫻井辰徳(3年)は、U-17日本代表候補歴を持つボランチ。すでにJ1、J2の複数クラブが関心を寄せるなど、その進路にも注目が集まっている。

 今月11日には、新型コロナウイルスによる活動自粛が明けてから初めての練習試合。前日に左足首を負傷していた櫻井だが、県内のライバル・桐生一高との一戦に志願して出場する。空いたスペースをドリブルで駆け上がったほか、縦パスで攻撃をスピードアップさせたり、サイドチェンジを見せたりするシーンもあったが、本人にとってはチームのコンビネーション面含めて不満の内容。試合に敗れ、駆けつけたスカウト陣の前で良さを発揮することもできなかった。

 ただし、悲観はしていない。「全部が悪かった訳じゃないので、悪かったところを気づけたという部分では良い収穫だったし、これから課題に対して全員がしっかり取り組んでいければどんどん良くなっていくと思います。こういう練習試合ができたことをまずプラスに捉えて、できたこと、できなかったことをはっきりさせて、また練習試合があるので、今日よりも個人としても、チームとしても良いプレーができればと思っています」と前向きだった。

 右足から美しい軌道のプレースキックを蹴り込むほか、左右両足で正確な長短のパスを繰り出す。ゲームメーク力の高さ、180cm近い身長も含めて将来を有望視されるボランチだ。もう少し発掘される時期が早ければ、U-17ワールドカップ出場も十分にあり得たと言われる逸材。だが、ワールドカップメンバーには届かず、日本一を目指した選手権は大会直前に負傷し、欠場した初戦でチームが敗退してしまう。

 今年の県新人戦は復帰戦で交代出場も敗戦。そして、その後は新型コロナウイルスの影響で公式戦出場の機会を失っている。「去年、選手権を怪我で出れなかった分、プリンス、インハイ予選、インハイの全国で自分の名を広めたかったのがありました」。地元開催で“懸けていた”インターハイやプリンスリーグ関東は昨年の悔しさをぶつける舞台、自身の将来のためにも重要な大会だと考えていた。だが、その機会を失ったことで「これからどうしていいか、分からなくなった」。

 その迷いを払拭してくれたのはOBたちの言葉だった。櫻井は2学年上の先輩MFであり、新潟で台頭中のMF秋山裕紀や日本一世代の主将・田部井涼(現法政大)に相談。「自粛期間が差をつけるチャンス」とアドバイスを得た。

 また、東松山ペレーニア(埼玉)時代の先輩MFバスケス・バイロン(現ウニベルシダ・カトリカ)からは「ここがチャンスとしっかりやっていれば、プロは見てくれる。誰かは絶対に見てくれている」とエールを受けたという。それらの言葉に背中を押され、気落ちすることなくプロ、日本一という目標へ向けて努力を続けることができた。

 現在、目指している姿がある。「今年のボランチで、この世代で一番にならないといけないと思っていて、この世代で一番にならないとプロじゃやっていけないと分かっている」。ボールを持った際の動きに特長を持つ櫻井だが、ポジショニングも、周りを活かす部分も、守備も、運動量も、精神面でも、チームに好影響をもたらす存在になること。課題もあるが、それを克服し、何でもできるボランチとしてチームの勝利に貢献するという覚悟だ。

 ただし、気負って目立とうとする必要はないと考えている。昨年は自分が目立って勝つことを目指していたというが、結果としてまず勝利を目指し、先輩たちに支えられながら力みすぎることなく自分の良さも発揮したことが、一年間良いパフォーマンスを続けることに繋がった。

 だからこそ、今年もまず白星を目指す中で、自然に良いプレーをすることを心掛けている。それがチームの勝利にも繋がるはず。「去年通り。自分ひとりが引っ張っていくのではなくて、隣にいる(熊倉)弘貴とか(大野)篤生とか(中村)草太、(熊倉)弘達とか色々な選手が経験しているので、その選手と一緒にチームを支えていければ良いと思います」と語った。

 去年の悔しさも込めて、「絶対に結果を残すという気持ちがある」ことだけは変わらない。自粛期間同様に、貪欲に自分とチームを高めるための努力を継続すること。そして、普段通りに毎試合ハイパフォーマンスを続けて「高校ナンバー1ボランチ」の評価を固め、選手権で信頼する仲間たちと日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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