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Copa Aichi制覇。活動自粛期間中に“引退”した仲間の想いを背負い、岡崎城西が最高のリスタート!

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優勝を喜ぶ岡崎城西高イレブン

[7.12 Copa Aichi決勝 岡崎城西高 5-0 愛工大名電高 豊田市運動公園陸上競技場]

 岡崎城西高が3年生全員の力で優勝を勝ち取った。

 新型コロナウイルスの感染拡大で高円宮杯プレミアリーグは中止となり、各地域・都道府県のリーグ戦は開幕延期。今夏に群馬県で開催予定だったインターハイサッカー競技も中止となった。愛知県の高校サッカー界も大きな影響を受けており、公式戦が行えていない。インターハイ県予選の代替大会も実施されておらず、各チームはもどかしい日々を過ごしてきた。

 そうした状況を打開すべく、名古屋高の山田武久監督と岡崎城西の金重卓広監督が発起人となり、3年生のために新たな大会を創設。2月に行われた県新人戦でベスト8に入ったチームに声をかけ、7月11日から2日間の日程で“Copa Aichi”が開催された。

 大会はトーナメント方式で実施。メンバーは原則として3年生のみで、より多くの選手に出場機会を与えるべくレギュレーションにも特別ルールを設けた。試合時間は30分×3本(1回戦は30分×4本)。大会に登録されている選手は15分以上の出場を義務とした(1回戦は30分以上の出場)。

 岡崎城西は1回戦で中京大中京高(0-0、PK7-6)に勝利し、2回戦では東海学園高(1-1、PK5-4)を撃破。迎えた12日夕方の決勝では昨冬の全国高校サッカー選手権に出場した愛工大名電高に対し、序盤から試合を優勢に進めた。

 4-2-3-1の布陣でスタートすると、最前線のFW星野光(3年)、トップ下のMF松田琢磨(3年)を軸に攻撃を展開。ショートカウンターやセットプレーからチャンスを作り、相手を押し込んでいく。1本目の28分には松田が高い位置でボールを奪い、MF石川勇志(3年)が体勢を崩されながらゴール前にラストパス。GKとの1対1を制したMF坂神賢亮(3年)が左足でネットを揺らした。

 一方の愛工大名電は1失点を喫したものの、左サイドハーフのMF稲毛快斗(3年)、最前線のFW河栁幸太郎(3年)とFW有賀悠斗(3年)が存在感を発揮。得点は奪えなかったが、3人が上手く絡んで相手ゴールへと迫った。

 1点リードで1本目を終えた岡崎城西は追加点を狙うべく、2本目開始から3選手を交代。「相手がバテている状況で生かしたい」という金重監督の狙いで控えに回っていたエースFW細野晃平(3年)が投入されると、よりゴール前で決定機を作る場面が増えた。テンポの良い仕掛けで相手守備陣を翻弄すると、19分に星野が力強いドリブルで右サイドを突破。深い位置から上げたクロスを細野が頭で合わせて追加点を奪った。

 直後の21分には左CKを獲得。ショートコーナーから細野が中央へ折り返し、最後はファーサイドのCB大須賀祥真主将(3年)が加点した。23分にも細野の仕掛けから星野がゴールを決め、わずか6分で3点を奪って勝負の行方を決定付けた。

 以降も堅実な試合運びを見せ、守備陣も集中力を切らさずに対応していく。4-0で迎えた3本目も優位に進め、10分には星野が右足でダメ押し弾。効果的にゴールを重ねた岡崎城西が5-0で愛工大名電を下した。

 1回戦、2回戦は苦戦を強いられながら、決勝は5得点の快勝。「優勝したけど、一番良かったのは大会が盛り上がったこと」と金重監督は結果に一喜一憂しなかったが、選手たちは久々の優勝に喜びを露わにした。

「金重監督などが僕たちのために大会を企画して下さり、本当に感謝の気持ちしかありません。だからこそ、僕たちは優勝を目指したかった。最高の結果になって本当に嬉しい」(大須賀)

 思い返せば、この4か月は様々な出来事があった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で3月初旬からほとんど活動できず、他チーム同様に自宅での個人練習を余儀なくされた。ただし、その期間は無駄ではなかった。チームで共有した動画とともに、金重監督から岡崎城西の歴史を教わった意味は大きかったという。

「歴史を知り、気持ちが新たになりました。去年は選手権の県予選決勝で悔しい想いをしたので、今年の選手権は絶対に取ろうと話していましたが、インターハイの中止で(モチベーションの維持が)難しい部分もありました。だけど、(監督の話で)『戦うぞ』と前向きになれたんです」(大須賀)

 先輩たちの歩みは選手たちの心に響き、選手権に向けてモチベーションは上がった。

 そして、この期間にもう1つチームの気持ちを高める理由があった。それは活動自粛期間中に3年生の大半が“引退”したことだ。この期間に39名のうち半数近くが辞め、Bチームで残ったのはDF佐藤優太(3年)だけとなった。

 仲間たちが下した決断。当時の出来事を大須賀はこう振り返る。

「例年であれば、夏前に“引退”する人はあまりいません。僕自身もBチームに仲の良い選手がかなりいたんです。僕も昨年までなかなかトップチームに上がれず、同じカテゴリーで一緒にやっていた時の仲間なのでグラウンドからいきなりいなくなってしまうと……。『今まで一緒にやってきたのに』という気持ちで心に穴が空いた感じになり、サッカーを楽しめない時期がありました」

 しかし、その虚無感から救ってくれたのは“引退”した仲間たちの言葉だった。

「“引退”した選手から『俺たちの分まで頑張ってくれ』と学校でよく声をかけてくれるんです。自分たちは彼らの気持ちも背負って戦わないといけない。それに気付かせてもらいました」(大須賀)

 Bチーム組で唯一チームに残った佐藤も仲間への想いを口にする。

「“引退”について相談を受けていましたが、実は自分もサッカーを辞めるか悩んでいました。でも、チームの歴史を監督に教えてもらい、選手権の映像も改めて見た時に目標を成し遂げたいと思ったんです。その中で一緒に戦っていた仲間たちの退部は辛かったけど、(今大会の開幕前日に)サッカー部を引退した選手たちから激励の連絡をもらいましたし、今日も応援に駆け付けてくれました。(この大会を優勝する上で)本当に大きかったです」
 
 3年生だけの大会でレギュレーションも公式戦とは異なる。今回の結果だけで、現状の力関係を確認できる訳ではない。しかし、引退した選手も含めて全員の力で勝ち取った優勝は財産だ。

「まだ冬の選手権がどうなるか分からないですが、開催されると信じて準備をしていきます。3年生が少ないので1、2年生やマネージャーの力も借りながら取り組んでいきたい。岡崎城西はチームが1つにならないと勝てません。いろんな人に感謝しながら、この大会で得たものを忘れないようにして、まずは選手権予選で去年のリベンジをします」

 昨季は県リーグ1部で2位、インターハイと選手権はいずれも県予選決勝で敗退。今年2月の県新人戦も準優勝で、あと一歩のところで涙を飲んできた。今年こそは18年ぶりとなる選手権出場を勝ち取れるか。今大会で仲間との絆を深めた岡崎城西が冬に向かって、最高のリスタートを切った。

(取材・文 松尾祐希)

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