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年々目線上がる明秀日立。強敵に喫した敗戦を悔しがり、差を埋めるための日々を誓う

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敗戦も、明秀日立高は個々が力のあるところを示した。左は俊足FW海老原拓弥、右はチームの中心・MF中熊岳琉主将

[7.19 練習試合 流通経済大柏高 4-0 明秀日立高 流通経済大柏高G]

 3年連続選手権出場中の明秀日立高(茨城)は選手たちの目線、目指す位置が一つ上がっているようだ。この日対戦した流通経済大柏高(千葉)は、まだ彼らにとって格上の存在かもしれない。それでも、萬場努監督は年々選手たちの意識が高まり、今回は「全国で対戦する相手」として名門・流経大柏に臨んでいたことを実感。その中で「個でやれる部分がありました。ズバッと(特長が)見える選手が増えていた」と感想を口にした。

 大黒柱のCB石橋衡(3年)を欠いたこの日のA戦では、立ち上がりに失点したものの、アンカーに起用された2年生MF長谷川皓哉が攻守に奮戦。また、守備面や1タッチ、2タッチのパスを強みとするMF中熊岳琉主将(3年)とMF中沢駿斗(2年)を含めた中盤や、技巧派の右SB箕輪竜馬(3年)が、相手のプレッシャーを剥がして前線へ配球する回数を増やしていた。

 特に1本目は50m走6秒の俊足FW海老原拓弥(3年)のスピードが相手を苦しめた。「相手の裏とか自分のスピードとか活かして、(自分の)強い部分は出せていたと思います。(抜いた後が)あまり良くなかったですけれども、流経さん相手だったので自信になった感じです」という海老原の縦突破から決定機も。後半も194cmGK谷口璃成が流経大柏相手にハイボールで健闘し、まだアンカーにコンバートされたばかりという長谷川の好パスなどから決定的なチャンスも作り出していた。

 結果は0-4で敗戦。だが、例年よりもボールを動かすことに取り組んできたという明秀日立は、流経大柏相手に怯むことなく、見どころの多い攻め合いを演じていた。一方で、やれたことへの満足感はなく、試合後は敗戦を本気で悔しがる姿。中熊は「自分も含めてそうなんですけれども、まだ全然コロナ明けてから守備や1失点に対しての重みが全然緩くて……。先週の尚志含めて2連敗しているんで、もうちょっとやっていかないと自分たちの目標である全国制覇は取れないかなと思っています」と首を振った。

 中熊は全国トップレベルの名門・流経大柏との現状の差について、「一人一人のスピード感やプレスのスピードが自分たちと全然違っていて、そこで後手に回ってしまったと思います」と分析する。明秀日立は過去5年間で選手権に4度出場し、全国8強も経験した。選手層が厚くなり、さらなる上位を目指せる陣容になりつつあることは確か。それでも、流経大柏や尚志のような強豪を2つ、3つと破っていかなければ目標を実現することはできない。

 ただし、絶対に手が届かないという差ではない。海老原は「日々の練習からもっと強度を高めたり、一人一人の意識を高めていければ、差を埋めて行けるのかなと思います」と語り、中熊は「(今年は)一人一人速い人がいたり、強い人がいたり、結構良い人がいると思うので、自分がもっとまとめてやっていければ全然チャンスはあるのかなと思います。(ただし)今日の流経みたいな相手にも、もっと前からプレスでハメたりすること。そのためには一回一回のプレースピードを上げたりしていかないといけない」。それぞれが悔しさを持ち、よりチームとしてまとまって、日々差を埋めていくことを誓っていた。

 3年生にとって、高校サッカーは残り半年ほど。中熊は「1年生の頃から全国制覇、全国制覇と言って目標にしてきたので、選手権で日本一を取れるようなチームにしていきたいです。もっと自分が突き抜けられる選手に」と力を込め、海老原は「全国大会で良い成績を残したり、全国制覇をするために頑張っていきたいです。個人としては点に毎試合絡める選手になりたいです」と掲げた。個人、チームで目標への努力を続け、来冬、明秀日立の歴史を塗り替える。

(取材・文 吉田太郎)
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