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青森山田を背負って立つ存在へ。新10番の2年生MF松木玖生は攻撃も、守備も

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名門・青森山田高の新10番、2年生MF松木玖生

[7.26 青森県高校夏季競技大会決勝 青森山田高 4-0 八戸学院野辺地西高 青森山田高G]

 プレミアリーグ王者・青森山田高の新10番は2年生レフティー、MF松木玖生が担っている。昨年度の全国高校選手権は1年生ながら準決勝の決勝点を含む4得点を記録し、今年2月にはU-17日本代表の中心選手として「JENESYS2019 青少年サッカー交流大会」(鹿児島)優勝。新型コロナウイルス感染拡大によって公式戦の中止が続いたが、松木はようやく迎えた「10番」での初公式大会で存在感を放ち、優勝を勝ち取った。

 この日は開始2分にロングスローから決定的なヘッド。さらに混戦から押し込もうとしたが、八戸学院野辺地西高守備陣も相手エースのシュートに対して執念のブロックを見せる。それでも、再びこぼれ球に反応した松木はオーバーヘッドシュート。先制点とはならなかったが、いきなり会場中の視線を集めた。

 その後は、八戸学院野辺地西が青森山田の新10番を要警戒。常に1人、2人が寄せてきて松木は簡単に前を向かせてもらえない。その中でも「最後のマイナス(のパス)だったり、(ゴール前で)良いところに居続けるという点は常に狙っています」という松木は再三PAへスプリントしてゴールを目指していた。だが、わずかにタイミングが合わなかったり、相手の身体を投げ出してのシュートブロックに遭うなど期待された得点を奪うことができない。

 選手権の活躍によって、彼の決定力がクローズアップされることは確か。だが、松木は攻撃でも、守備でもチームを勝たせることができるプレーヤーだ。球際での強度ある動きでマイボールに変え、サイドへ相手を追い込んでタックルを決めるシーンも。そして、攻撃面でも2得点を演出した。

 1-0の後半15分、松木は中盤中央から左足でCBの背後へ絶妙な浮き球スルーパス。これに反応したMF安斎颯馬(3年)がPKを獲得する。そして、CB藤原優大主将(3年)が決めて待望の2点目。松木は後半30分にも、左サイドでの連係から丁寧にスペースへのパスを通す。これで抜け出した左SBタビナス・ポール(3年)がクロスを上げ、安斎が1タッチで決めた。

 過去5年の青森山田の10番はMF神谷優太(現柏)、MF高橋壱晟(現千葉)、MF郷家友太(現神戸)、MF檀崎竜孔(現札幌)、MF武田英寿(現浦和)。彼らは何よりインパクトのあるゴールでチームに勝利をもたらしてきたが、松木は攻撃でも、守備でも存在感を放つ10番を思い描いている。

「山田の10番は点を決めるというイメージが強いんですけれども、自分なりの10番をしっかりと身につけようと思っていて、守備して、なおかつ攻撃でも飛び込めるみたいな、そういう10番を作っていきたい」

 近年の青森山田の10番は、いずれも高体連を代表する選手としてJリーガーに。その番号を2年生で背負うことに重圧はないのだろうか(※09年のMF柴崎岳、11年のMF椎名政志が2年生で10番)。だが、松木は責任感を持って10番を担う覚悟だ。また、「自分、観客が入るほど楽しめる感じなので」という2年生は周囲からの注目をむしろ楽しんでいる。

 松木が青森山田の一員としてプレーした公式大会は選手権以来。成長を確認する場がなかった。それでも、「2年目でプロから声をかけてもらえるように」「同じ年代だったら中野伸哉(鳥栖U-18)がU-19(日本代表)の候補に選ばれているので、そういうところでは負けたくない」と高い目標と意識を持つMFは、一喜一憂せずに自分に成長を求めてきた。

 黒田剛監督は松木が「チームの精神的柱になっている」と認め、さらなる成長を期待して10番に。藤原とともに「山田を背負って立つ」選手に成長してきていることは間違いない。松木はその期待に攻守で応える意欲。「得点もそうですし、守備のボール奪取とか存在感のところで他とは違いを出したいと思っています。自分は(埼玉スタジアムでの選手権決勝で勝つという)その気持ちでは絶対に誰にも負けていないと思うので、優勝する気持ちでやっています」。謙虚さと強い向上心を持つ2年生は、現状を「まだまだ」と分析。各選手意識の高い青森山田の中でも人一倍の努力を続け、攻撃でも、守備でも目立って、チームを勝たせる10番になる。

(取材・文 吉田太郎)
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