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川後陽菜がブラサカ漫画『ブクロキックス』に夢中「恐れを感じない姿がカッコいい」

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撮影:柏原力

 6月に単行本1巻が発売され話題のブラインドサッカー漫画『ブクロキックス』。1巻を読んだブラインドサッカー日本代表・高田敏志監督、「ブラサカ応援メンバー第1号」の川後陽菜、作家の松木いっか先生の座談会が実現した。本作がきっかけで繋がった3人が、それぞれの目線で、ブラインドサッカーの魅力を語り合う!

「久々にめちゃくちゃタイプだなって思いました」(川後)

――川後さんは漫画がお好きだと伺いました。

川後(以下、川)ちっちゃい頃から読んでますね。今も漫画を紹介する連載をやったりとか、書店で選書棚を作ったりとか、漫画や本に関わる仕事をしています。ヤンマガだと、『匿名の彼女たち』とか『でろでろ』の単行本持ってます。あとお父さんの影響で、子供の頃『頭文字D』のアニメをよく観てました。

松木(以下、松):え! 僕も父の影響で『頭文字D』読んでて、一番好きな漫画です!

:そうなんですね! うちの父はハチロク乗ってました(笑)

:う、羨ましい…

――思わぬ共通点が発覚したところで、高田監督と川後さんに『ブクロキックス』を読んだ感想をいだだけますでしょうか?

高田(以下、高):最初は、サッカー漫画っぽくないなと思いました。でも、そこが面白いなと。新宿とか池袋とか、知ってるところが出てくるし。視覚障がいを持っていて整体をやっている選手とか、キャバクラで働いている女の子がガイドをやるとか、キャラクター設定もすごく面白くて。ジヘみたいなガイドがいたら絶対人気出ると思う(笑)

(笑)

:社会生活の中で、ブラサカを通して、いろんな立ち位置の人が繋がっていく。結果的に僕らブラサカ協会のコンセプトである「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会の実現」っていうのが、この作品の中にあるなと思いました。逆に訊きたいんですが、松木先生はなぜブラインドサッカーを描こうと思ったんでしょうか?

:もともと僕は少年漫画志望で、サッカーをやっていたのでサッカー漫画を描こうと思っていたんです。少年漫画だと必殺技が必要かなと思っていて、どんな技にしようか考えていた時に、さっきも言った通り僕は『頭文字D』が大好きなんですけど、拓海の「ブラインドアタック」が頭に浮かんで、なんとなく「ブラインド」と「サッカー」で検索してみたんです。そこで初めて「ブラインドサッカー」というものを知って、「なんだこのスポーツは!?」と思って、速攻次の日体験会に行ってみたんです。そしたらすごく奥が深くて面白くて、そこで「ブラインドサッカー」を題材にした漫画を描こうかなと思いました。昔池袋に住んでいたので、池袋を舞台にして。

:私は、ただのサッカー漫画じゃないっていうのが、女性にも読みやすいと思いました。今まであまりスポーツ系の漫画は読んでいなかったんですけど、この漫画は、すごくキャラクターがキャッチーなので、とても読みやすいですし、読んでいくとブラインドサッカーのルールもスッと頭に入ってくる。男女ともに好かれそうな内容だと思いました。

撮影:柏原力

――好きなキャクターはいますか?

:千洋君ですね。久しぶりに本当に「めちゃくちゃタイプだな」って思ったんですよ!

:キュンキュンした?

:キュンキュンしました(笑) 私が知ってるスポーツ漫画の主人公って熱血系の、暑苦しいタイプが多かったんですけど、女の子って千洋君みたいなタイプが好きだから、最初っから「あ、もう推しだな」って思って読んでました。

:ありがとうございます!嬉しいです(笑)

:ジヘちゃんもすごくカワイくて、でも素朴で。千洋くんというイケメンに対して、ちょうどいい感じというか(笑)。ジヘちゃんには憧れます。

:キャラは、基本知り合いがモデルで、ちょっと誇張してる感じです。たとえばハルカなんかは、昔からの親友がモデルで。そいつは、女子からはだらしない奴っていう評価で人気はないんですけど、実は誰に対してもフラットで優しい奴で。ちょっと今いろいろあって連絡取れなんですけど‥笑。

川後陽菜は昨年10月、タイで行われたアジア選手権に応援に駆け付けた


――3人が考える、ブラインドサッカーの魅力とはなんでしょうか?

:私は知人からブラサカの映像を見せてもらって、「これ見てみたいです」ってお願いして試合を観に行ったのがブラサカとの出会いで。その前に体験会に行って、実際にアイマスクをしてやってみたら、全然動けない! ものすごく難しくて! 気づいたら逆方向進んでたりとか(笑) その体験をしてから試合を観たので、余計に選手たちのすごさがわかって。「見えてるでしょ!」としか思えないプレーに心をつかまれて、そこからブラサカにハマりました。

:僕も体験会でアイマスクしたときは、準備体操すら難しかったです‥。

:試合を観戦してると、サッカーよりも激しいぶつかり合いを怖がらずに突き進んでいく姿がカッコイイなと思います。あとは応援の仕方ですね。声を出さずに応援するんですけど、声出してないのに、応援してる人達の熱を感じるんですよ! それで点入ったらみんなで声上げて喜んで、その一体感がいいなって思います。

:サッカーって、うまくいかないと辞めちゃうんですよね。つまんないから。僕も下手くそでうまくいかなくて嫌んなっちゃって。でもキーパーやってみたら、たまたま人よりうまくできたから続けられて。(※高田監督は高校時代GKとして活躍。第9回全国クラブ選手権で3位。)ところがブラサカの選手たちは、どんなに失敗しても、常に前向きに楽しく練習をするし、試合でどんなに大差で負けても投げ出す人もいないし、自分たちのレベルで競技に一生懸命なのがものすごく伝わってくるんです。
「サッカーはミスのスポーツだ」などと言われますが、ブラサカでは、普通のサッカーよりミスの発生率が極めて高い。ミスがあるのが前提で戦略を組むんです。だから失敗しても誰も責めない。それが結果的に、選手たちが常にポジティブにプレーするのに結びついているのかもしれない。楽しそうにプレーする様子を見てると、これがサッカーの原点だと思わされますね。僕は日本代表の監督業以外にも、プロアスリートのエージェントとしての仕事や最新のコーチングの情報を得るために国内にとどまらず、スペインやイタリアやドイツなどにも行く機会がありましたが、そこにもなかったものが、ブラインドサッカーにはあった。だからお客さんとして試合を観てると、どっちのチームも応援したくなります(笑)

:なるほど‥。

:監督目線で言うと、代表には40代の選手もいるんですけど、やればやるほどうまくなるんですよ。この4年間で大きく成長したブラジル出身の佐々木ロベルト泉という選手がいますが、彼は5月に42歳になりました。さらに同じく成長著しい田中章仁や2002年から日本代表で活躍を続ける黒田智成もみんな1978年生まれです。ロベルトや田中などは4年前は本当にボールも止まらないし、キックもどこに行くかわからない感じでしたが、彼らが「うまくなりたい」という気持ちを持ち続けてくれたおかげで、今では相手が誰であろうが抜きに行くまで成長した。試合中の走行距離も最高記録を更新して体力的にも成長しています。妥協せずにやれば、やるほどうまくなる。だから、カズ(三浦知良)さんぐらいの年齢になっても代表選手として誰かやってくれないかな、と考えられる、まさに生涯スポーツでもあるんです。

昨年7月、岩手県遠野市で行われたブラジル代表との練習試合で黒田智成の背中に書いて指示を送る高田監督

:高田監督がボードで説明している内容を、GKやマネージャーの方が選手の背中に回って、背中に書いて説明している姿が印象的でした。

:試合中の指示は、戦術ボードの代わりに背中に指で描いて伝えるんですけど、彼らが見えている世界って、僕らが観ている世界より立体感があるような気がして。僕らは2次元で伝えてるのに、彼らには立体的に3次元で見えてるんじゃないかって思うときがあって。プレーを見ていても、「なんであそこで浮き球のパス出せたんだろう」とか、僕らには見えない部分を感じ取れているとしか思えないプレーがあるんです。こんなことができるんだと驚かされて、限界を決めてるのは見えている僕らなんだと思わされます。やればやるほど成長できるし、人間ってこんなすごいんだと思わされる。それがブラインドサッカーの魅力だと思います。

:『ブクロキックス』では、今のところ視覚障がい者は小山田しか出てきていないんですね。なぜそうしているかというと、ブラインドサッカーは、晴眼者と視覚障がい者が一緒になって平等に楽しめるスポーツだと思っているんです。だから普通の人も巻き込めるように、こういう作りにしていて。障がい者スポーツというくくりよりも、もっと違う枠でいろんな人たちが集まってプレーできるようになるといいなーと思っています。だから単行本読んでくれた友達が、「ブラサカやってみたい!」って言ってくれたときは、すごい嬉しかった。

:強いチーム、強い人が絶対に勝つとは限らないですから。実際、身長160㎝ぐらいの日本代表選手が2m近い外国人の選手にバンと激しく体を当ててボールを奪い返すこともできます。僕らはよく選手たちに「もっと(相手に)強く行け」なんて指示を選手に出しますが、僕らが実際にやれるか、といったら怖くて腰が引けちゃって絶対にいけませんよ。
 さらに、ブラインドサッカーはフィールドプレー3人、晴眼者のGK1人を加えて、4人でチームを構成しますが、サイドラインとしてあるサイドフェンス、「壁」を使うこともできる。壁に当ててパスしたり、ボールを止めることもできるので、壁をうまく使えれば10人ぐらいいるのと同じ戦い方も可能ですよ。

昨年8月、気温35度の猛暑の中での練習後。当時41歳の佐々木ロベルト泉(左)は笑顔を見せる余裕


「ブラサカはミスがあるのが前提だから、失敗しても誰も責めない」(高田)

――そうしますと、コーチングする側も普通のサッカーとは全然違う戦術、戦略を考えながら選手に指導していくのでしょうか?

:先ほど申し上げた「壁」をつかえる部分はサッカーやフットサルにない要素ですが、戦い方の原理原則は普通のサッカーが基本です。世界のトップのトレンド、11対11でやっている部分をどう切り取ったらブラインドサッカーの4対4に落とし込めるかを優秀なコーチたちとディスカッションしながらやっています。それをピッチで表現するためにフィジカルを強くしたり、テクニカルをアップする方法をコーチたちと一緒に考えています。

:サッカーでは試合後に振り返りのために動画を見るとか聞きますけど、ブラインドサッカーの選手たちはどうやって反省をするんですか?

:そこもサッカーと同じですよ。先ほど松木先生がおっしゃたように、撮影映像を見せながら背中で振り返りをやるんです。ブラインドの選手が並んだ後ろの列に晴眼者が並んでね。たとえば映像を見せながら、「今の場面はロベルトがフォローに行くのが遅れたね」とか話すと、それを見た後ろの列の晴眼者が、ブラインドの選手たちの背中に書いて、本来いるべき位置と、実際にいた位置関係を指で示す。でも選手の方から「監督が『右』と『左』を言い間違えたから遅れたんです」と言われることもありますよ(笑)。
 特にブラインドの選手たちは音に対する感覚が敏感なので、プレー中の声とか、僕らの指示の声なども流すと、彼らはもう一度、追体験することができる。そこにサッカーとブラインドサッカーの区別はありませんし、私たちも特別視せずに指導しています。

今後も日本代表のエース格として期待される川村怜

――川後さんは注目している選手などいらっしゃいますか?

:初めて見たときに感動したのは、やっぱり川村怜選手ですかね。突き進む姿、恐れを感じないというかどんどん前に行く感じがすごいカッコいいなと。あと昨年7月に日本選手権を観に行ったときに当時16歳の園部優月選手がゴールを決める姿がかっこよかったです。
 その試合で7ゴールを決めた女子日本代表の菊島宙選手もすごすぎて……。バンバン一人でばーっと走って決めた姿がカッコよすぎて。見ていて面白かったし、(菊島選手は)見えているんじゃないか、とこちらが思ってしまうぐらい衝撃的でした。

――最後になりますが、ヤンマガ、ゲキサカ読者に向けてメッセージをお願いします。

:ブラサカのカッコいい部分と、泥臭い部分どちらも明確に描かれていて、サッカーを見るセンスがいいなと思いました。そのうえで、サッカー以外の人間ドラマも面白い。ネタはいくらでもあるので、是非この先も長く続いてほしいと思います。

:ブラインドサッカーを知らなくても楽しめる漫画だと思います。とにかく主人公がキュンとするというか(笑)カッコいいし、キャラクターたちも個性的だけど、「こういう人いるよね」って感じで全員愛せます。この対談をきっかけに、より多くの人に知ってもらえたら私も嬉しいです。


『ブクロキックス』はヤングマガジンで絶賛連載中。
単行本は1巻発売中。2巻は9月に発売予定
▼「ブクロキックス」の第1話を読む!!

――舞台は東京。ブラインドサッカーチーム「玉帝新宿」に勝てば賞金1千万という噂が東京を駆け巡り、にかわにブラインドサッカーが盛り上がりを見せる。その頃、少し離れた池袋で、ブラサカチームのメンバー探しをする韓国人の女の子・ジヘ。ある日、彼女が勤務するキャバクラに、盲目の青年・小山田がやってくる。ブラインドサッカー未経験ながら、数合わせのため半ば強引にチームに入れられる小山田。しかし、この男、実は……。

3名のサイン入り単行本1巻を3名様にプレゼントします。

応募の宛先は、
〒112-8001東京都文京区音羽2-12-21 
講談社ヤングマガジン編集部
「『ブクロキックス』サイン本プレゼント:係
まで。
〆切:8/17(月)当日消印有効 
発表は発送をもって代えさせていただきます。

撮影:柏原力

◆高田敏志(たかだ・さとし)…現ブラインドサッカー日本代表監督。2013年よりブラインドサッカー日本代表のGKコーチに就任し、2015年11月から現職。
公式twitter:@Allenatore2011


◆川後陽菜(かわご・ひな)…乃木坂46一期生メンバー。2018年にグループを卒業後は、フリーでマルチに活躍。2019年に「ブラサカ応援メンバー」第1号に就任した。
公式twitter:@kawagohina3


●ブラサカ/障がい者サッカー特集ページ
●日本障がい者サッカー連盟(JIFF)のページはこちら

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