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[和倉ユース]“ベース”の精神力と鉄壁の守りを表現。青森山田が「1-0で勝つ」強いチームへ

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青森山田高が3-0で快勝。U-17日本代表MF松木玖生らの気迫の動きが、チーム全体を奮い立たせた

[8.4 和倉ユース大会準決勝 青森山田高 3-0 日大藤沢高 和倉多目的G(Aコート)]

 第8回和倉ユースサッカー大会2020は4日午後、準決勝を行い、青森山田高(青森)が日大藤沢高(神奈川)に3-0で快勝。青森山田は5日の決勝で履正社高(大阪)と対戦する。

「王者というのは、1-0で勝ち上がれるチーム。だからこそ、失点(ゼロ)にはこだわらないといけない」。青森山田の黒田剛監督は無失点へのこだわりについて、そう説明する。国見高(長崎)や市立船橋高(千葉)といった選手権で勝ち続けたチームには鉄壁の守り、1点で勝ち切るような揺るぎない強さがあった。現代で「1-0」を最も体現できるチーム。それが青森山田だろう。

 今大会の予選リーグは、新たに出場機会を得た選手もいる中でPKやFKを与え、失点をしてしまっていた。だが、昨年のプレミアリーグ王者・青森山田は大会を勝ち抜く中でゼロへのこだわりを共有し、シュートを打たせない、無駄なファウルを与えないことも徹底。この日は午前中の準々決勝で東山高(京都)を1-0で破ると、準決勝でも打倒・青森山田の野心を持って臨んできていた日大藤沢をねじ伏せた。

 序盤から相手を押し込み、CKやロングスローなどから決定機を作る。先制点を奪うことはできなかったが、黒田監督から「(これまでの試合よりも)あと10m前に出ること」を要求されていたU-17日本代表MF松木玖生(2年)やMF安斎颯馬(3年)が連戦の中で自分たちを奮い立たせながら前へ出て、日大藤沢にほとんど攻撃機会を与えない。

 走り続ける前線の選手たちの背中を見て、U-18日本代表CB藤原優大主将(3年、浦和内定)は「後ろがやらないといけないと前線の選手に気付かされました」。最終ラインで圧倒的な高さを見せる藤原やCB三輪椋平(2年)、右SB内田陽介(3年)が、隙を見せずに1次攻撃の段階で相手の前線へのボールを弾き返していた。

 日大藤沢もCB宮川歩己主将(3年)が抜群の高さを発揮。責任感強い主将に牽引されるかのように各選手が気持ちのこもった戦いを見せる。超大型FW鈴木輪太朗イブラヒーム(3年)が不在の中、MF猪狩祐真(3年)のアイディアあるボールコントロールやMF斉藤夏(3年)の右足FKなどで青森山田の守りを何とかこじ開けようとする。

 だが、その攻撃を封じた青森山田は前半21分に安斎の左CKを左SBタビナス・ポール(3年)が頭で叩き、最後はこぼれ球をFW名須川真光(2年)が右足で先制点。さらに後半2分には、安斎の左CKが相手DFのオウンゴールを誘って2-0とした。

 その後も運動量を落とさずに走る松木やタビナスのクロスからチャンスを作ったが、この試合は“1点で十分”というような完璧な内容。個々が気持ちを全面に出していた青森山田は、これまでの試合よりも半歩、一歩足を動かして相手をはめ込み、そのパスを引っ掛ける。日大藤沢は宮川を中心に失点を最小限に食い止め、ボールを繋ぎながら前に出ようとするが、青森山田の気迫のディフェンスの前にパスコースを見い出せず、前進することができなかった。

 青森山田は後半16分、タビナスの左クロスを中央の名須川が落とし、最後はMF藤森颯太(2年)が左足でゴール。指揮官が「これが山田のベース。これ以外で何が出せるか」と頷いていたように、松木や安斎を筆頭に連戦でも精神的な強さを見せつけ、その上で個々、チームとして特長を出していた青森山田が3-0で快勝した。

 藤原は「(1-0や2-0勝つのが)本来の青森山田。それができなくて2-1とか3-1という結果になっていました。前線が点を取ってくれているのにもかかわらず、失点しているのは自分の責任だと思っているので『絶対に失点できないな』と強く思いましたし、それをバックラインやGKに言いながら、また自分にも言い聞かせていました」と説明する。それぞれが責任感を強め、よりシュートを打たせない、セットプレーを与えない守りを実現。「1-0で勝つ」強いチームにまた近づいていることを印象づけた。

 今大会は各チームが「山田と戦いたい」「山田を倒したい」と向かって来る中でそれをねじ伏せている。藤原は「僕が逆の立場だったら、逆に『山田を食いたい』と思いますし、サッカー選手をやっている以上、それが当然だと思います。それを跳ね返したり、返り討ちにするくらいの王者の風格、力を見せていかないといけない。全力でぶつかってくる相手をゼロに抑えることは自分たちにとって自信になりますし、自分たちもバチバチやれると思うので凄く楽しいです」。8月1日に開幕した和倉ユース大会の4日間で進化を遂げている青森山田。最終日となる5日の決勝でも貪欲に成長し、無失点で優勝して大会を終える。

後半16分、青森山田高MF藤森颯太(2年)が左足で3点目のゴール


(取材・文 吉田太郎)
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