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尚志に3発逆転勝ち!“強敵との試合に飢えていた”仙台育英がスーパープリンス東北開幕戦制す!

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後半20分、仙台育英高の10番FW吉田健太が執念のゴール

[8.29 スーパープリンスリーグ東北第1節 仙台育英高 3-1 尚志高 仙台育英学園多賀城キャンパス]
 
 新型コロナウイルスの影響により、プレミア・プリンス合同リーグとなった「高円宮杯 JFA U-18サッカースーパープリンスリーグ 2020」が29日に開幕。スーパープリンスリーグ東北グループB第1節で仙台育英高(宮城)と尚志高(福島)が対戦し、仙台育英がMF島野怜(2年)の同点弾と10番FW吉田健太(3年)の2ゴールによって3-1で逆転勝ちした。

 昨年、プレミアリーグEASTで戦っていた尚志とプリンスリーグ東北4位の仙台育英。尚志は昨年度のインターハイ3位で、仙台育英は同選手権で8強と、ともに全国大会で上位進出も果たしている2校の戦いは、ホームの仙台育英が制した。

 前半は尚志がよりボールを握る展開。前線から下りて攻撃の組み立てに参加するFW黒田陸斗(3年)やMF菅野稜斗(3年)、左SB五十嵐聖己(3年)らが落ち着いて相手のプレッシャーを剥がしてボールを前進させる。そして、アーリークロスや相手の背後への配球で仙台育英DFを脅かした。

 一方の仙台育英も高い位置からのプレッシングとアタッカー陣の強気の仕掛けで対抗。MF豊倉博斗主将(3年)がドリブルで相手のファウルを誘っていたほか、11分には島野の強烈な左足ミドルが枠を捉える。また、20分にはFW佐藤遼(2年)のキープから吉田が右足を振り抜き、23分には相手ミスパスからの速攻で抜け出した吉田が決定機を迎える。

 ともにミスや守備対応のバタバタしたシーンがある中、28分には尚志FW黒田が飛び出した相手GKの頭上を越すロングシュート。だが、懸命に戻った仙台育英左SB染野優輝(2年)がゴールラインギリギリでクリアするビッグプレーもあった。その直後に尚志が先制点を奪う。セカンドボールを拾い、前を向いた黒田が相手DFラインのギャップを通すスルーパス。これで抜け出した菅野がGKとの1対1から左足シュートを流し込み、1-0とした。

 仙台育英は、33分に早くも“切り札”MF明石海月(2年)を投入。その直後、明石がファーストタッチとなった左CKを中央へ入れると、島野が右足アウトサイドで同点ゴールを蹴り込んだ。さらに仙台育英は前半アディショナルタイム、島野が跳ね返したヘッドを起点に佐藤が持ち込んで右足シュート。このこぼれ球を吉田が右足で決めて逆転した。

 前半終了間際から雷鳴が響き、ハーフタイムは25分間延長(計40分間)。尚志は後半開始から、ボールにあまり絡めなかったFW阿部要門(3年、山形内定)を含めて2人を入れ替える。だが、尚志はパスワークが単調。ハーフタイムが長かったこともあってか運動量の落ちない仙台育英の鋭い寄せの前に、思うようにボールを繋ぐことができない。

 逆にCB安藤豪(3年)がセットプレーからヘディングシュートを連発するなど勢いのあった仙台育英は20分に追加点を奪う。ショートカウンターから佐藤がドリブルで前進してスルーパス。抜け出した吉田がタックルを受けながらも強引に右足を振り抜いてゴールを破った。

 尚志はすぐに4バックから3バックへ変えて反撃するが、ロングボールが増え、それを島野や相手DF陣に跳ね返されてしまう。また、城福敬監督が「食い下がってくれたら良いと思ったら、思いの外やってくれました」というように、仙台育英のプレッシングは終盤もなかなか緩まない。尚志は41分に交代出場FW齋藤大輝(3年)がPKを獲得するも、黒田の右足シュートはクロスバーをヒット。U-17日本代表DFチェイス・アンリ(2年)を欠いた尚志は、劣勢を跳ね返すようなパワーもなかった。

 逆転勝ちの仙台育英は、学校の新型コロナウイルス感染予防対策として、関東に滞在した選手が仙台に戻った後、2週間隔離されてからチームへ復帰する規則なのだという。この日も関東の大学の練習会に参加した主力MF渡邊弘和(3年)らが学校の“ルール”で欠場。対外試合も県外から迎え入れることはできるものの、県外遠征は禁じられていたため、強豪チームとの練習試合はほとんどできないままこの“開幕戦”を迎えていた。

 だが、吉田が「とりあえず強いチームと試合をしたかった。フラストレーションの溜まっている中で練習していて、溜まっていた分をここから爆発させていきたい」と説明したように、選手たちはサッカーができる喜びをピッチで表現して見せた。
 
 思うように試合ができない時期に磨いた武器、「自粛期間も、その後も走りの面ではどの高校よりもやってきたと思うので自分たちの強みだと思います」(豊倉)という力も発揮しての勝利。城福監督は「とにかくプリンスができるところだけで嬉しかった」と微笑んでいたが、待望していた強豪との試合、そして勝利は今後への弾みとなりそうだ。

 指揮官はこれまでの試合でホワイトボードに書き続けていた「とにかく勝とう」という文字を封印。スーパープリンスリーグ東北では「選手を確かめること」に重きを置く考えだ。選手たちの目標はその先、選手権での先輩超えにある。吉田、佐藤の強力2トップをはじめ、中盤から前は選手権8強経験者が多数。豊倉は「今年は守備だけでなく、攻撃の面でも見て欲しいなと思います。去年ベスト8だったので、それ以上を目標に、それを達成できるようにやっていきたいと思っています」。この程、学校から日帰りでの県外遠征の許可が下り、次節(9月5日)は青森山田高セカンドとのアウェー戦。強敵との対戦を楽しみながら、今できることをぶつけて、また先に繋がる試合をする。

(取材・文 吉田太郎)
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