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“プレミア基準”で戦う王者・青森山田、スーパープリンス東北初戦で脅威の13発も1失点を猛省

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後半10分、青森山田高は2年生10番MF松木玖生が左足FKを決めてハットトリック達成

[8.30 スーパープリンスリーグ東北第1節 青森山田高 13-1 秋田U-18 青森山田高G] 

 王者は“青森山田らしさ”を出して脅威の13発、そして“らしさ”を出せずに1失点――。30日、高円宮杯 JFA U‐18 サッカースーパープリンスリーグ2020 東北Aブロック第1節で昨年のプレミアリーグ王者・青森山田高(青森)とブラウブリッツ秋田U-18(秋田)が対戦。U-17日本代表MF松木玖生(2年)とMF安斎颯馬(3年)がともにハットトリックを達成するなど、青森山田が13-1で大勝した。

 青森山田は昨年、高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグで2度目の優勝を果たした。そのプレミア王者は今年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で創設された限定リーグ、スーパープリンスリーグ東北を戦う。

 その初戦の対戦相手は、東北2種委員会の推薦を受けて出場している秋田U-18(19年秋田県1部優勝)。松木が「立ち上がりは圧倒的に差を見せつけたいなと思っていました。プリンスにもブラウブリッツは参加していないですし、プレミア王者として圧倒的な差を見せた立ち上がりだったと思います」と振り返ったように、立ち上がりから青森山田が攻守両面で秋田U-18を飲み込む。

 試合開始40秒、MF仙石大弥(3年)の右クロスが相手オウンゴールを誘うと、10分、11分には松木とFW名須川真光(2年)が連続ゴール。さらに14分にも右クロスから名須川の放ったシュートのこぼれ球を松木が押し込んみ、わずか14分間で4得点を叩き出した。

 青森山田のハイプレスと力強い攻撃を目の当たりにした秋田U-18だが、DFラインからMF高根健輔(3年)らを経由しながら丁寧にボールを繋ぐことにチャレンジ。FW佐々木匠太(3年)やFW鐙彗隼(2年)が前を向き、MF大友侑也(1年)がクロスへ持ち込むシーンや10番MF福島大地(2年)が無回転FKを狙うシーンも作り出す。だが、守備範囲の広さやタックルの巧さを活かして相手の攻撃の芽を摘み続けるMF宇野禅斗(2年)や別格の存在感を放つU-18日本代表CB藤原優大主将(3年、浦和内定)ら青森山田の前に、ほとんど攻め切ることができなかった。

 青森山田は35分に右SB内田陽介(3年)のクロスに長い距離を走って飛び込んだMF小原由敬(2年)が合わせて5点目。直後には仙石の右クロスを安斎が合わせ、40分にも左SBタビナス・ポール・ビスマルク(3年)の折り返しを安斎が決めて7-0とする。そして前半アディショナルタイム、松木の右CKをCB秋元琉星(3年)が頭でねじ込み、8-0で前半を折り返した。

 ハーフタイム、秋田U-18は元秋田MFの熊林親吾監督が、選手たちに前を向かせる。この試合から必ず学び、諦めずに1点、2点を奪い返すことを確認して後半のピッチに立った。だが、青森山田は後半4分、松木の右CKを藤原が頭でねじ込むと、10分には右中間で松木がFKを獲得。これを松木が左足でファーサイドのゴールネットへと突き刺して2ケタ得点の大台に乗せた。

 青森山田の黒田剛監督は「『プリンスリーグ東北だから通用したね』というプレーで習慣化されたくない。『プレミアでも今のはめちゃくちゃ通用するよ』というプレーを随所でやっていく。それを習慣化しないと、そういう(プレミアリーグクラスの)チームや選手権で出た時に悪い習慣しか出てこなくなる。だから、相手がどうであれ、青森山田が目指しているサッカーを90分間抜くことなくやり切ること」話していた。プリンスリーグのレベルに合わせるのではなく、プレミアリーグの質、量を意識して戦うこと。それをウォーミングアップの雰囲気作りから各選手が実行していた青森山田は、強雨の難しいコンディションでも、“青森山田らしく”試合を行い、大差をつけた。

 それでも、完璧だった訳ではない。安斎、秋元、名須川が加点して13―0で迎えた後半39分、CBベベニョン日高オギュステュ祐登(3年)のヘディングシュートがゴールラインを越えたかどうかの位置で処理されると、カウンターへの対応が乱れてしまう。秋田U-18の俊足MF安藤功記(1年)にボールを奪い返されて独走を許すと、カバーした藤原のタックルがその足を引っ掛けてファウル。PKを与え、安藤に決められてしまった。

 ミスでボールを奪われたとは言え、GK韮澤廉(3年)と藤原でシュートコースを限定していただけに、慌ててタックルする必要はなかったかもしれない。藤原はこの1点をとても悔しがっていたが、“青森山田らしく”無失点で終えることができなかった。

 藤原は「監督も『13-1よりも5-0の方が良い』と言っていました。あの1点は単純にいらなかったし、守りきれないといけない。無失点優勝、圧倒して勝つというのがみんな言わなくても共通理解していましたし、目標でした。失点してしまったことは頂けないと思います。反省点として絶対に忘れないように次に向かっていきたい」と誓った。

 敵陣の“ポケット”への侵入など攻撃練習の成果を発揮して13得点した一方、引き締めの材料も得た青森山田。残り4試合と順位決定戦は、この日達成できなかった「絶対に失点をしない」という“青森山田らしさ”を表現しながら勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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