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圧巻の速さとめげないメンタリティー。Jも関心寄せる“首都のスピードスター”東海大高輪台FW横山歩夢

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首都・東京の“スピードスター”東海大高輪台高FW横山歩夢は父と同じプロ入りを勝ち取るか

 Jクラブへの内定を勝ち取る高校生が増えてきている中、東京都にその候補の“スピードスター”がいる。昨年、東京都選抜の一員として国体少年男子の部に出場し、圧倒的なスピードを発揮。また関東トレセンリーグで年間MVPを受賞し、選手権東京都予選でもそのスピードと馬力のある動きによって東海大高輪台高の決勝進出に貢献したFW横山歩夢(3年)だ

 その魅力は、爆発的な速さと左右両足から放つパワーショット、そしてめげないメンタリティーだ。昨年の時点で50m走5秒台だったスピードは現在、「前よりは速くなった感覚があります」。9月の練習試合では仕掛けた際に全く止まらず、左右両足から強烈な一撃をゴールへ撃ち込んでいた。また、サイドを縦へ切れ込んでから、スピードのあるクロスも連発。注目選手としての実力を見せつけていた。

 横山はこの1年でスケールアップできた点について、「右サイドで持った時の1対1や、1対2の状況というのは勝つ自信しかないです。去年は縦へ結構行っていたんですけれども、今年はカットインや左足の練習もしていますし、より縦の突破が活きるようになったかなと思います。仕掛けたらクロスやシュートまで行ける自信があるので、そこは去年よりもスケールアップと言うか、レベルアップしているかなと思います」と手応えを口にした。

 指導する川島純一監督は「突破力と両足のシュートも持っている。もうちょっと(高いレベルで)揉まれて動き出しとかタイミングを極めたら、手がつけられなくなると思う」とさらなる成長を求める。FCトッカーノに所属していた中学1、2年時は学年チームでもサブ。3年生になってようやく先発する回数を増やすことができたという横山は、高校1年時の夏に台頭した。

「中学校の時にはなかったスピードがついた感じがして、それでスピードを活かすようなプレーを。高校ではプレースタイルが変わったと思います」と横山。それまでは足元でボールを受けるプレーが多く、裏抜けをすることもほとんどなかったという。だが、際立つような速さを身に着けたFWは、中学時代から技術面に取り組んできた成果も発揮。トップスピードでボールをコントロールするなど、その技術力によってスピードをより際立たせている。

 加えて、川島監督が高く評価するのは、失敗してもめげないメンタリティーだ。確かに、細かな技術は改善が必要。国体でもチームメートのFC東京U-18勢に比べてミスが目立っていたものの、臆することなく何度も何度も仕掛けて突破し、決定機を作り出していた。横山は「中学校1、2年生の時とか本当に試合に絡めなかった時期とかあるので、そうなった時の気持ちとかも分かっていますし、メンタルは強くなったと思います」。試合に出れなくても努力を続けること。その頑張りの大切さを知っているからこそ、失敗しても、出番が少なくても継続することができる。

 現在はサイドに加えてFWでもプレー。ボールの受け方や動き出しの部分もまだまだだ。本人は「ハイレベルになっていかないと、この先やっていけない」と自分に矢印を向けて取り組みを続けている。その課題を一つ一つクリアし、選手権ではより強力なアタッカーとしてライバルたちの脅威になるだろう。

 横山が強いメンタリティーを持っているからこそ、川島監督は「彼は壁にぶち当たって欲しい。それを乗り越えて行くから。Jリーグに入ったら壁を乗り越えて行くと思う」とプロ入りしてより高い壁を越えて行くことを期待する。本人もプロ志望。J1やJ2のクラブが関心を寄せているが、新型コロナウイルスの影響で練習参加できていないこともあり、進路はまだ決まっていない。首都・東京のスピードスターにとって、この秋は毎日の練習、そして全ての試合が重要だ。

 横山の父・博敏さんは鹿児島実高(鹿児島)で元日本代表FW城彰二氏と同級生。大阪商業大を経て市原(現千葉)入りし、横浜FC、甲府でも活躍している元Jリーガーだ。将来の目標について、「一つの目標はプロですけれども、プロになるからには誰もが目指しているA代表に食い込まないといけないと思いますし、国を代表するような選手にならなければいけないと思っています」と宣言。そのためにも、父が経験したプロの世界へ高校から飛び込み、進化を加速させる。

 選手権は個人のアピールも重要だが、それ以上にチームメートととも東京制覇することを目指している。「もっと決定力という部分では上げないといけないですし、スピードで仕掛けてクロスの質や最後のフィニッシュの精度はもっともっと上げていかないと上に行けないと思う。選手権に向けて克服したいですね。(そして選手権では)チームの中に自分がいるので、まずはチームのために得点やアシストという結果を残したいと思います」。例年通りに春から公式戦が行われていれば、より注目されていたかもしれない。だが、「それはみんな同じなので」というスピードスターは、ブレない姿勢で練習・試合に臨み、チームと個人の目標を達成する。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2020

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