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独自の背番号フォントは今季で見納め…Jリーグが経緯説明「さまざまな葛藤があった」

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ユニークな背番号フォントは今季で見納めとなる

 Jリーグは15日、第8回理事会を行い、来季からユニフォームにプリントする選手背番号・選手名のフォントを全クラブで統一することを決議した。プレミアリーグやラ・リーガなど欧州各国リーグではすでに導入されているが、国内では初の試み。理事会終了後、村井満チェアマンらが経緯を説明した。

 村井チェアマンによると、このプロジェクトが動き始めたのは約2年前。2017年にDAZNで公式戦が配信されるようになって以降、テレビだけでなく比較的小画面のスマートフォン・タブレットの視聴者が大幅に拡大するという「サッカーの環境変化が起きてきた」のがきっかけだという。

 問題は小画面で見る際の「視認性」にあった。村井チェアマンは「サッカーが好きになる、もしくはクラブが好きになる。その前にはどなたか選手のファンになる。またその前にはあの良いプレーをした選手は何番?誰だっけ?と個人を認識するところからサッカーの裾野が広がっていく。そう考えた時に視認性が低いことが懸念されていた」と振り返る。

 Jリーグの集計によると2013年から18年、各クラブの背番号や選手名に関する視認性不良の報告はのべ45件。おおむね年4〜5件のペースで発生していた。またイングランドの視察・事例調査を通じて「ぱっと見て誰かがわかる」だけでなく、「オウンドメディアでも揃えられているので、プレミアリーグのものだとわかる」こともブランディング面で優位となっていることが分かったという。

「商品サービスの改善、改良は消費者のライフスタイルの変化に合わせて適用していくもの」。そう見解を示した村井チェアマンは「昔、ビールは商店街の酒屋さんがビールケースを軒先に運んで、割烹着を来た女性が受け取るのがライフスタイルの象徴的なシーンだった。いまは女性が社会進出して女性が冷蔵庫を開けて缶ビールを楽しむというライフスタイルがあり、それが商品開発を後押しした。サッカーも例外ではない」と力説した。

 Jリーグは同日、公式サイトを通じてフォント例を発表した。フォントのデザインはアシックス、資生堂、カールスバーグ、デンマーク政府などを担当してきた北欧最大級のデザイン会社「Kontrapunkt(コントラプンクト)」は担当。書体名称は「J.LEAGUE KICK(Jリーグキック)」に決まった。

 カラーリングは「さまざまな色覚の特徴を持っている人にも識別できるデザイン設計をしたい」というユニバーサルデザインに基づく設計思想のもと、さまざまなユニフォームに適合するよう現状のチームカラーの中間色となる赤、青、黒、黄、白の5色を設定。また背番号の書体は「カーブキック」をイメージした形状で、こちらも視認しやすいよう文字端をオープンにした。

 導入にあたっては多様な色覚に対応できるシミュレーションを実施した他、今後異なるユニフォームに適応できるようコントラスト比などで検証できるよう準備。またレフェリーやCGの協力のもと視認テストを行い、ハイスピード状態、朝晩や天候による違い、夕陽による逆光での見え方を確認したという。

 もっとも、Jリーグではジェフユナイテッド千葉のようにJ創設期から一貫して同じフォントを使い続け、一定のブランディングに成功している例もある。また清水エスパルス、東京ヴェルディをはじめ、クラブ全体のコンテンツに新たな書体を導入する取り組みも広がってきた。これまで一般的だったサプライヤー独自のフォントも含め、今後こうした多様性は失われることになる。

 会見に出席した出井宏明事業統括本部長によると、合意形成にあたっては「さまざまな葛藤があった」という。それでも重視したのは「見やすくしていくところ」。出井氏は「長くサポーターをしていただいている方は選手の動きやポジションでわかるようになるが、そこまで見ていない方、ライトな方にとっては少しでもわかりやすい方がいい。最後はその一点でご納得いただいた。さまざまな葛藤を飲み込んでいただきながらチャレンジしようという運びになった」と経緯を語った。

 なお、どの色を使用するかはクラブの任意。また現状では胸番号やユニフォームネーム(背番号上下のアルファベット名)を記していないチームもあるが、こちらも推奨はされるもの導入は任意だという。一方、導入が義務となる試合はJリーグ公式試合のみで、天皇杯やAFCチャンピオンズリーグは対象外。希望すれば公式書体を使用することは可能(AFCはJリーグロゴを外す義務がある)とのことだが、これらの大会ではクラブ独自フォントを使う動きも出てきそうだ。

(取材・文 竹内達也)
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