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チーム最激戦区のポジション争いにも『楽しむ気持ち』で。前橋育英高MF新井悠太が感じる“仲間の輪”

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前橋育英高の切り込み隊長、新井悠太

 最上級生として迎えた今年は、予想外の日々を強いられることになったが、それゆえにチームメイトとの関係もより強固になった実感がある。「コロナの期間で2か月ぐらい自分たちも練習ができなくて、みんなとの“輪”を作る時間が遅くなってしまったんですけど、今ではあの2か月を挽回するどころか、かき消すぐらいの“輪”を作れたんじゃないかなと思っているので、みんなで一緒に最後までやり切りたいですね」。前橋育英高の切り込み隊長。新井悠太(3年)は揺るぎない“仲間の輪”を後ろ盾に、前へ、前へと突き進んでいく。

 2年生だった昨シーズンは夏前からトップチームで出場機会を得ると、高円宮杯プリンスリーグ関東でもスタメン起用されるなど、存在感を増していったものの、肝心の選手権ではベンチ外を味わうなど、1年を通じてコンスタントに活躍することはできなかった。

 本人もそのことは自覚している。「中学生の時から自分は結構浮き沈みがあって、2年の時は良かったけど、3年はダメだったりしたので、高校に入ってそういう所は改善しようと意識していたんですけど、それが高2の時にちょっと練習とかで出てしまったかなというのがあって、今年は自分のメンタリティをコントロールするように心掛けて練習をやってきました」。

 メンタル面での改善を掲げつつ、迎えた今シーズンは複数のポジションにトライ。「監督にいろいろなポジションをやらせてもらいました。サイドバックとか、サイドハーフとか、3-4-3のシャドーだったり。シャドーは結構しっくり来ましたし、サイドバックもプレーしやすかったですね」。

 それでも、一番やりたいポジションは決まっている。ピッチ中央。チームを攻守両面で支えるボランチだ。山田耕介監督も「ボランチの所からクッと前に行けちゃうんですよね。侵入できるんです。その後の精度がイマイチだけど(笑)」と笑わせながら、「躍動感があるというか、推進力があるというか、ああいうボランチはいいですよね。好きなタイプです」と高評価。プリンス関東第3節の帝京高戦でも、ボランチでスタメン起用されると、同点弾をアシストするスルーパスも繰り出すなど、効果的なプレーを披露していた。

 自らの武器も熟知している。「監督にも推進力は評価してもらっていますけど、それだけじゃ相手に読まれたり、そこで自分の良さが潰されてしまったら終わりなので、その特徴をいかに出せるかという部分では、パスでテンポを作ったりしながら、その中で推進力を出すことは意識しています」。前へと飛び出していけるモビリティは、タレント集団の中でも際立っている。

 だが、今年の前橋育英のボランチは最激戦区。先日ヴィッセル神戸への入団が発表された櫻井辰徳(3年)、キャプテンを務めるレフティの熊倉弘貴(3年)に加え、帝京戦でも途中出場ながら体の強さが目立ったルーキーの根津元輝(1年)も台頭。2つの定位置に実力者たちがひしめき合っている。

「だからこそ、自分はあまりポジション争いを意識しないようにしています。自分はそうやって意識して窮屈になってしまうと、自分のプレーをあまり出せなくなるタイプだと思うので、まずは“楽しむ気持ち”を一番にやっています。他の選手にライバル意識とかはないですね」。その気負いのなさが、プレーに軽やかさを与えているようにも見える。

 さらに、様々なポジションでプレーしたことが、自身の幅を広げてくれた実感もある。「いくつものポジションをやった経験を生かして、いろいろな指示が出せるようになりましたし、『こういうプレーはできるけど、こういうプレーはできない』とか、いろいろな視点を持ちながら、いろいろな人の気持ちになって、試合をできればいいかなと」。この視点もボランチとして大きな武器になり得るのは、言うまでもない。

 大宮アルディージャU18の柴山昌也(3年)は、小学生時代に在籍していた高崎FC中川のチームメイト。名古屋グランパスU-18の武内翠寿(3年)は、やはり中学の3年間を過ごした前橋FC時代のチームメイト。高いレベルで勝負している、かつての仲間の活躍も刺激になっている。

「昌也とは小学生の頃から一緒にやってきた仲なので、普段から昌也の存在を意識するようにしていますし、翠寿とは結構連絡を取ったりするので、いろいろな試合で翠寿が点を決めると『凄いなあ』と。そういう活躍を聞くと、『自分ももっとやらなきゃな』という刺激は受けますね」。逆に彼らに刺激を与えられるようなステージは、もう目の前だ。

 高校生活最後の選手権。去年のような想いは、もうしたくない。そのためにチームで積み重ねてきたものにも、ここに来て確かな手応えを掴んでいる。「コロナの期間で2か月ぐらい自分たちも練習ができなくて、みんなとの“輪”を作る時間が遅くなってしまったんですけど、今ではあの2か月を挽回するどころか、かき消すぐらいの“輪”を作れたんじゃないかなと思っているので、みんなで一緒に最後までやり切りたいですね」。

 最上級生として迎えた今年は、予想外の日々を強いられることになったが、それゆえにチームメイトとの関係もより強固になった実感がある。前橋育英高の切り込み隊長。頼もしい仲間が、どんな時でもきっと自分を支えてくれる。新井悠太は揺るぎない“仲間の輪”を後ろ盾に、前へ、前へと突き進んでいく。

(取材・文 土屋雅史)
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