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強豪同士による熱く、“泥臭い”戦い。FC東京U-18の猛攻を市立船橋が執念の守りで封じ、0-0ドロー

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市立船橋高FC東京U-18との戦いは0-0ドローに

[9.27 プレミアリーグ関東第3節 市立船橋高 0-0 FC東京U-18 グラスポ]

 27日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2020 関東の第3節で市立船橋高(千葉)とFC東京U-18(東京)が対戦。0-0で引き分けた。

 FC東京U-18は復帰したプレミアの舞台で開幕2連勝。一方の市立船橋は連敗スタートだった。その市立船橋は波多秀吾監督が「(過去2試合で前半に先制し、後半盤石の戦いをしていたFC東京に対し)やらせたくないな、何とか焦らせたいなというところがあって、前半は絶対に失点したくないと守備から入りました」と説明したように、強敵相手に守備意識高く試合をスタートする。

 市立船橋は「前半に関しては、ある程度の狙い通りのところかなというところです」(波多監督)という内容だった。FC東京にボールを支配されていたものの、幾度か前向きにボールを奪い、ラストパスへ持ち込んでいたほか、右の快足WB長田京兵(3年)と左のWB木内拓海(3年)の突破力を活かしてセットプレーを獲得する。そして、36分には、MF八木智哉(3年)の落としからFW平良碧規(2年)が右足を振り抜くなど、相手ゴールを脅かすシーンも作り出した。

 一方、FC東京のMF常盤亨太主将(3年)は「(一般的によく言われるのはユースに比べて)高校サッカーの方が熱いと。でも、試合前に『きょうはオレらの方が熱く、泥臭く行こう』と言った中で守備では良かったと思うんですけれども……」と振り返る。個々の力で上回るFC東京は獅子奮迅の動きを見せる常盤を筆頭に、各選手がハードワークを継続。相手が攻め切る前にボールを奪い取り、波状攻撃を繰り広げた。

 前半12分、ゴール前のこぼれ球に反応したFW青木友佑(3年)が決定的な左足シュート。その後も青木がシュートへ持ち込んでいたほか、左の19年U-17日本代表MF角昂志郎(3年)と右のMF梅原翔琉(3年)が個でもサイドを攻略してゴール前のシーンを作り出す。20分には角がカットインから右足シュートを放ち、44分には梅原がパンチのある左足シュートを打ち込んだ。

 相手にほとんど攻撃機会を与えずボール支配するFC東京は後半も、U-18日本代表CB大森理生(3年、トップチーム昇格内定)が精度の高いサイドチェンジ。また、ボランチの位置から繰り返しPAまで飛び出してくる常盤や、好トラップからゴール前に潜り込もうとするFW野澤零温(2年)の動きなどをアクセントに分厚い攻撃を継続する。

 市立船橋は攻撃時にボールのおさまりどころがなく、また中盤が後ろに引き込まれたため、後半はより押し込まれる展開に。我慢の時間帯が続いたが、DF石田侑資主将(3年)が「1人で無理なら2人とか練習からやっていた」という市立船橋はゴール前、またサイドの局面で人数を掛けて守り、食い下がる。

 波多監督が「きょうはあの3枚が肝になるなと思っていた。最後まで切らさずに守備してくれた」と評したように、中盤の要であるMF佐久間賢飛(3年)と八木、MF岩田夏澄(3年)の中盤3人が献身的に守備を続け、時にDFと3人がかりでボール奪取。エリア内では石田をはじめとしたDF陣が体を張って決定打を打たさない。

 FC東京は後半11分、ゴール前の混戦から青木が抜け出してゴールネットを揺らすがオフサイドの判定。16分に常盤の折り返しを梅原が左足で叩くが枠上に外れてしまう。さらに28分には常盤のインターセプトから角が斜めに切れ込んでスルーパス。これを交代出場FW須藤和希(3年)が左足シュートし、30分には右サイドから崩してファーでフリーの角が狙うが、これは市立船橋WB長田がブロックする。

 FC東京の中村忠監督は「数少ないリーグの中で色々なチームとやれるのはありがたい」とコメントしていたが、この日は守る相手をどうこじ開けるかにチャレンジしていく。各選手が勝利への強い意志を持って攻撃を継続。中央、左右から相手ゴールへ向かい、自然とボールが集まってきていた角がドリブルで穴を開ける。また、40分には常盤の右足シュートが枠を捉えるなど攻め続けたが、「(絶対に取るんだという)執念みたいなところをもう少し出さないと」(常盤)というFC東京は得点を奪うことができない。

 市立船橋は石田やGK細江彦太(3年)を中心に各選手が集中していた。細かなミスや不要なファウルもあったが、その守りは試合終盤も強固。終了間際の素早いサイド攻撃こそ不発に終わったものの、勝ち点1をもぎ取った。

 FC東京の中村監督は選手たちの戦う姿勢などを評価した一方、「コントロール、質、タイミング、シュートも含めてアバウトだと崩しきれない。もっと、そこを上げていかないといけない」と指摘。また、常盤は「今日みたいなゲームを勝ち切る強さがないと優勝には向かって行けないと思っています。また一週間で次の流経(流通経済大柏高)戦に向かって行って、勝ち切る強さとか、勝負強さというところで勝ち点3を確実に稼いで行って、絶対に優勝したいと思っています」と誓った。

 一方、市立船橋の波多監督は「守備で奪うことでまず負荷が上がって、そこからが勝負なんだけれど足が止まってしまったり、ミスというところがたくさんあった」と課題を挙げた。それでも、市船らしく各選手が責任を持ってゴールを守り抜いたことについては、「とにかくそこはずっとやってきていることなので、一定の成果は出ているのかなと思います」と評価していた。

 そして、石田は「やろうとしていたことは無失点で抑えること。セットプレーもFC東京さんは強いので、抑えられたことは自信になっていますね」と納得の表情。間もなく選手権予選が始まるが、それへ向けては「目指しているのは日本一なので、プレミアを通して改善点だったり、『ここ良かったのでやり続けよう』というのが出てくると思うし、きょうも実際に出てきたので積み重ねていきたい」と力を込めた。Jクラブユース、高体連の強豪同士による90分間の熱く、“泥臭い”戦い。新型コロナウイルスの影響でより貴重となっている“プレミア”で得た経験を、両チームは今後に繋げる。

(取材・文 吉田太郎)
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