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コースの狙い方は? 無音プレーとは? 素朴な疑問に、ブラインドサッカーの加藤&川村が答える

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ブラインドサッカー界のトップを走る加藤健人と川村怜(ともにアクサ生命所属)

 新型コロナウイルスの影響で止まっていたスポーツ界だが、少しずつ再開の兆しが見え始めている。ブラインドサッカーもそのひとつで、2020年10月から21年2月までに「〜ブラインドサッカーを未来へつなごう〜 アクサ×KPMG ブラインドサッカー2020カップ」の開催も決定した。改めて競技の魅力を伝えるために――ブラインドサッカー界のトップを走る、アクサ生命所属の加藤健人と川村怜の対談が実現した。

 都内某所で行われた対談では実際にボールを使った練習も。ガイドの声だけを頼りに、華麗なタッチから豪快なシュートを放ち、ゴールネットを揺らす。その迫力に圧倒される人も多いはずだ。そんなブラインドサッカーを代表する加藤&川村の2選手に、サッカーからの影響や練習方法、プレー面での工夫など、素朴な疑問を投げかけてみた。


■サッカーからの多大な影響




――いま、お二人はアクサが公式保険パートナーであるリバプールFCのユニフォームを着ていますが、クラブの好きな選手はいますか?

川村「僕はスティーブン・ジェラードが好きでした。プレースタイルとか、点も取れるし、ゲームもコントロールできる。チームの象徴的な選手でもあります。目指したいですし、そういう選手が好きなんです」

加藤「僕は南野拓実選手ですね。所属するチームがプレミアリーグで優勝もして、世界一と言っても過言ではない。そんなチームで活躍しているし、今後楽しみにしている選手の一人です。日本のサッカーを盛り上げてほしいですね」

――日本人の選手では、川村選手は中山雅史選手、加藤選手は三浦知良選手が憧れだと聞きました。

川村「中山選手は1998年のフランス・ワールドカップでのジャマイカ戦のゴールを観たときからの憧れです。そこからずっと注目していて、Jリーグではジュビロ磐田で得点王にもなって。ゴールを決める姿を見て、憧れるようになりました」

――参考にしている部分はありますか?

川村「自分とタイプは違うんですけど、ゴールを狙い続けるということに関しては、誰もが共通していると思っています。J1で最多得点記録も持っていた選手で、熱いプレーヤーの印象もありますけど、それだけじゃ得点は取れないはず。がむしゃらだけではなく、どこか冷静に自分をコントロールしているんだなって。普段の練習から、そういう意識を持って取り組んでいたことが結果に出ていると学びました」

――何度かお会いされていると聞きましたが、具体的なアドバイスなどはありましたか?

川村「シュート練習での意識の仕方ですね。試合中そんなにチャンスはないじゃないですか。10本も20本も同じシチュエーションはないので、最初に1本なら1本、3本なら3本と、本数を決めてそこで結果を出す。練習の中でそういう取り組みをしていけば、試合でもチャンスが回ってきたときに冷静に対応できるようになります」

――加藤選手はカズ選手が憧れです。

加藤「子どものときはカズダンスもやりましたね(笑)。Jリーグといえば三浦知良。ピッチでのプレーだけではなく、外での振る舞いとかもカッコいいじゃないですか。自分もブラインドサッカーといえば加藤、っていうところにたどり着きたいという思いもあります。プレーもそうですし、外での服装とか見た目も。そういう部分もあってもいいのかなって思いますね」

――カズ選手はファッションも印象的ですね。

加藤「スポーツから少し離れてしまうかもしれないんですけど、視覚障がいの人って見た目とかファッションはどうしているのって思われることもあるんです。それは人それぞれで、僕はそういうファッションのことも好きで、カズさんのようにカッコよくなりたいって思っていますね。日本ブラインドサッカー協会がメーカーとコラボしてバッグを作ったんですけど、それも僕が前に立たせてもらって。そういう活動もしています」


■どうやって蹴る? 選手が明かすプレーの工夫




――個人練習もあると思うんですが、気をつけていることはありますか?

川村「まずは安全なスペース、場所を確保する。ここなら絶対に人もいないし、物もないっていう場所を狭くても広くても見つけます。フットサルコートを1人で借りれば十分トレーニングできますし、公園でもベンチや遊具が危ないですが、安全な場所であれば公園でもやるときはあります」

――見えない中で音の鳴るボールを蹴る。その感覚はどのようなものなのでしょう。

加藤「僕は見えているときと変わらないと思うんですけど、ボールを左足でタッチして、右足で蹴ります。下を向いているんですが、ボールを見て蹴って、飛んでいったボールのほうを向いている。外したとか、うまく当たらなかったというのもわかりますね。パスも同じです」

――自分の位置はどうやって把握するんですか?

川村「声の情報ですね。ゴールの後ろにガイドがいて声を出してくれます。そこが基準になります。その基準の軸に対して、どれだけ離れればコートのどの位置にいるかとか、どこにゴールがあるかがわかります。左右の壁(サイドフェンスの位置)は触って確認することもありますね」

――ガイドの基準に素早く順応することも大事と。

加藤「今でも合わないときは合わないですよ。雨とか屋根付きとか、条件にもよります」

川村「ガイドさんが違うと空間認知の仕方も微妙に変化するので、その適応力の早さも代表チームでは求められます。どんな会場、どんな場所でも、瞬時に合わせて適応する。ゴール幅や奥行きが違ったりもすると、それだけガイドとの距離が違ったりもするので」

――とてつもなく難しそうです…

川村「情報源が違うだけなのかなと思っています。目が見えている方は視覚情報でボール、味方、ゴールを把握する。視覚から頭でイメージして判断してプレーを実行する。僕らの場合は、耳で聴いて頭でイメージして判断してプレーを実行する。情報の取り入れ方だけが違っていて、最後の実行するところまでは一緒なんじゃないかなって思っています。ただ、視覚に比べて圧倒的に情報量は少ないので、その音の集め方はかなり集中しないといけませんね」

――耳を敏感にする特訓などはあるのでしょうか。

川村「聴力は皆さんと変わらないです(笑)。そこに意識を持っていくかどうか。皆さんも一緒だと思いますよ。視野だって意識して広げるかどうかじゃないですか。それ自体のトレーニングはあまりなくて、ブラインドサッカーの練習をしていれば、自然に養われる」

――トレーニングはボールを扱うものとフィジカルを鍛えるもの、どちらが多いですか?

加藤「ボールのほうが多いですね。個人練習もチーム練習でもそうですね。代表では筋トレ的なトレーニングはそんなにしないです」

川村「身体操作的な、体をどう動かすか、とかはやりますね」

――先ほど見せてもらったシュート練習では、決まったところを狙っているように見えました。

川村「狙っています。ゴール裏のガイドからどれくらいずらせばゴール左隅に行くのか、とか」

加藤「試合中だとGKがいて、しかもGKはシュートを打つ選手のことが見えている。ガイドはGKの真後ろにいるので、ガイドに向かって蹴ったらGKに止められてしまいます。ガイドに向かって蹴るというよりは、ガイドよりちょっとずらして蹴っていますね」

――シュートの種類も豊富でしたね。

加藤「ディフェンスの位置とか、ボールが足下のどこにあるかとか、インステップキックはボールが前にないと蹴れないですし、詰まるようだったらトーキックのほうが蹴りやすかったり。ボールが近かったらインサイドキックで流し込むっていうのもあると思います。その場その場で判断していますね」

川村「GKは蹴る人の足の振りが見えているので、振りが見えやすいインステップで思い切り蹴ると、止めやすかったりします。ドリブルでトーキックだとモーションも少ない」


■男子日本代表強化指定選手として、世界と戦うために



――代表では海外の選手とも戦います。体格差は影響しますか?

加藤「サッカーと違ってヘディングがないので、身長差で競り負けるとかはないです。だけど体の当たりが多いスポーツなので、相手の強さを生かしてうまくかわしたり、ディフェンスをしているので、身長とか力は関係なくやろうとはしています。あったらあったで越したことはないですね」

――日本の強みとは。

加藤「たとえば国際大会などに出場するような国の選手と日本代表を比べたら、正直技術は負けていると思います。けど、ディフェンスもオフェンスも選手4人で声をかけあって、全員で守って全員で攻めて、戦術の理解とか走り負けないとか、みんなで戦う部分は戦えているんじゃないかなとは思いますね」

川村「みんなで実力を発揮していくという意味では、組織で戦うことができるっていうのが日本人の強みだと思います」

――技術面の向上で目指すところはありますか。

加藤「本番とか国際試合で求めていきたいのは、川村くんは得意だけど、ボールの音を鳴らさないプレー。ドリブルの最後の一瞬を鳴らさずに、かわしてシュートを打ったりします。ボールを浮かすと音は鳴らないので、パスもちょっと浮かすとか。転がすとパスコースが読めてしまう。味方にも伝わりやすいけど敵にもバレる。うまく浮かして味方の近くで弾ませる方法とかありますね」

――音を鳴らさないドリブルとは…!?

加藤「川村くんは、ドリブルで足との接地時間を長くしていて、スライドするように進ませるので音が鳴らないんですよ。その一瞬の間で相手のディフェンスは付けきれなくなるし、ボールの位置感覚がわからなくなる」

川村「南米の選手が多くやっていますね」

加藤「今後ブラインドサッカーが続いていく中で、そういうプレーが増えていくと思います。昔は音を重視していたし、ディフェンスもオフェンスも分かれていた。今は全員が動いたりとか、パスもどんどん回していったりとか。ブラインドサッカーも進化していって、浮き球もダイレクトプレーも増えていくかもしれませんね」

川村「もしかしたら今後はスルーパスも増えていくかも。合図があれば、サイドに開いている選手がタイミングを合わせて中に入ってパスを受けるとか。事前に戦術の中にあればできるようになる」

――いま国際舞台で戦うために磨いていることはありますか?

加藤「自粛期間中は3か月間体を動かしていなかったので、体力は落ちていて。体力強化のトレーニングをしています。感覚がすごく大事なので、体力が落ちていく中でズレが出てきてしまうんです。まずは体力。あとは、ボールを止めることだけじゃなくて、止めた後にどうするかっていう次に生かすためのトラップの仕方など、止める技術を上げていきたいですね」

川村「ゴールを決めるためのドリブルシュートの部分ですね。トップの選手たちが集まる国際大会は日本より格上ばかりなので、ボールに寄せてくるプレッシャーが早くて強い相手に対して、しっかりコントロールした状態で運びながらシュートまで持っていけるか。そしてシュートの精度も上げていけるように。敵がいる状況で、自分の技術を発揮していくことが重要かなと思います」

――アクサ×KPMG 2020カップも始まります。

加藤「たくさんの人にブラインドサッカーの良さを知ってもらえる機会になれば嬉しいですね。全力で楽しんで、魅力をたくさんの方々に伝えていきたいです」

川村「どういう声かけをしているか、などに注目しながら観ると、さらに面白さを味わえます。ぜひ観てみてほしいですね」

 アクサ生命所属の加藤・川村両選手も出場する、「〜ブラインドサッカーを未来へつなごう〜 アクサ×KPMG ブラインドサッカー2020カップ」は10月4日から各地で開催している。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、長期間にわたって会場を分散する形をとっており、1stラウンドは無観客での開催だが、オンライン上での全試合生中継も決定している。

 1stラウンドは10月から11月にかけて全国5会場で開催。加藤選手が所属する埼玉T.Wingsは10月18日に、川村選手が所属するパペレシアル品川は11月14日にそれぞれ試合を行う。それぞれの会場から勝ち上がった8チームが来年1月〜2月に開催される準決勝ラウンドに駒を進める。

 10月10日にはTOKYO MX「週末ハッピーライフ!お江戸に恋して」の番組内で、加藤・川村両選手と、日本障がい者サッカー連盟会長の北澤豪氏による鼎談の放送が決定。北澤氏が2選手のブラインドサッカーを始めた経緯や競技の魅力、ピッチ外での意外な一面などを掘り下げている。

【関連記事】北澤豪氏とブラインドサッカー加藤&川村の3者対談が実現!「ブラサカに恋して」ノーカット版

以下、1stラウンドの日程
【堺会場】
(10月4日)
大阪ダイバンズ 10:30 兵庫サムライスターズ
兵庫サムライスターズ 13:00 大阪ダイバンズ

【広島会場】
(10月17日)
A-pfeile広島BFC 10:30 岡山デビルバスターズ
岡山デビルバスターズ 12:30 ラッキーストライカーズ福岡
ラッキーストライカーズ福岡 14:30 A-pfeile広島BFC

【本庄会場】
(10月18日)
埼玉T.Wings 10:30 乃木坂ナイツ
乃木坂ナイツ 12:30 free bird mejirodai
free bird mejirodai 14:30 埼玉T.Wings

【守谷会場】
(10月25日)
Derrotó Saber茨城 10:30 Avanzareつくば
コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ 12:30 Derrotó Saber茨城
Avanzareつくば 14:30 コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ

【品川会場】
(11月14日)
パペレシアル品川 9:00 ソイエ葛飾(※1)
たまハッサーズ 10:30 buen cambio yokohama(※2)
※1敗者 12:30 ※2敗者
※1勝者 14:00 ※2勝者

【大会特設HP】
https://2020cup.b-soccer.jp/

【全試合ライブ配信】全試合生中継!
https://bit.ly/34svUhl


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