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2年生FW田幡が執念の勝ち越しヘッド!東京農大一が成蹊との延長戦制して東京A2回戦へ

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延長前半4分、東京農大一高は2年生FW田幡謙侑(右、23番)が勝ち越しヘッド

[10.10 選手権東京都Aブロック1回戦 東京農大一高 3-1(延長)成蹊高 駒沢補助]

 第99回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選は10日に1回戦7試合を行い、東京農大一高対成蹊高戦は延長戦の末、東農大一が3-1で競り勝った。東農大一は18日の2回戦で関東一高と戦う。

 08年度大会や14年度大会でベスト4へ進出している東農大一が、雨中の激闘を制した。1-1で突入した延長戦前半、「サイドを取られていたので、サイドを取り返しに行きたかった」(石川創人監督)という東農大一が右SB安部維宏(3年)の攻撃参加などサイドの攻防で押し込む。

 そして4分、敵陣左サイドでFKを獲得する。これをレフティーのMF木幡飛来(3年)が左足で蹴り込むと、「なかなかチャンスが作れない中でチャンスが来たので、ここで決めないとまた流れが悪くなって失点して負けてしまう」という決意を持って飛び込んだFW田幡謙侑(2年)が、身体を投げ出してヘディングシュート。この一撃がゴールを破り、2-1となった。

 殊勲の田幡は、「元々足が攣りそうで、でも『絶対に飛び込まなきゃ』と思って飛び込んだら攣っちゃいました。喜びに行きたかったんですけれども、足が攣っちゃって(微笑)」。覚悟の1プレーでもぎ取った執念の1点だった。

 それでも、2年生FWは交代することなく走り続け、その後もFKを獲得するなど奮闘する。リードを得た東農大一は、DFラインの選手も含めて入れ替えながら運動量や強度を維持。そして延長後半6分には、右サイド深い位置で獲得したFKを木幡が今度は直接狙う。これがファーサイドのゴールネットに突き刺さり、3-1となった。

 成蹊はピッチ内外での振る舞いや好守が印象的だったCB山品拓嗣(3年)を前線に上げて反撃したが、1点を奪い返すことができないまま試合終了。苦しい時間帯がありながらも勝ち切った東農大一の石川監督は、「(最後まで)やり切ったことは成長したところ」と目を細めていた。

 文字通り、互角の戦いだった。東農大一は丁寧なビルドアップにCB樋山圭祐(3年)の展開や木幡の左足クロスをアクセントとした攻撃。前半23分には、右コーナー付近でMF中島大地(3年)がボールを奪い返してグラウンダーのクロスを入れる。これを連続性のある動きを見せていたFW渡邉脩太(2年)が右足でねじ込み、先制した。

 だが、成蹊も山品のヘッドなどで反撃すると、後半13分には敵陣でのインターセプトからMF後藤陸(3年)がクロスを入れ、FW東谷陽平(3年)とMF今泉慶太(3年)が連続シュートを放つ。

 このシーンは東農大一MF井上大地(3年)の身体を張った守備に阻まれたものの、15分に後藤の左クロスから交代出場のFW福島航介(1年)が同点ヘッドを決める。成蹊はハイサイドを狙った攻撃が効果を発揮。福島の仕掛けやゴール前へ飛び出して来るMF川本琉生(2年)のシュートなどで勝ち越しを狙った。

 東農大一もCBから中盤に上がった大塚愛理(2年)のミドルシュートなどで攻め返す。互いに集中した守備を続け、1-1のまま延長戦へ突入。進学校同士の好勝負は、セットプレーで差を生み出した東農大一が成蹊を振り切った。成蹊は敗戦の瞬間に崩れ落ちたが、各選手が涙を堪えながら挨拶。ロッカールームへ戻って行く姿も印象的だった。

 東農大一の木幡は「夏くらいから全員で声出してとかずっと意識し続けてきていて、(今日も)選手代わっても声を維持し続けたのが良かったです」と声の部分を勝因に挙げ、「西が丘を目標にやってきていたので、(そこまで)サッカー続けられたら、今のメンバーで(実現)できたら嬉しい」。西が丘で開催される準決勝進出を目標に掲げた。

 2回戦の対戦相手は優勝候補の一角、関東一。田幡は「(関東一は)T1(東京都1部リーグ)で勝っているチームで、毎年全国の予選決勝でテレビとかで見るチーム。自分たちはああいう相手とやる機会が少ないので勝てるように、自分はFWとして点取って勝てるようにしていきたい」と誓った。強い思いがあっても表現することは簡単ではない。石川監督も認めていたように、この日の100分間でその思いを表に出して勝った東農大一が次は強敵突破を目指す。

(取材・文 吉田太郎)
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