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過去6年で5度敗戦の宿敵・前橋育英撃破も「まだ8つ」。“ブルートルネード”桐生一は切り替えて群馬準々決勝へ

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宿敵からの勝利の瞬間、桐生一高イレブンが拳を突き上げた

[10.18 選手権群馬県予選3回戦 前橋育英高 2-3 桐生一高 太田市運動公園]

 群馬3回戦のビッグマッチは“ブルートルネード”桐生一が制す! 第99回全国高校サッカー選手権群馬県予選は18日に3回戦を行い、6連覇中の王者・前橋育英高桐生一高のプリンスリーグ関東勢同士が激突。後半立ち上がりまでに3点を先取した桐生一が3-2で勝ち、常磐高との準々決勝へ進出した。

 試合終了直後、桐生一の田野豪一監督は激闘を制した選手たちに向かって「まだ8つ(ベスト8)だぞ!」と引き締めていた。過去10年間の群馬決勝のうち、7度が前橋育英対桐生一のカード。桐生一は11、13年度大会決勝で前橋育英に勝利しているものの、14年度以降は準決勝で2度、決勝で3度、宿敵に全国への道を阻まれている。そのライバルからの勝利が嬉しいことは間違いない。だが、まだ準々決勝を戦う権利を手にしただけ。だからこそ、選手たちは達成感に浸りすぎることなく、次へ視線を向けていた。

 ともに県新人戦で早期敗退したことにより、3回戦で実現したビッグマッチ。桐生一のMF落合遥斗主将(3年)は、野心を持って「前橋育英との3回戦」に臨んでいたことを明かす。「いつもだったら(会場も)正田醤油(スタジアム)だったり、敷島(公園サッカー・ラグビー場)だったり、こんなに早くやることはなくて、色々な人からも『楽しみ』だと言われてきました。ここで(自分たちが勝ち)、育英が3回戦で負けたというのが全国に知らされるのが自分はちょっと面白いかなと思っていました」。相手は格上だが、7月の練習試合では1-0で勝利。夏場に苦しみながらもそこから状態を上げ、プリンスリーグ関東で3勝1分の暫定2位と自信を深めて前橋育英に挑戦していた。

 前橋育英は昨年の決勝を経験しているCB大野篤生(3年)が負傷欠場。それでも円陣で大野の発した「噛み付いて行きましょう!」という声とともに、気合十分で大一番に臨んだ。神戸内定MF櫻井辰徳(3年)をよりゴールに近い位置でプレーさせるためにFWで起用。序盤は互いに様子を見ながらの戦いとなる中、桐生一がセットプレーから先制点を奪う。

 桐生一は前半10分、落合が獲得した右FKを自ら右足で蹴り込むと、「良い形で自分のところに来たので当てるだけでした。(シュートが)弱くてもコース良ければ入る、ということを意識して振り切らずに当てることを意識しました。先輩たちにも色々迷惑かけてきた分、チームに貢献したいという思いがありました」という2年生MF浅田陽太が、丁寧に合わせて先制点を叩き出す。

 リードした桐生一は前線からの連動した守備で相手との距離を詰め、全く間を与えない。そしてDFラインはシンプルなプレーを継続。良い形でセカンドボールを拾った際には落ち着いてボールを繋いで攻め、セットプレーを獲得していた。

 14分にはFW入澤祥真(3年)がロングシュートを飛ばし、21分には左CKでのサインプレーから右WB松尾琉雅(3年)が右足ボレーシュート。前橋育英は櫻井の1タッチパスを活用しながらボールを動かして反撃したが、26分にMF新井悠太(3年)が接触プレーで負傷交代するアクシデントにも見舞われてしまう。

 前橋育英はここで櫻井をボランチに落とす。すぐに立て直し、MF熊倉弘達(3年)の巧みなボールキープや、櫻井のスルーパスなどから、ゴールに迫る回数を増やしていた。だが、前半ラストプレー、桐生一は浮き球を浅田が頭で繋ぐと、左中間でボールを受けた入澤がゴールを背にしての胸トラップから反転しながらの左足ボレーシュート。“スーパーゴール”で点差を2点に広げた。

 田野監督は勝因について「前半です。相手を自由にさせなかった。(加えて)ここまで前半に握れるとは思っていなかった」と分析していたが、オーバーペースと言えそうな選手もいたほど走り、戦い、ボール保持もした前半が大きかった。桐生一はさらに後半3分、落合の左CKをファーサイドのMF金沢康太(2年)が押し込む。この日守備での奮闘も大いに光った2年生ボランチのゴール。指揮官が「セットは相当やってきた。週2回やっていた」というセットプレーによって大きな、大きな3点目を奪った。

 前橋育英はその直後、交代出場の左MF笠柳翼(2年)がワンツーでDFを外し、最後はFW鈴木雄太(3年)が決定的な右足シュート。17分にはFW中村草太(3年) のカットインシュートが枠を捉えたが、桐生一は直前に足を攣らしていたGK竹田大希(2年) が横っ飛びでストップする。

 それでも、前橋育英は一際声を発する櫻井らの「落ちるな!」の檄で気持ちを奮い立たせ、反撃。20分には鈴木のスルーパスから中村がGKをかわして待望の1点を奪う。さらに鈴木の決定的なヘッドや櫻井がDFを右へ外しながら放ったポスト直撃シュートなど猛攻。鈴木が推進力のある動きを続けたほか、技術力の高い両SB、SHがDFを剥がし、クロスへ持ち込んで行く。

 桐生一は後半31分に3バックから4バックへ変更。「跳ね返しても、跳ね返しても、どんどん来る」(落合)前橋育英の攻撃に我慢の時間が続いたが、DF丸山琉空(2年)やDF中谷優太(3年)が中央で踏ん張り、決定的なピンチでDF倉上忍(2年)が身体を投げ出してクリアするなど2点目を許さない。

 重圧からか、桐生一は足を攣らせる選手も増えていたが、カウンターから攻め返し、落合の右足FKがポストを叩くシーンも。一方の前橋育英はチャンスを作るものの、ゴールに結びつけることができない。それでも諦めない前橋育英は、7分が提示された後半アディショナルタイムの4分、PAでボールを収めた鈴木の左足シュートで1点差に迫る。残り3分。前線にボールを入れて相手ゴールをこじ開けようとする。だが、桐生一はここで揺るがず、3-2で勝利した。

 桐生一は夏に藻掻き、苦しんだ。新型コロナウイルスの影響によるチーム活動自粛から、7月11日に練習試合が解禁。その初戦で前橋育英を破った。ただし、同下旬からチーム状態が下降し、8月1日開幕の和倉ユース大会は予選リーグ全敗。それでも、苦しい時期があったからこそベストなシステム、戦い方を見出すことができ、プリンスリーグ関東では優勝争いを演じている。田野監督も「あれで、伸びたと思う」とコメント。そして、“選手権”での前橋育英からの白星でより自信を掴んだことは間違いない。

 だが、宿敵からの白星も、目標達成のための1勝に過ぎない。浅田は「(前橋育英に勝ったことは)嬉しいんですけれども、ここが目的ではないので、上を目指して一戦一戦やっていきたいです」と語る。先輩たちが跳ね返されてきた大きな壁をついに突破した。だが、目標はあくまで群馬を制すこと、そして全国制覇すること。それを達成するために、“ブルートルネード”桐生一は一戦必勝で次の戦いへ向かう。

(取材・文 吉田太郎)
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