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[MOM3247]学法石川GK渡邉駿(3年)_究めた「小兵なりの戦い方」、打倒・尚志の目標果たし決勝へ

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前半終了間際、学法石川高GK渡邉駿(3年)が好判断でセーブ

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[10.31 選手権福島県予選準決勝 学法石川1-0尚志 西部]

 小兵には、小兵のやり方がある。1週間の準備が、大きな勝利を呼び込んだ。第99回全国高校サッカー選手権の福島県大会準決勝、第1試合で波乱が起きた。学法石川高が1-0で7連覇を狙った尚志高を破った。

 勝因は、守備だった。前線から相手にプレッシャーをかけて攻撃の組み立てを阻止。ハイボールやサイド攻撃に対しては、体を張ってゴール方向への侵入を阻んだ。特に守備陣の活躍は、際立っていた。中でも、小柄なGK渡邉駿(3年)のセーブは、勝利を強く手繰り寄せるプレーだった。稲田正信監督も「GKが当たらないと、尚志には勝てない。今日は、GKだったんじゃないですかね。集中していましたよね」と守護神を称えた。

 最初の見せ場は、前半終了間際。尚志がパワープレーを展開して、前線に入れた長身DFチェイス・アンリ(2年)にクロスを供給した場面だ。渡邉は判断よく飛び出し、大柄な相手と接触しながらも、きっちりとセーブ。しばらく倒れ込んだが、このプレーで前半が終了。クロスがゴールに飛び込んで得点となるラッキーな形で先制に成功していただけに、リードを保って試合を折り返すという意味で価値のあるセーブだった。

 そして、試合終盤には立て続けに2回のビッグセーブを見せた。後半23分、尚志が左サイドからのクロスをヘディングシュートで狙ったが、学法石川は渡邉が横っ飛びでセーブ。さらに後半31分、尚志が左CKから再びヘディングシュートを放ったが、またも渡邉がゴールポスト際へ鋭く反応してボールを弾いて防いだ。

 ハイボール対策は、この試合に向けた1週間で徹底的に取り組んできた。渡邉は「自分は小さいので、相手がハイボールを入れてくるという想定でGKコーチが練習メニューを組んでくれました。速いハイボールが入ってくるところと、そこに出られなかったときの対応と。それが試合につながりました」と明かした。

 通常、クロスや縦のハイボールに対し、両手が使えるGKは、相手より高い位置でボールを触れる利点を生かし、フィールドプレーヤーが触れない高さにあるボールのキャッチやパンチングを狙う。しかし、高さがない渡邉の場合は、相手と互角。ファーストコンタクトでしっかりとキャッチするか、大きく弾かなければ、体勢を整え直す間もなくシュートを打たれてしまう。そこで「出られなかった場合の対応」が生きた。完全にシュートストップの準備に入っていたため、相手が叩きつけてくるボールに反応できたのだ。

 苦しい場面でのビッグセーブは、試合の流れに大きな影響を与える。早く同点に追いつきたい相手の心理にはダメージを与え、押し込まれて疲弊する味方には勇気を与える。渡邉の前で体を張った守備を続けていた主将のDF大津平嗣(3年)は「ああいうセーブが起きると、チームの士気が上がる。ナイスセーブで、ありがたかった」と渡邉の好プレーに感謝を示した。渡邉や大津を中心とした守備の活躍は素晴らしく、先制点を決めたFW倉島聡太(3年)は守備陣の奮闘を見て「すごい。俺、あいつらといつも一緒にやっているんだなと思ったら嬉しかった」と刺激を受けていた。

 尚志に勝って、全国に出る。その思いは、誰もが持っていた。一つの目的を果たしたが、まだ道は半ばだ。渡邉は「尚志を倒すという目標を持って、この学校に来ました。僕たちの学年は人数が少ないのですが、それでも勝つというのを目標にして、みんなでやってきた。だから、試合に出られない友だちとも絆が深い。勝てたのは、出られていない選手の気持ちのおかげ。でも、これが目標じゃない。僕たちの目標は、決勝戦に勝って、全国で勝てるチームになること。次の一戦に向けて良い準備をして、チーム一丸になって勝ちたいです」と勝って兜の緒を締めた。

(取材・文 平野貴也)
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